日刊鹿島アントラーズニュース

Ads by Google

2017年2月21日火曜日

◆堅実にゼロックス杯を制した鹿島。 あとは新戦力がもたらす「強引さ」(Sportiva)


 2017年シーズンの到来を告げる、FUJI XEROX SUPER CUP(ゼロックス杯)が行なわれ、昨季J1優勝の鹿島アントラーズが同2位の浦和レッズを3-2で下した。



 鹿島が昨季終盤、JリーグチャンピオンシップからFIFAクラブワールドカップ(クラブW杯)、さらには天皇杯で見せた勝負強さはいまだ健在。レアル・マドリードを土俵際まで追いつめた勢いそのままに、今季Jリーグの最初のタイトルマッチを制した。

 だが、この時期、すなわちJ1とAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の開幕を控えた段階での”一冠獲得”には、あまり大きな意味はない。

 やはりフォーカスすべきは結果よりも、先に挙げたふたつのビッグタイトルを手に入れるべく、長いシーズンを戦うための準備がどれだけ進んでいるか、であろう。

 昨季の鹿島は、J1と天皇杯の二冠こそ獲得したが、率直に言って選手層の薄さは否めなかった。レギュラークラスにはJ1トップレベルの戦力が揃っていたが、主力と控えとの力の差が大きく、選手層という点では昨季タイトルを争った浦和や川崎フロンターレに見劣った。

 分かりやすい例が、クラブW杯での戦いぶりである。

 リーグ戦からチャンピオンシップ、さらにはクラブW杯と、短期間で立て続けに多くの試合をこなさなければいけないとあって、一昨季にJ1王者として出場したサンフレッチェ広島は、毎試合のように選手を大幅に入れ替え、3位となった。

 それとは対照的に、昨季の鹿島はほとんどメンバーを入れ替えることなく戦い続けた。交代も含めた選手起用を見る限り、実質的な戦力として計算できていた選手は、14、15名しかいなかっただろう。

 つまり、今季、鹿島がJ1とACLを並行して戦い、どちらのタイトルも獲得しようと考えるなら、シーズンオフの補強は必須。それこそがJ1王者の課題だったのだ。そこに注目が集まる中で行なわれた、今季最初の公式戦であるゼロックス杯。鹿島の先発11名には、今季新加入の選手が4名も含まれており、オフに行なった補強の成果をうかがうには絶好の機会となった。

 先発出場でゼロックス杯のピッチに立った新顔は、GKクォン・スンテ(←全北現代)、DF三竿雄斗(←湘南ベルマーレ)、MFレオ・シルバ(←アルビレックス新潟)、FMペドロ・ジュニオール(←ヴィッセル神戸)の4名である。

 クォン・スンテを除けば、J1で通用することはすでに過去の実績が証明済み。唯一例外の韓国代表GKにしても、前所属クラブでは昨季ACLで優勝を果たすなど、十分な経験がある。名前だけを聞けば、かなり豪華な補強に成功したと言っていい。

 とはいえ、どんなに高いレベルの選手でも、新しいチームでプレーすることの難しさはある。優れた能力を持っていても、チームのなかで発揮できなければ宝の持ち腐れでしかない。

では、4名の新戦力はゼロックス杯でいかなるプレーを見せたのか。

 結論から言えば、この段階にして早くも”鹿島の選手”になっていた。それは鹿島というチームが確固たるサッカーのベースを築いており、各選手がそれに従い、規律を持ってプレーすることが徹底されているからだろう。思いのほか、チームに早くフィットしている、というのがその印象だ。鹿島の石井正忠監督も「もう少し時間がかかると思った」と認めながら、こう語る。

「(これから先の)試合を通してコンディションを高め、戦術理解を進めていくことになると思っていたが、今日のパフォーマンスは非常によかった」

 だがしかし、ゼロックス杯で受けた印象は、いい言い方をすればチームに「溶け込んでいる」のだが、悪く言えば「埋没している」。

 ペドロ・ジュニオールやレオ・シルバは本来、もっと強引に相手ゴールに迫ったり、中盤から前にボールを持ち出したりと、攻撃に迫力や推進力を加えられる選手だ。にもかかわらず、この試合でのふたりは、忠実に守備時のポジションを取り、ボールにアプローチし、そつなく役割をこなしてはいたが、彼らに期待されている(はずの)プラスアルファはほとんど見られなかった。後半に入り、レオ・シルバがわずかに新潟時代を彷彿させる力強さを見せた程度だ。

 また、三竿にしても質の高い左足のキックを備えており、湘南時代はもっと攻撃に参加できる選手だったが、この試合に関して言えば、ほとんど守備の持ち場を離れることがなかった。

 当の三竿が試合後、「攻撃でもよさを出せればよかったが、ゲームの展開的に難しかった」と明かしたように、浦和が三竿の対面となる右サイドに、先発でMF駒井善成、途中交代でMF関根貴大と、単独でのドリブル突破を武器とする選手を配置したことは、攻撃を自重せざるをえなかった大きな理由だろう。この試合に関してはやむをえないとしても、今後は攻撃面でも、もっと持ち味を発揮してほしいところだ。

 3バックの左DFを務めた湘南から、4バックの左サイドバックを務める鹿島へとチームが変わり、三竿は「(守備時に)サイドでの1対1の場面は去年より多くなる」と言い、J屈指の常勝軍団でプレーする覚悟をこう語る。

「サイドバックはDFなので、まずは守備が第一。鹿島は守備ありきのチームだし、我慢して勝ち切るのが伝統。守備で我慢しながら、1、2回のチャンスで(攻撃に)上がって、いいクロスを入れられるように(プレーの)精度を上げていきたい。(新加入ながら周囲の選手との)連係は悪くないので、これを続けていければいい。プレシーズンマッチはJ2(のクラブ)としかやっていなかったので、まずは公式戦、しかもタイトルがかかった試合をこなせたのが一番の大きな収穫だと思う」

 石井監督が「普段の練習から競争意識が高まり、紅白戦の内容もいい。(新チームでの活動開始から)短期間でもチーム力は高まった」と手応えを語ったように、現段階での成果は上々。豪華な新戦力を、まずはうまく取り込んだ。鹿島らしい手堅いサッカーを維持しながら、選手層を厚くすることに成功している。

 だが、選手補強の成果が単に層を厚くしただけでは、J1連覇、あるいはACLと合わせて”二兎”を得ることはおぼつかない。石井監督が語る。

「今までのチームに新加入選手を融合させながら、高いレベルのサッカーをやっていきたい」

 本当の意味での補強の成功は、鹿島らしい「堅実さ」の上に、いい意味での「強引さ」が上乗せされるかどうかにかかっている。今後、鹿島がどう変化していくのかに注目していきたい。

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jleague_other/2017/02/19/___split_26/index.php

Ads by Google

日刊鹿島

過去の記事