日刊鹿島アントラーズニュース

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2024年7月28日日曜日

◆【鹿島が直面した世界との差。中断明けの課題とは】(サッカー批評)






 アカデミーの先輩・鈴木優磨が「誉は鹿島を背負って立つ選手になる。将来的には俺と誉が組む形も見せていければいい」と期待を込めて話していたが、チャヴリッチが負傷離脱した今、それをいち早く具現化することが彼らに強く求められているのだ。


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◆【鹿島が直面した世界との差。中断明けの課題とは(1)】「あそこまでボコボコにやられたら楽しい」と鈴木優磨も脱帽。ブライトン戦で鹿島が得た学びとは……予想もしなかったパスを見せられ(サッカー批評)

◆【鹿島が直面した世界との差。中断明けの課題とは(2)】希望となった17歳・徳田誉。三笘と渡り合った須貝……。中断明けの鹿島に必要なことと伸びしろ(サッカー批評)




「あそこまでボコボコにやられたら楽しい」と鈴木優磨も脱帽。ブライトン戦で鹿島が得た学びとは……予想もしなかったパスを見せられ


 24試合終了時点で約2週間の中断期間に入っているJ1。その間の過ごし方はチームによってまちまちだ。

 勝ち点44の3位につけている鹿島アントラーズは24日、三笘薫を擁するブライトンと親善試合を消化。イングランド・プレミアリーグの強豪クラブと対峙することで、自分たちの実力を図る好機に恵まれた。

「私にとっては親善試合は存在しない。負けていい試合はない」とランコ・ポポヴィッチ監督は前日に発言。彼らはリーグ戦を戦っているフルメンバーで挑むと見られた。が、今回は名古新太郎がベンチスタートで、知念慶と濃野公人がベンチ外。濃野は三笘とのマッチアップが注目されていたが、体調不良で欠場を余儀なくされたと見られる。

 そこでスタメン入りしたのが、須貝英大、三竿健斗、土居聖真といった面々。特に須貝は三笘封じの大役を担っていただけに、その一挙手一投足が注目された。

 けれども、鹿島は普段のJリーグのようなハイプレスからのボール奪取を見せられず、瞬く間にブライトンに主導権を握られた。

「Jリーグだと、正直、プレスに行かなくてもセンターバック(CB)からあんまりいいボールは出ない。だけど、今回は予想してないようなタテパスとかサイドチェンジが飛んでくる。ああなるとプレッシャー行ったら、必ず自分の後ろにいるボランチを使われて、ボランチが食いついたら、その背後のスペースにFWが入ってくるっていう形になる。

 昔、レアル(・マドリード)とやったことがあって衝撃は覚えますけど、世界のサッカーはとんでもないスピードで成長してるなっていうのをすごく差を感じましたね」と最前線のエース・鈴木優磨も脱帽していた。


■「あそこまでボコボコにやられたら楽しい」


 その流れから前半のうちに1点を失うと、後半突入後は12分間で立て続けに3点を奪われた。相手は三笘やダニー・ヴェルベックやジェイムズ・ミルナーらビッグネームが45分で下がり、ピッチに立っていたのは10代の若手中心。彼らは出番をつかむため、凄まじいモチベーションでぶつかってきていた。その気迫に押され、鹿島の守備が崩壊。終わってみれば1-5の大敗を喫してしまったのだ。

 三笘とマッチアップした須貝がまずまず奮闘し、同サイドの師岡柊生も守備面で献身的にカバーに入るなど、好材料も多少なりとは見られたが、最高峰リーグクラブとの厳然たる実力差は認めざるを得なかった。

「世界のトップリーグでやってるチームは考えながらサッカーをやっている。まずビルドアップでウチのFWが1人食いつくのを待って、食いついた瞬間に中から3人目のフリーマンがスペースを使って前進してきていた。それに対してどう守備をするかっていうのは、中で話しながらやってたけど、彼らは立ち位置が抜群で、距離感もいいので、ミスも起こらない。これが今の世界のスタンダードなんだなっていうのは、やりながら感じました」と今夏、ベルギーから戻ってきたばかりの三竿も質の違いを痛感していた。

「あそこまでボコボコにやられたら楽しいっすよ」と鈴木優磨は冗談交じりに苦笑した。だが、鹿島としては、このまま足踏み状態を続けているわけにはいかない。


■世界における立ち位置


 前半戦の主力である佐野海舟が去り、垣田裕暉(柏)と松村優太(東京V)、土居聖真(山形)も移籍。さらにチャヴリッチも負傷離脱してしまった。夏の移籍期間は8月21日まで開いているため、新戦力が加入する可能性もあるが、現有戦力の底上げはマスト。まだコンディションが上がり切っていない三竿が復調し、国際経験の乏しい師岡らがより精度を高めていくこと、今後のが躍進のカギになるだろう。

 世界における立ち位置を1人1人が肌感覚でつかんだことは大きな意味がある。1-5という屈辱的惨敗を確実に今後に生かすことが大切なのだ。

(取材・文/元川悦子)

(後編へ続く)


希望となった17歳・徳田誉。三笘と渡り合った須貝……。中断明けの鹿島に必要なことと伸びしろ


 ブライトンに1-5という惨敗を喫した鹿島アントラーズ。守備の要・植田直通がメディアの問いかけを遮って帰っていったのを見ると、ディフェンス陣にとってはショックが大きすぎたのだろう。

 4失点した後半の戦いぶりに目を向けても、安西幸輝や関川郁万といった主力たちが次々と左右に揺さぶられ、かわされてシュートを決められた。その一挙手一投足をランコ・ポポヴィッチも問題視したはずだ。

 今季前半戦の鹿島はGK早川友基と最終ラインの濃野公人、植田、関川、安西はほぼ固定で戦い、過密日程もギリギリで乗り切ってきたが、それだけでは戦力が足りない。この日、三笘薫に対して勇敢に立ち向かった須貝英大、ボランチとセンターバック(CB)を兼務できる三竿健斗らうまく使いながら、選手層アップを図っていくことがまずは肝心だろう。

 中盤にしても、今後は柴崎岳、知念慶、三竿の3枚をベースに、樋口雄太、ミロサヴリエヴィッチを加えながら、ボランチの最適解を見出していくことになる。前半戦のデュエル王である知念は目下、欠かせない戦力だが、知念と三竿を並べると守備強度は上がるものの、攻撃の工夫が物足りなくなってしまう。逆に知念と柴崎、あるいは三竿と柴崎のコンビだと、攻撃面では活性化するのだが、デュエルと強度を前面に押し出すポポヴィッチ監督が思い描くサッカーができない状況も起こり得る。


■ボランチの組み合わせ


 今回のブライトン戦は柴崎・三竿コンビでスタート。後半から三竿・樋口、最終的には樋口・ミロサヴリエヴィッチという組み合わせになった。こうした中、ファーストセットの2人を見ると、柴崎は攻撃面で変化をつけたり、機転の利いた配球は随所に見せていたが、守りの方は少し強度が足りない印象も拭えなかった。

「岳君が何を狙ってるのかっていうのを見ながらやってたんですけど、2人の距離感は回数をこなしていかないと合わないと思う。久々にやって、久々だったという感じです」と三竿も不完全燃焼感を吐露していた。彼らの連携面を向上させ、攻守両面で安定感をもたらすように仕向けることは早急の課題。8月7日の再開初戦・サガン鳥栖戦は知念が出場停止となるだけに、すり合わせ作業を迅速に進めていかなければならないだろう。

 2列目は今季前半戦のベースだった師岡、名古新太郎、仲間隼斗が今後も軸を担いそうだが、フィニッシュや得点力の部分では改善の余地がある。それは師岡も認めていた点だ。

「今季前半戦はJリーグの試合に慣れただけ。ここからもっと点を取っていかなきゃいけないし、質を上げないといけないですね。

 僕は大学選抜とかも入ったことがないから、海外のチームとやるのが初めてだったけど、1人1人の質は本当に全然違った。ブライトンの選手はボール扱いが日本人と全然違うというか足にくっついてる感じだった。自分もドリブルする身として学ばなきゃいけない」と彼は神妙な面持ちで語っていたのだ。


■ハイレベルな経験による伸びしろ


 師岡のようなハイレベルな経験が不足している選手はその分、伸びしろがある。それは後半からピッチに立った藤井智也や17歳の期待の新星・徳田誉にも言えることだ。

 特に徳田は、鈴木優磨のタテパスを胸トラップして一矢報いるゴールをゲット。オフサイドギリギリではあったが、1つの自信になったのは間違いない。

「本当はこの前のJリーグ(FC東京戦)で取れれば一番よかったけど、1つ、ゴール取れたっていうのはすごく大きなことかなと。もっともっと大事な場面でゴール決められるような選手にならなきゃいけないし、このゴールが少しでもきっかけになればいい」と背番号41をつける若武者は未来を見据えていた。

 アカデミーの先輩・鈴木優磨が「誉は鹿島を背負って立つ選手になる。将来的には俺と誉が組む形も見せていければいい」と期待を込めて話していたが、チャヴリッチが負傷離脱した今、それをいち早く具現化することが彼らに強く求められているのだ。

「自分が鹿島を背負っていくためにも、どんどんこれからやっていかないといけない」と徳田自身も語気を強めた。世界を見渡せば、17歳でユーロ2004の優勝メンバーになったラミン・ヤマル(バルセロナ)のような逸材もいる。だからこそ、徳田には成長速度を一気に引き上げてもらう必要がある。

 彼が示した希望が中断明けの鹿島の大きなプラスになってくれれば理想的。ここからのチームの総合力・完成度向上に期待を寄せたいものである。

(取材・文/元川悦子)

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