
日刊鹿島アントラーズニュース
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2016年1月30日土曜日
◆「被災地にグラウンドを!」アントラーズ小笠原満男の熱き思い(Sportiva)
http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/jfootball/2016/01/29/post_1060/index.php
2016年1月9日に開催された『大船渡市サッカー協会創立50周年記念式典』の壇上で、小笠原満男(鹿島アントラーズ)が自らの熱い気持ちを吐露した。会場に集まった多くの関係者に向かって、少しばかり高揚した声で、力強くこう訴えた。
「季節を問わない人工芝のグラウンドを作って、この街をもっと活性化させましょう」
大船渡に人工芝のグラウンドを作りたい――それは、小笠原がかねてから思い続けてきた”願い”だ。
被災地では整備されたグラウンドが少なく、雪深い土地が多いため、地元の子どもたちとのふれあい活動はおおよそ体育館で行なわれることが多い
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被災地では整備されたグラウンドが少なく、雪深い土地が多いため、地元の子どもたちとのふれあい活動はおおよそ体育館で行なわれることが多い
東日本大震災の直後は、生活に欠かせない物資をできる限り集め、小笠原は自ら車を運転して被災地と住まいのある鹿嶋市との間を何度も往復した。まもなくして、東北のサッカー界を支援するために、東北出身のJリーガーを募って『東北人魂』という有志団体を結成。オフの間を利用して、被災地の子どもたちの笑顔を取り戻そうと、サッカーを通したふれあい活動を実践してきた。それは今も、積極的に行なっている。
しかし、被災地で最初に直面したのは、子どもたちとボールを蹴る場所さえままならない、という現実だった。小笠原たちが、「サッカーをやめるなよ。諦めるなよ」と子どもたちに声をかけると、彼らから返ってくるのは、決まってこんな悲しいフレーズだった。
「サッカーをやりたくても、サッカーができる場所がないんです」
その言葉を受けて、小笠原は子どもたちが元気で走り回れる場所をどうにかして作りたいと思うようになった。その思いは次第に強くなり、被災地にグラウンドを作るプロジェクト『東北人魂 岩手グラウンドプロジェクト』を発足させた。当時はとにかく、サッカーができるような整備されたグラウンドさえ作れればよかった。
地元からの強い要望もあって、グラウンドを作る場所は、小笠原の母校・大船渡高があり、被災地でもある岩手県大船渡市を選んだ。以降、小笠原は精力的に行動し、大船渡に再三足を運んで、大船渡市長をはじめ、関連する自治体や地域の関係者らに、グラウンド作りの支援を働きかけた。
そして、プロジェクト発足からわずか1年、2013年4月に多くの関係者、全国からの募金などの協力を得て、小学校の跡地に平らな土のグラウンドを創設。小笠原の最初の念願は叶った。
完成したグラウンドは現在、サッカーのみならず、さまざまなスポーツを楽しむ場として利用され、使用するための予約は3カ月先まで埋まっているという。それだけ多くの人たちが、グラウンドの創設を待望していたわけだ。
と、ここまでは理想的な流れである。
一方で、グラウンドがオープンしてから、利用者を悩ませている問題があった。それは、土壌の緩さと、冬場に起きる土の凍結だった。小笠原が説明する。
「(大船渡は沿岸部の暖かい場所で)雪はあまり降らない地域だから、雪で(グラウンドが)使えないということはほとんどないんですよ。だけど、どうしても冬場の雨のあとなど、グラウンドが凍結したり、ドロドロになったりして、歩くことさえままならない状態になってしまうことが、頻繁に発生してしまうんですよね……」
実は、大船渡にグラウンドを作ったのは、単に子どもたちが走り回る場所を確保するためだけではなく、別の役割も期待されていた。
「関東とかからいくつかのチームを呼んで、地元の何チームかと試合をするような、サッカーフェスティバルなどが開催できればと思っていました。そうした交流試合が行なわれれば、地元が活性化するだけでなく、他の地域から来てもらった人たちにも、被災地の現状を知ってもらえる機会になるかな、という思いもあったんです」(小笠原)
しかし天候によっては、グラウンドがサッカーどころではない状態になる。それでは、せっかく関東などから来てもらっても、その遠征自体が無駄になってしまう。数年の間は、土を足したりして策を講じてきたが、それも今では限界になってきた。
そこで、天候に左右されることなく使用できるグラウンドとして浮上したのが、『人工芝』だった。
「人工芝なら、雨が降ってもぬかるみに悩まされることがないですし、水はけもいい。東北の中でも、あまり雪が降らない、暖かい地域性を生かして、大船渡に人工芝のグラウンドができれば、これから一層、全国からチームを呼びやすくなる。他にも、例えば冬の岩手県大会や東北大会も誘致できる。盛岡や秋田、青森のほうは結構雪が降るので、そちらからもどんどん人が来てもらえれば、街も活性化するし、人工芝のグラウンドを作る利点は大いにあると思うんですよ」(小笠原)
ならば、あとは何とか資金を集めて、グラウンドを人工芝に変えればいいのでは? と単純に考えてしまう……が、そこには被災地であるがゆえに、難しい事情があった。小笠原が続ける。
「(被災地で)まずやるべきことは、それ(人工芝のグラウンド作り)じゃないだろう、という事情がありますよね。いまだ仮設住宅で生活している人もいるわけですから。元の生活に戻れず、苦労している方がまだたくさんいる。そうした状況にあって、いくら市民の負担になることなく資金を工面できたとしても、見え方として、人工芝のグラウンドというものに対して、市民の方々が納得していただけるのか……。『今、人工芝のグラウンドが必要?』って思われても仕方がないですから。確かにそのとおりだと思いますし、人工芝のグラウンドを作るには、まずは市民の説得、同意が必要となってきます」
それでも小笠原は、地元の子どもたちのために、天候を気にせずに使用できるグラウンドを作ってあげたい――その気持ちはずっと持ち続けている。
「震災が起きたとき、中学1年生だった子どもたちがこの春、高校を卒業します。彼らはもう2度と来ない、一番大切な成長期、それも一番体力のある学生時代を、広いグラウンドで運動やスポーツを思い切り楽しむことなく、終えていく。そのことを想像しただけで、スポーツ選手としては胸が苦しくなります。本来、元気に遊んだり、運動したりできるはずの学校のグラウンドが、仮設住宅で埋まっているところは、まだたくさんありますから。だからこそ、いつでも使える人工芝のグラウンドを、早く作ってあげたいって思うんです」
現在、小笠原はグラウンドプロジェクトのスタッフ(※スタッフは皆、小笠原の同級生でボランティア)とともに、toto(スポーツ振興くじ)の助成金を活用するなど、市民や地元行政に資金負担がなるべくかからないアイデアをいくつか大船渡市に提案し、働きかけている。そして大船渡市としても、人工芝グラウンド創設への思いはあるようで、前向きに検討を始めてくれているという。
「関東をはじめ、全国の中・高校生に来てもらったら、存分に試合をしてもらって、被災地もしっかりと案内したい。そして、いろいろなところから来た中・高校生には、こちらで見た景色や、こちらで過ごした思い出などを、地元に帰ってから多くの人たち話してほしい。そういうことが、少なからず震災の風化を止める力になってくれると思っています。そのためにも今後、サッカーフェスティバルや他のスポーツの大会など、こちらでどんどん開催できればいいと思っています。それにはやはり……早く人工芝のグラウンドを作りたいですね」
まもなく東日本大震災から、丸5年が経過する。小笠原の描く復興への道のりは、まだスタートラインにあるのかもしれない。
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