点数を付けるなら「60点から70点ぐらい」
本音を言えば、「トップ下で勝負したい」、だ。
ただ、今季の主戦場はおそらくサイドハーフになりそうだ。清水との開幕戦を6日後に控えた2月21日の水戸とのトレーニングマッチでも、土居聖真のポジションは4-4-1-1の左サイドハーフだった。
ザーゴ体制1年目の昨季は、セカンドトップ気味のトップ下とサイドハーフで起用された。自身のパフォーマンスに点数を付けるなら「60点から70点ぐらい」だった。
落第点ではないが、及第点を少し上回る程度か。サイドハーフでの働きぶりに、土居自身はまるで満足していない。
「サイドハーフの時のパフォーマンスが平均点ぐらいだったので。プラスアルファを出せなかった。トップ下に入った時よりも、生き生きできなかった」
インパクトを残せなかった理由は、本人が一番理解している。
「リスクを負うようなダイナミックなプレーをもう少し取り入れてもいいし、もっとボールを引き出す、要求することも必要になってくる。サイドにいると、どうしても中央にいる時よりボールに触れる回数が少なくなってしまいがちなので」
トップ下への強いこだわりは持ちつつ、サイドハーフでの課題改善にも前向きに取り組むつもりだ。「どのポジションでもハイレベルにプレーしなければ、チームに貢献できない。どのポジションでもハイパフォーマンスを出せるように、日々頑張っていきたい」。
ユーティリティ性も魅力だ。たとえば、ボランチの選手全員が怪我で離脱すれば、代役を務められる自信はある。「どこでもやれる。しかも、ただやれるだけではなく、プラスアルファも必要になってくると思う」。いかなるチーム状況でも、求められるプレーヤーでありたい。想定以上の活躍を見せたい。「どんなイレギュラーがあっても対応できる経験はある」という言葉が頼もしい。
ユース出身の生え抜きは、鹿島一筋11年目を数える。在籍年数では、15年目の遠藤康に続き、2番目の長さだ。
小笠原満男、内田篤人、曽ケ端準と、クラブの中軸を担ってきたレジェンドたちは、すでに現役を退いている。次世代のアントラーズをけん引すべき存在でもある土居は、どんなリーダー像を描いているのか。
「背中で語れるような立ち居振る舞い、言動ができれば」
「年上だからとか、上の立場だからといって、“上から目線”みたいな言い方はしたくない。なるべく背中で語れるような立ち居振る舞い、言動ができればなと思っています。先輩面するのではなく、自分がやるべきことをやって、困った選手や後輩がいれば手助けできるように、寄り添ってあげられるように」
穏やかな語り口からソフトな印象を受けるが、胸には熱いものを秘め、フットボーラーとして揺るぎない矜持がある。魂のこもった一つひとつのプレーで周囲を鼓舞し、チームを力強く引っ張っていく。
2月27日にホームで迎える開幕戦の相手は、昨季は16位と大きく低迷した清水だが、土居は「新シーズンがスタートする時は、もう別のチームと考えたほうがいい」と警戒を怠らない。スタートが肝心なのは言わずもがな。開幕から公式戦6連敗と出だしで大きく躓いた昨季を教訓に「同じようにならないよう、しっかり準備したい」と口元を引き締める。
そして自らは、いかに“プラスアルファ”を示すことができるか。トップ下であろうと、サイドハーフであろうと、これまで以上に生き生きとした姿でピッチを駆け回り、決定的な仕事に絡む姿を見せてほしい。
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
◆【鹿島】「どのポジションでもハイレベルに」。見逃せない土居聖真が示すプラスアルファ(サッカーダイジェスト)