[12.21 天皇杯準決勝 鹿島3-2長崎 カシマ]
V・ファーレン長崎は天皇杯準決勝の鹿島アントラーズ戦で、今季の公式戦55試合目で初めて3-4-2-1のシステムを採用した。相手の弱点につけ込む奇策は効力を発揮し、試合を支配する時間帯を作りつつ2点を奪取。最後は一歩及ばず決勝進出を逃したものの、手倉森誠監督は「王者鹿島を追い詰めるまではできた」と手応えを語った。
今季の長崎はJ2リーグ42試合に加え、カップ戦13試合というJ2リーグでは異例の過密日程を戦ってきた。昨季J1リーグ在籍のため出場権を得たルヴァン杯ではプレーオフステージに進出し、天皇杯ではベスト4入り。カップ戦ではリーグ戦の主力でない選手たちも出場機会を掴み、クラブ史上最高クラスの躍進劇に大きく貢献した。
手倉森監督は元日・新国立での決勝進出をかけて大一番でも、そうした控え選手たちを先発に抜擢した。「リーグ戦とカップ戦でターンオーバーをしてきた中で、リーグ戦で出場機会のないメンバーで勝ってきた」。そう自信を示した指揮官は今季一度も採用していなかった3-4-2-1のシステムにも着手し、ビッグマッチに臨んできた。
「鹿島に『誰が来るんだろう』と思われたいなという狙いと、J1リーグの終盤戦で鹿島が3バック相手に手を焼いているなと。だったらやらせてみようじゃないか、と」。その作戦は的中。序盤こそ相手のマークが曖昧になり、不運もあって失点を喫したが、試合中盤以降は主導権を奪った。その後は2点ビハインドから2度も1点差に詰め寄るなど、アウェーの地で見事な奮戦を演じた。
「王者鹿島を追い詰めるまではできた。流れの面とかタクティカル面(戦術面)では準備したこと、鹿島が嫌がることをやれたと思う。ただ、リスタートなどの引き出しのインサイドワークは鹿島が上手だった。崩されたわけじゃないけど3点を取るあたりがJリーグで20冠をとっている鹿島」。
理想通りの戦いでなくとも決勝進出を果たした相手を見上げた指揮官は「われわれが新興勢力になっていくためには鹿島を倒さないといけない」と決意を新たにした様子。「可能性を示すことができた。来季への可能性を選手たちが示してくれた。この悔しさを忘れず、V・ファーレンが目指す日本に誇るクラブづくりをしていければ」と未来への希望を語った。
また最後は長崎から集まったサポーター、テレビの前で応援していた県民へ「長崎から遠く鹿島まで足を運んでくれたみなさんに新国立の夢を見てもらいたかったけど、申し訳ない。ただ長崎県民がみんなその気になってくれて、力強い声援を送ってくれたからこそこれくらいのゲームができたんだろうなと思っている」と感謝の言葉を述べた。
(取材・文 竹内達也)
◆“奇策”で鹿島追い詰めた長崎・手倉森監督「新国立の夢を見てもらいたかった」(ゲキサカ)