[3.31 JALチャレンジ杯 日本5-1ウズベキスタン 味スタ]
ウズベキスタン戦、キックオフ直前のピッチに頼もしい言葉が響いていた。
「困ったら俺にパスを出せ」
声の主はウズベキスタン戦で代表キャップ数74となったDF内田篤人(シャルケ)。内田の目を見てうなずいたのは、この試合が代表デビュー戦のDF昌子源(鹿島)だ。5歳違いの2人はウズベキスタンの攻撃に対し、まずまずの連係を見せた。その裏には内田の後輩に対する気遣いがあった。
「(昌子)源が初めてだったので、気を遣いながらやっていた。対人は慣れが大事。源はそんなにタッパ(身長)はないけど、タイミングさえ合えば大丈夫。俺だってちっちゃいけど、今日負けなかった。何とかなる」
「対人は慣れが大事」という信念の下、あえて昌子が試されるようなシチュエーションもつくってみせた。「気を遣うというのは、変に助けるのではない。いつもどおりやればいいかなと思っていたし、ある程度無理させたらどうなるのかなというのもあった。僕が高めに行って、センターバックのあいつに1対1をやらせたらどうなのかと」
やさしいだけの気遣いではなく、成長を促す気遣いをしようと思ったのは、かつて内田自身が実戦の中でこそ多くを身につけてきたと感じているからだ。そして、そのうえで、こう付け足すのを忘れなかった。
「困ったら俺にパスを出せ。困ったら俺のところにぶつけてくればいい。俺に敵がいてもいいから出せ」
清水東高を卒業してから10年6月までプレーしていた鹿島アントラーズには思い入れがあり、後輩のことはいつも気になっているという。「源は頑張っていたと思うし、僕自身、やっぱり鹿島の仲間とは長くやりたいと思う。サコ(大迫勇也)も柴崎(岳)もそう」と、体の奥深くに刻み込まれている鹿島愛を強調する。
右膝痛の影響もあってウズベキスタン戦の出場はハーフタイムでお役御免。チュニジア戦の6分間と足して2試合で51分の出場ながら、格別の存在感を見せた。ハリルジャパンには今や“兄貴分”となった内田がいる。
(取材・文 矢内由美子)