日刊鹿島アントラーズニュース

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2017年1月2日月曜日

◆第96回天皇杯全日本サッカー選手権大会 決勝(オフィシャル)


鹿島、6年ぶりの天皇杯制覇!ファブリシオの決勝弾で延長戦を制し、19冠達成!

鹿島が6年ぶり5度目の天皇杯制覇、そして9年ぶりのシーズン2冠を達成した。天皇杯決勝、市立吹田サッカースタジアムで川崎フロンターレと対戦すると、42分に山本のヘディングシュートで先制。しかし、54分に同点に追い付かれ、1-1で延長戦に突入する。鹿島は94分、途中出場のファブリシオが値千金の勝ち越しゴールを決めると、チーム一丸でリードを守り切った。2-1。120分の激闘を制し、6年ぶり5度目の天皇杯制覇を果たした。

鹿島は12月29日、ヤンマースタジアム長居で横浜F・マリノスを2-0で破った。相手の猛攻を受けたものの、曽ケ端と昌子、植田を中心に耐えしのぐと、41分に土居がヘディングシュートを決めて先制。そして73分、柴崎の高速クロスから鈴木が押し込み、リードを広げた。必殺のカウンターから2つのスコアを刻み、元日決勝への切符を掴み取った。

中2日で臨むファイナルへ、チームは大阪に残ってトレーニングを続けた。準備期間はわずかだが、12月に入って7試合を戦った選手たちは動じることはない。山本は言う。「ここまで来たら技術とかではなく、気持ちの問題だと思う」と。疲労を凌駕するタイトルへの渇望を胸に、シーズンラストマッチへと突き進んでいった。


指揮官は準決勝から先発メンバーを2名変更。右サイドバックに西、右サイドハーフに遠藤を起用した。前線は赤崎と土居、左サイドハーフには柴崎が入り、ボランチは永木と小笠原のコンビ。最終ラインは右から伊東、植田と昌子、山本が並び、最後尾には曽ケ端が立ちはだかる。ベンチにはGKの櫛引とファン ソッコ、伊東、ファブリシオ、中村、三竿、鈴木が控える。





2017年1月1日、青空に恵まれた大阪。元日に戦える誇りと喜びを噛み締めながら、アントラーズレッドの背番号12は朝早くから待機列を成した。タイトルマッチ特有の緊張感と高揚感がスタジアムを包む。2016シーズン最後の決戦へ、大きなチームコールが選手たちを鼓舞。そして14時3分、キックオフを迎えた。





序盤は川崎Fがボールをキープし、前線への圧力を強めていった。それでも、痺れるような戦いを繰り返してきた鹿島の選手たちが動じることはない。細かいパス交換から突破を図る相手の攻撃に対して、個々が厳しいボディコンタクトを敢行。ペナルティーエリア内では植田と昌子の若きセンターバックコンビが力強く、そして冷静にピンチの芽を摘んでいった。相変わらずの安定感を誇示し続ける曽ケ端も、時折襲う川崎Fのシュートに落ち着いて対処した。





なかなかチャンスを作れない中、鹿島のキャプテンがチームの闘志に火をつける。19分、ドリブル突破を相手のファウルで阻止されると、烈火の如く怒りを露わにし、スタジアムは騒然となった。褒められた行為とは言えないだろうが、戦う姿勢を前面に打ち出す背番号40とともに、選手たちは迫力に満ちた競り合いを繰り返していった。



25分以降、少しずつではあるが、敵陣深くまでボールを運べるようになった鹿島。赤崎や土居が最終ラインの背後を狙い続け、献身的なプレスとフリーランニングでチームの推進力となった。34分には遠藤がペナルティーエリア右奥へのパスに反応してクロスを上げ、チャンスを演出。そして36分、左サイドで高い位置を取っていた山本のクロスから遠藤が押し込んでゴールネットを揺らした。だが、オフサイドの判定で得点は認められず。スコアを動かすことはできなかったが、得点の予感が漂い始めた。

そして42分、歓喜の瞬間が訪れた。遠藤が蹴った右CKに反応した山本が、値千金のヘディングシュートをゴール左隅へ届ける。1-0。タイトルマッチにおいて極めて重要な先制ゴールは、長く険しい2016シーズンを誰よりも献身的に、そして誰よりも多く長く走り続けた背番号16によってもたらされた。セットプレーのチャンスを逃さなかった鹿島が、1点リードで前半を終えた。





1-0で迎えた後半、石井監督は痛みを抱えていた山本に代えてファン ソッコを投入。守備のユーティリティーを左サイドバックに配して必勝を期す。しかし、ビハインドを負って攻勢に出る川崎Fに押し込まれる展開が続くと、54分に同点ゴールを奪われた。ペナルティーエリア手前からスルーパスを通され、最後は小林に右足シュートを決められてしまった。







同点に追い付き、勢いに乗る川崎Fが猛攻を仕掛けてきた。しかし鹿島はしっかりと応戦し、逆転ゴールは許さない。58分には昌子が渾身のスライディングでシュートブロックを見せ、チームを救った。65分には小林のシュートがポストを直撃する場面もあったが、何とかピンチを脱した。試合は1-1のまま推移していく。

石井監督は67分に鈴木を投入。前線を活性化させて打開を図った。貪欲に突破を目指す背番号34は、力強いポストプレーでチームの基準点となり、献身的なプレスでも川崎Fを苦しめた。



互いに勝ち越しゴールを奪えないまま、試合は終盤へ。石井監督は88分、最後の交代カードを切った。小笠原に代えてファブリシオ。強力なシュートを備える背番号11はのちに、大きな仕事をやってのけることとなる。互いに譲らない戦いは、1-1のまま延長戦へと突入することとなった。交代枠を2つ残していた川崎Fに対し、鹿島はすでに3選手を交代。ピッチ上の11人が、残り30分の激闘に臨む。

延長前半、鹿島は立ち上がりから攻撃のギアを上げた。途中出場の鈴木とファブリシオが前線で力強い突破とポストプレーを繰り返し、川崎Fを押し込んでいく。93分、ペナルティーエリア内へ飛んだ浮き球に反応したファブリシオのプッシュは、惜しくも相手DFにクリアされてしまった。しかしその直後、この日2度目の歓喜が待っていた。

遠藤が蹴った右CKに反応した西のヘディングシュートはクロスバーに阻まれたが、セカンドボールを拾って敢行した二次攻撃で、鈴木が浮き球を競り合う。空中戦を制して後方に逸らしたボールは西のもとへ飛び、相手との交錯でペナルティーエリア内にボールが転がった。そこに待っていたのは、背番号11。迷うことなく右足を振り抜くと、強烈なシュートがゴール右隅に突き刺さった。94分、ファブリシオ。鹿島が2-1と勝ち越しに成功した。





再びリードを奪った鹿島は99分にも、遠藤の右CKからファブリシオがヘディングシュート。惜しくも左ポストに阻まれたが、追加点への意欲を示した。延長前半を終えて2-1。リードを保ち、残り15分の戦いへと臨む。

川崎Fは98分に森谷、延長後半開始時から森本を投入して反撃を仕掛けてきた。それでも鹿島は、土居が「あとは試合を終わらせようと思っていた」と振り返るように、しっかりと身体を張って攻撃を阻み、敵陣でのボールキープを織り交ぜながら時計の針を進めていった。機を見たカウンターでも川崎Fに脅威を与え続け、ついにその時を迎えた。







2-1。試合終了を告げるホイッスルが鳴り響くと、アントラーズレッドの歓喜が爆発した。鹿島が川崎Fを破り、6年ぶり5度目の天皇杯制覇を果たした。リーグとのダブル達成は2007年以来9年ぶりで、シーズン2冠はクラブ通算4回目。これで今季の全公式戦が終了し、ユニフォームに刻まれる星は19個となる。アントラーズファミリー全員で戦い、たどり着いた頂点。市立吹田サッカースタジアムにこだまする歓喜の歌声が鳴りやむことはなかった。鹿島が最高の形で2016シーズンを締めくくった。



54試合もの激闘の日々を終え、選手たちはシーズンオフに入る。つかの間の充電期間を経て、2017シーズンへ——。来季はアジアでの戦いも待っている。2冠王者として臨む新シーズンに向けて、さらなる進化を。鹿島の歩みが止まることはない。



【この試合のトピックス】
・2010シーズン以来、6年ぶり5度目の天皇杯制覇を果たした。
・国内三大タイトル19冠を達成した。
・シーズン2冠は2007年以来9年ぶりで、1997年と2000年(3冠)と合わせてクラブ史上4回目。
・川崎F相手の公式戦は、今季4試合で2勝1分け1敗となった。
・市立吹田サッカースタジアムでの公式戦は4試合目で、4連勝を果たした。
・ファブリシオが今大会3点目を決めた。

監督コメント

[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:石井 正忠
・後半も相手のボールの出し手にしっかりアプローチしよう。絶対に自由を与えるな!
・中央を絞って、相手を外に追いやろう。
・相手陣内に入ったら、焦らず確実にビルドアップしていこう。

川崎フロンターレ:風間 八宏
・冷静に落ち着いてプレーしていこう。
・ボールをシンプルに動かして相手を動かしていこう。
・守備は正しいポジションから。

[試合後]
鹿島アントラーズ:石井 正忠
歴史のある天皇杯で、6年ぶり5回目の優勝をすることができて本当に良かった。チャンピオンシップからクラブワールドカップ、そして天皇杯で、約1か月で10試合ほどをこなしてきた。クラブワールドカップの決勝でレアル・マドリードに敗れてしまって、悔しい思いをした中で、この天皇杯を獲ることが今季の締めくくりだと思っていた。その試合で勝ち切ることができて本当に良かったと思う。今年1年、アントラーズを支えてくれたチームスタッフとスポンサーの皆様、全国のアントラーズファン、サポーターの皆様のおかげだと思っています。

Q.アントラーズの選手たちは最後まで走っていたが、何がその要因なのか?コンディションなのか、気持ちの面なのか?

A.コンディションについては、クラブワールドカップの決勝でレアル・マドリードを相手に戦った経験がここで生きたと思うし、内容としても押し込まれながらも守備の部分で耐えてチャンスを狙うことがはっきりしていた。その戦い方も、120分戦い抜けた要因だと思う。クラブワールドカップを終えて、天皇杯の準々決勝が一番やりにくい試合だと思っていたが、ホームでしっかりと勝つことによって、準決勝と決勝は高いモチベーションで戦えたと思う。

Q.アントラーズの勝負強さを一言で表現するとしたら?

A.タイトルを獲った者にしかない「勝負どころがわかる」ということだと思う。

Q.守備の堅さが目立っていた中で昌子選手が非常に成長したと思うが、どう映ってい
るか?

A.彼はもともと1対1の強さを持っていて、その中でセンターバックとして安定したポジショニングやコーチングの部分が、試合を増すごとにどんどん良くなっていった。ビルドアップの部分でも、自分からミスをしてペースを乱すことがあったが、安定感が増してきたことによって、自分のプレーも安定してきているのではないかと思う。クラブワールドカップでレアル・マドリードのFW陣を抑えたことはかなりの自信になっていると思うし、プレーにも現れていると思う。

Q.小笠原選手に優勝カップを掲げるように促された時の気持ちは?

A.満男はチームのために戦うことを常に頭の中に入れて戦っている選手。ゲームキャプテンである彼が掲げるべきだと思うが、監督の私に最初にカップを持たせてくれたことは、日頃から犠牲心を持って戦っていることの現れだと思う。

Q.山本選手とファン ソッコ選手の交代の理由と、同点に追い付かれた後にファブリシオ選手を起用した狙いは?

A.脩斗に関しては、前の試合から痛めていた部分があまり良くなかった。ドクターと相談してソッコを投入した。ファブリシオについては、90分で決着をつけようと思って3枚の交代カードを切った。そこはうまくいかなかったが、チームが一体感を持ってやるべきことをしっかりとやってくれたと思う。ファブリシオ自身のパフォーマンスは、いつもしっかりと前線で時間を作ってサポートを待ちながら、相手DFの背後へ動き出すことを狙っていた。シュート力や推進力があるので、そこを期待して投入した。点を取ってくれて良かった、非常に良いパフォーマンスだった。


川崎フロンターレ:風間 八宏
選手が本当に、最後まで勝ちたいという気持ちを出してくれた。チャンスは数多く作れていたし、我々のサッカーを見せることができたと思う。結果だけは残念だけど、次につながると思う。選手たちがものすごく成長した姿をベンチから観ることができた。悔しいが、それ以上に喜びがある。逞しくなった選手たちは僕にとって喜びであり、誇りでもあると思った。


選手コメント

[試合後]

【櫛引 政敏】
チャンピオンシップ、クラブワールドカップ、天皇杯を戦ったこの1か月は、1シーズン分くらいのような感じがする。リーグと天皇杯で優勝できたことは素直に嬉しい。その半面、ピッチに立てなかったことは悔しい。良いシーズンの終わり方、そして良いスタートになったと思う。

【昌子 源】
自分は初めてだけど、クラブとしては何度も決勝に進んでいた。選手たちだけではなくスタッフも含めたクラブ全体の落ち着きがあったし、そういうところが強さだと思う。1つタイトルを獲るとやめられなくなるというか、また次も獲りたくなる。

【永木 亮太】
試合の内容はあまり覚えていない。本当に疲れたけど、うまく試合を運ぶことができて良かった。来季はACLもあるし、リーグも1シーズン制になる。しっかりと勝てるようにしていきたい。

【土居 聖真】
ホッとした。今までも厳しい戦いをしてきたし、レアルと戦った経験がかけがえのないものになっていた。この優勝でまたアントラーズが強くなるし、新しいアントラーズを見せられたのではないかと思う。

【柴崎 岳】
ポジションが変わってもチームの役割は変わるが個人の役割が変わることはない。19冠目が懸かっていたし、タイトルが取れたことが良かった。

【ファブリシオ】
(ゴールの直後は)まず家族のことが頭に浮かんだ。どうすればチームの役に立つのかということを、日々の練習から考えて取り組んでいたし、得点を決めた後は優勝カップを持ってチームメイトと喜んでいる姿しか浮かばなかった。この半年間、点を取る仕事ができたかというとそうではないけれど、今年最後の試合で点を取ることができて良かった。

【中村 充孝】
チームとして、疲れよりもタイトルを獲りたいという思いが上回っていたと思う。この舞台に立てるのは2チームしかいないわけだから、幸せなこと。そのうえでタイトルを獲ることができて良かった。

【ファン ソッコ】
しっかりと試合に入ることはできたけど、失点した後はメンタル面を整えるのが難しい時間帯が少しあった。それでも周囲のサポートがあって、しっかりと点を取って勝てたことが良かった。アントラーズの一員として前に立たせてもらってカップを掲げるのは、最高の気分だった。

【山本 脩斗】
うまくマークを外してフリーでシュートを打てた。点を取ることができて良かった。チームで連携しながらフリーの選手を作ろうと話していた。全員で掴んだ勝利だと思う。個人的にはリーグも天皇杯も初めての優勝だった。本当に嬉しいし、1年間やってきたことが実を結んだと思う。優勝は何度味わっても良いもの。また獲りたいという気持ちになっている。

【赤崎 秀平】
クラブワールドカップ以降、相手にボールを持たれても最後のところで守るという良い経験を積めていた。焦りはなかったし、全員で戦えていたから不安感はなかった。前半を0-0で終えれば勝てるという自信があったし、1点を取ることができれば優位に立てるとも思っていた。クラブワールドカップで得た自信があったし、全員で戦えていた。

【三竿 健斗】
物心がついた時から、元日の試合を夢見ていた。準々決勝に出場してチームの勝利に少しは貢献できたのではないかと思う。2016シーズンはリーグ戦やチャンピオンシップ、クラブワールドカップにほとんど出場できず、悔しい思いしかない。積み重ねてきたものを来シーズンは出せるようにしたい。

【曽ケ端 準】
決勝まで進めば、相手がどこであれ苦しい展開になる。チームとしてタイトルを獲ることが目標だったので、それを達成することができて良かった。控えの選手もモチベーションを下げずにやってくれていたし、また優勝を味わいたいとみんなが感じたと思う。それを積み重ねていきたい。

【西 大伍】
「失点さえしなければいける」と、みんなが思っていたと思う。攻められているとは感じなかった。1失点は仕方がない。セットプレーはチャンスだと思っていた。

【植田 直通】
(押し込まれても)焦りはなかった。今はこういうスタイルで戦っている。試合に出られない時期もあったけど、それを乗り越えたから今がある。その時期もすごく有意義だったと思うし、腐らずに準備をしてきたからこそだと思う。

【伊東 幸敏】
天皇杯は準々決勝、準決勝とスタメンで出場したので、19個目のタイトル獲得に少しは貢献できたと思っている。チームやスタッフ、サポーター全員で獲ったタイトルだと思う。できれば優勝をピッチで味わいたかったが、それを次のシーズンに向けた目標にしたい。

【遠藤 康】
嬉しいですね。今年を良い形でスタートできた。目の前で優勝されるというのは本当に悔しいこと。クラブワールドカップと同じ立ち位置になりたくなかったし、その思いが良い結果につながったかなと思う。同点に追い付かれても苦しくはなかった。チーム全体がバランスを崩さずに戦ったことが良かった。

【鈴木 優磨】
自分がサイドに流れて起点になればいいと思っていた。あそこで1点を取れるのがうちの強さ。優勝するチームとしないチームがはっきりした試合になったと思う。誰が何をやるのかが、はっきりしていた。DFの4人とソガさんが頼もしすぎる。あれだけ押されていても、見ていて安心感があった。2017年の良いスタートを切ることができた。

【小笠原 満男】
シーズンの最後にタイトルを獲れたことは嬉しいことだけど、これを続けていかないといけない。さらに強いチームになっていきたいと思う。

http://www.so-net.ne.jp/antlers/games/51940

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