試合のチケットを買うとき、あるいはスタジアムに向かうとき、さまざまなことが頭の中を去来する。ただし、共通するのは試合前から負けを予想する人は誰もいないということだ。「この相手なら勝てるんじゃないか?」「いまのチーム状態なら負けるはずがない」とそれぞれに夢を膨らませながらキックオフを待つ。その後、さらに大きな歓喜が待っているのか、残酷な結末が待っているのかは知る由もないが、誰にとっても楽しい時間であることは間違いない。
過去の対戦成績は鹿島の11勝7分8敗。オズワルド・オリヴェイラに率いられた3連覇チームの前に、最も手ごわい相手として立ちはだかったのがアルビレックス新潟だった。J1リーグにおいて9戦連続で勝利することができず、4分5敗と大きく負け越したことがこの通算成績に響いている。過去2シーズンは鹿島が3勝1敗と盛り返しているがいずれも1点差ゲーム。新潟側からすれば相性の良さを感じていることだろう。
ただ、この1週間で鹿島は大きく姿を変えた。3日の鳥栖戦で今季明治安田生命J1リーグ初勝利をあげると、続く7日にもACLで広州恒大をアディショナルタイムの決勝弾で撃破。これ以上ない形で勢いづいている。自信を取り戻したいまなら、どこが相手でも負ける気は毛頭ないだろう。
試合の見所は、コンパクトな中盤での潰し合いと、そこから誰が抜け出してくるかだ。どちらのチームにもボランチにチームの心臓となる選手がいる。鹿島では柴崎岳、新潟ではレオ シルバ。柴崎はゲームコントロール、レオ・シルバは広い守備範囲と対人守備の強さと持ち味は違うが、ともに前に出る推進力で攻撃に厚みを加える。過去の対戦でも2人が火花を散らす場面は多く見られてきた。今回も、必ずや2人のどちらが輝くかで試合は左右されるだろう。
また、もう一つの注目は前野貴徳だ。このオフ鹿島から新潟に移籍したレフティーは明治安田生命J1リーグではコルテースが先発しているため、始めからピッチに立つかはわからない。しかし、8日のヤマザキナビスコカップで先発し、まずまずのパフォーマンスを見せている。
前野の特徴は、鹿島の選手の誰もが熟知していることだろう。ただ、前野がどんな情報を新潟にもたらしたのかは未知数だ。そんな想像を膨らませながらスタジアムに向かうのもたのしそうだ。
[ 文:田中滋 ]