
日刊鹿島アントラーズニュース
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2021年2月2日火曜日
◆【コラム】「ワニの街」に「ワニのようなDF」がやってくる。植田直通にかかる即戦力としての期待 | リーグ・アン(DAZN)

【欧州・海外サッカー コラム】1月中旬にリーグ・アンのニームへの移籍が発表された日本代表DF植田直通。DAZN実況でお馴染みのアナウンサー・西達彦氏が、ニームというクラブ、そして植田にかかる期待を解説する。
1月中旬、日本代表DF植田直通(26)がベルギーのセルクル・ブルッヘから、リーグ・アンのニームへ買取オプション付きでレンタル移籍することとなった。
リーグ・アンでは通算10人目の日本人選手であり、CBとしてはトゥールーズでプレーし、鹿島アントラーズの先輩でもある昌子源(現G大阪)以来の日本人となる。ニームの公式SNSは「新しいDFが好きな動物は…ワニです!」と植田の加入を喜んだ。
ワニの街にワニのようなDFが来る
ワニはニームというクラブの、そして街のシンボルだ。ニームの市のエンブレムにも、クラブのエンブレムにも、ワニが描かれている。デニム生地(de Nîmes)の語源とされ、南仏・モンペリエとマルセイユの間に位置するニームには、円形劇場や世界遺産の水道橋など、古代ローマ時代からの遺構が残る。
紀元前1世紀、ローマ皇帝アウグストゥスがクレオパトラ率いるエジプト軍を征服して占領した際、兵士たちにそのご褒美として与えられたのがニームの街だった。ニームの街には至るところに「ヤシの木とワニ」のモチーフが飾られている。ヤシの木は勝利を、そしてワニはエジプトを意味する。ニームというクラブの愛称も「ル・クロコス(クロコダイルズ)」だ。
植田は、高卒新人として鹿島に入団する際、会見で「自分を動物に例えるとワニ」という話をしていた。「ワニは水中に獲物を引きずり込んで仕留める。自分も空中戦や1対1とか、得意な部分に持っていって仕留めたい。」ワニに誇りを持っている街に、「自分はワニのようなDF」と話す男がやってくるのだから、つかみとしては完璧だ。ニームの現地コメンテーターもこの逸話を紹介している。サポーターの心はつかめるはずだ。
ニームはCB陣に大きな問題アリ
セルクル・ブルッヘで出場機会を失っていた植田だが、セルクルは少し特殊な立ち位置のクラブだ。リーグ・アンのモナコのセカンドクラブ的な位置づけがある。
モナコは有望な若手を獲得して高く売るスタイルのクラブだが、モナコで出場機会のない若手を国外クラブにレンタルさせることが多い。セルクルはその受け入れ先のクラブで、モナコからのローン選手が4人(うちCBが2人)いる。今季のモナコはオセール(リーグ・ドゥ=2部)からジャン・マルセランなど二人の若手CBを獲得したが、現状のモナコでは出場機会がないため、セルクルにレンタルされた。彼らの出場機会を確保する必要がある。また、キャプテンも務めるジェレミー・タラベルの存在もあり、事実上、入り込めるCBの枠はなかった。
一方で、ニームはCB陣に大きな問題を抱えていた。
キャプテンも務めるアントニー・ブリアンソンは負傷から復帰したが膝に不安を抱える。実績のあるパブロ・マルティネスとロイク・ランドルも負傷離脱中で、実戦経験のある本職のCBがいない状態が続いていた。
下部組織から昇格させた若いケリャン・ゲッソン、上背のある守備的MFのリュカ・ドーをCBに置くなどしたが、急造のDFラインは失点を重ねた。また、DFに今季限りで契約が切れる選手が複数おり、CBの駒不足は明らかだった。金銭的負担のないローン加入はニームにとって渡りに船であり、他の選手の契約によっては、買取オプションの行使も十分にある。植田にとってもニームやセルクルにとっても、ポジティブなディールだ。
植田には即戦力の期待
ニームは今季からトップチーム初指揮となる42歳のジェローム・アルピノン監督が率いている。「良くも悪くも右サイド」というチームだ。基本システムは4-1-4-1。右MFに入るアルジェリア代表MFジネディーヌ・フェルハトを中心に攻撃を組み立てる。
フェルハトは17/18シーズンにル・アーヴルでリーグ・ドゥのアシスト王(20アシスト)になった経歴を持つアタッカー。スピード豊かなドリブラーで、ドリブル回数もリーグトップクラス。思い切りのいいオーバーラップを見せる右SBのソフィアン・アラクシュとの連携も良い。
フェルハトのもう一つの武器は空中戦だ。ロングパスの受け手としての回数がチームトップクラスで、空中戦の勝率も6割に迫る。フェルハトへのロングボールを起点に、フリックしたボールにチーム全体が反応して攻撃が始まる。
一方で、かなり右肩上がりな分、ボールをロストするとニームにとっての右サイドを一気にカウンターで破られて失点するケースが多い。
昨季まではフランスの年代別代表の正GKのポール・ベルナルドーニが最後の砦となっていたが、彼をアンジェに引き抜かれた今季は、DFラインに怪我人が続出していることもあり、あっけなく失点してしまう。
植田に求められる役割は…?
右CBに求められるタスクは多岐に渡る。右CBはチームを熟知しフィード能力も高いブリアンソンに任せ、左CBで空中戦や1対1の強さを発揮させた方が、植田の能力を生かせるように思える。ビルドアップもさほど重視していないチームなので、植田は自分の強みである対人守備能力の発揮に専念しやすいはずだ。他のCBが復帰したとしてもコンディションの不安は否めない。植田には即戦力の期待がかかる。
ちなみに、現在のニームの正GKはバティスト・レネ。昨シーズンまでトゥールーズに在籍しており、昌子源とチームメイトだった選手だ。レネも日本人選手と組むのは初めてではないし、植田もレネの情報を事前に入手することもできるはずだ。そして植田の強みは、フランス語圏であるベルギーでプレーし、若いDFラインを統率していた経験だ。言語という最大の壁を、ベルギーでの2年半で習得して乗り越えていることは大きい。
ニームは20日のマルセイユ戦で勝利し、8戦未勝利(1分7敗)の泥沼と最下位から抜け出し、プレーオフ圏内の18位に浮上した。負傷者も戻り始め、ようやく巻き返し体制が整いつつある。
24日のロリアン戦は対戦相手に新型コロナウイルスのクラスターが出て中止となったが、この間に植田はチーム戦術を学ぶトレーニングができたはずだ。植田のデビューは早くて31日のアンジェ戦。そして2月3日にはいきなりパリ・サンジェルマンとの試合が控える。世界最高の攻撃陣と植田がどう対峙するのか、そして降格の危機に瀕するチームの救世主となるのか。楽しみは尽きない。
文・西 達彦
ボイスワークス所属(局アナ経験なし)。Jリーグ・リーグアン(DAZN)ONE(abemaTV)なでしこリーグ(YouTube)マリーンズナイター・高校野球(チバテレ)西武ファームなど実況。趣味は乗り物全般、渋谷系音楽。
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