日刊鹿島アントラーズニュース

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2016年11月25日金曜日

◆大一番で際立つ「鹿島っぽい」勝利。 想定通りに粛々と川崎Fを撃破(Sportiva)


https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jleague_other/2016/11/24/___split_27/

「これが鹿島らしさ。鹿島っぽい試合だった」

 試合後、ジュニアユースから鹿島アントラーズひと筋のFW土居聖真が語った言葉に、うなずくしかなかった。それは短いながら、この試合を的確に言い表していた。

 J1年間勝ち点2位の川崎フロンターレと、同3位の鹿島が対戦したJリーグチャンピオンシップ準決勝。勝者が決勝進出となるのは当然のこと、引き分けの場合には、年間勝ち点上位の川崎が決勝へ進む。

 しかも、この準決勝はホームアンドアウェー方式ではなく、川崎のホーム、等々力陸上競技場での一発勝負。舞台は川崎有利に整えられていた。

 加えて、今季リーグ戦での成績も、川崎有利の見方を後押しした。

 シーズンを通じて一度も連敗することなく、年間勝ち点で最後まで浦和レッズとトップを争った川崎に対し、鹿島はファーストステージを制したものの、セカンドステージに入ると急ブレーキがかかり、11位に沈んだ。セカンドステージの最後は4連敗でフィニッシュ。辛うじて年間勝ち点3位は守ったものの、チーム状態は下降の一途をたどっているかに見えた。

 ところが、である。川崎有利だったはずの試合も終わってみれば、鹿島が1-0で勝利。最少得点差ながら盤石という表現すらふさわしい、まさに「鹿島らしい」勝ちっぷりだった。



 土居は「天皇杯のヴィッセル神戸戦(11月12日)が終わってからは、ずっと川崎を想定して練習してきた」と明かすと、こう話す。

「後ろだけでなく、前線からの守備が重要だった。1点取ってからは(川崎に攻め続けられる)一方的な試合になったが、危ないところは消すことができた」

 J1最多得点の川崎を相手に、無失点で終えたスコアが示す通り、この日の鹿島ディフェンスは出色の出来を見せた。ボールという磁石に自然と選手が引き寄せられるかのように、川崎がパスをつないだ先には、必ず白いユニフォームが近づき、ボールの出どころに対してプレッシャーをかけ続けた。これではさすがの川崎も、パスワークのテンポを上げられない。

 そして、ピッチ上の選手が集中力を切らしがちになるスローインから、一瞬のスキをついてゴールを奪う。こうなると、試合は完全に鹿島ペースである。

 土居が言うように、後半のほとんどの時間で川崎が攻めていたのは事実だが、川崎の攻撃にリズムのよさは感じられず、ゴールの匂いは漂わなかった。

「(後半の立ち上がり5分と)点を取る時間が早かったので、守りに入るのが早かったかなとは思うが、リスクを負わずにやれた」

 試合を振り返る土居は、淡々としていながら、それでいてどこか誇らしげにそう語った。

 この試合の勝利に「鹿島らしさ」を感じていたのは、土居だけではない。

 いつも「試合前は好きな音楽を聞いている」DF昌子源は、この日に限って珍しく過去の試合映像を見ていたという。2009年シーズン最終節(第34節)の浦和戦。アウェーの埼玉スタジアムに乗り込んだ鹿島が、1-0で勝利して前人未踏の3連覇を達成した試合である。昌子が語る。

「その試合は、(1-0でリードし、浦和に押し込まれる)苦しい状況をチーム全員で守っていた。岩政さん(DF岩政大樹。現ファジアーノ岡山)の存在が際立っていた。僕も(岩政と同じ)3番を背負う以上、踏ん張らないといけないと思った。1点を守り切るんだという気持ちをアントラーズからも学んだし、岩政さんからも学んだ」

 背番号3とともに、鹿島イズムを継承した男は「これが鹿島なんだと思う試合を見て、モチベーションが上がった」。

「そのとき、(川崎に)1-0で勝っている絵が頭に浮かんだ。最後は苦しい展開になると予想していたが、見本どおりの試合ができた」

 昌子は堂々と胸を張り、力強くそう語った。

 率直に言わせてもらえば、エンターテインメントという意味では、面白い試合ではなかった。

 鹿島の守備がよかったのは事実だが、川崎の攻撃にもミスが目立った。この局面を突破できればチャンスにつながる、というところで、パスがズレるシーンは多かった。

 鹿島が挙げた虎の子の1点にしても、労せずして決まった感がある。引き分け=敗退となる鹿島にしてみれば、どんなに守備がうまくできていたとしても、どこかで無理をして攻撃に出る必要があった。0-0で進むなか、鹿島はどこで勝負をかけるのか。ベンチワークも含めた、そんな駆け引きもまた、ヒリヒリするような試合終盤の見どころとなるはずだった。

 ところが、実際は何の無理もせず、鹿島は難なくゴールを奪ってしまった。ともすれば、スタンドの観客がビールや弁当に目をやり、見逃してしまいそうなスローインからのプレーである。

 結局、試合はスコアが二転三転することなく、たった一度のゴールシーンを見せただけでタイムアップのときを迎えた。試合の興奮度を表す折れ線グラフがあったとすれば、大きな起伏のない、極々緩やかな上昇曲線だけを描いたに違いない。鹿島は粛々と任務を遂行し、寝た子を起こすことなく、静かに試合を終わらせた。

 鹿島の石井正忠監督は語る。

「こういう戦い方になるんじゃないかと予想はしていた。我々は相手を1点上回ることが条件だったので、それを果たせてよかった。選手は90分間、自分の役割を全うしてくれた」

 数々の不利な条件を覆す静かな勝利は、陳腐な表現と知りながらも、さすがは試合巧者と言うしかない。

 なるほど、鹿島っぽい試合だった。

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