2017年の最終節でリーグ優勝を逃してからというもの、鹿島OBを含めて「鹿島らしさが消えていってしまう」と心配する声が聞かれた。実際に代名詞の勝負強さを発揮できずに競り負けたのだから、理解できたし、長年担当記者を務める立場から見ても、らしくないと感じる試合があったのは事実だった。
そして今季は開幕4連敗。監督交代、メンバーが大幅に入れ替わった影響、そして不運があっての連敗だったが、3年前からの流れをくめば不安は募った。そんな中でも、試合後にZoomを通して取材を受ける選手は「監督のサッカーを信じてやるだけ」「手ごたえは感じている」とブレなかった。結果が出ない試合が続くほど、そう主張する言葉が強くなったように感じる。
最終節はC大阪に1―1で引き分け、目標としていた3位確保に及ばなかった。試合後、スーパーセーブでチームを救ったはずのGK沖は「こういう試合ではGKが試合を左右する。相手GKとの差で引き分けに持ち込まれてしまった」と1失点を悔やみ、ピッチで号泣した。涙を流している選手が、ほかにもいたように見えた。
勝たなければいけない試合で勝てなかった。ただ、2017年とは違う印象を受けるのは、勝ち切る、点を取り切るサッカーがはっきりと見え、来季への希望をもてること。開幕がつまづき、コロナ禍で制限されたが、立て直し、はい上がってきた。逆境にどう向き合うか。そこに鹿島の強さがあると思う。目標には届かなかったが、鹿島が鹿島であることを証明したシーズンだったように思う。(鹿島担当・内田知宏)
◆【鹿島】勝ち切る、点を取り切るサッカーがはっきりと見えた…コロナ禍の2020年のJ1(報知)