日刊鹿島アントラーズニュース
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2017年2月21日火曜日
◆何もかもが対照的だったゼロックス杯。 鹿島と浦和は大事にする要素が真逆!(NumberWeb)
ジョゼップ・グアルディオラのマンチェスター・シティとジョゼ・モウリーニョのチェルシー、あるいは、ユルゲン・クロップのドルトムントとユップ・ハインケスのバイエルン。いや、海外の例を持ち出すまでもなく、'90年代後半の鹿島アントラーズとジュビロ磐田、2000年代後半の浦和レッズとガンバ大阪のような関係性だろうか。
スタイルや哲学など、チームの「色」がまるで異なる好敵手の存在が、その2チームの対戦をより味わい深いものにする。
2月18日、昨年のチャンピオンシップ決勝の再現となった鹿島アントラーズと浦和レッズによるFUJI XEROX SUPER CUPは、何もかもが対照的で、改めて互いに「何を大事にしているのか」が浮かび上がる面白いゲームだった。
「相手にとって嫌なチームになる」という優先項目。
前線にペドロ・ジュニオール(前ヴィッセル神戸)を、ボランチにレオ・シルバ(前アルビレックス新潟)を加えた鹿島は「堅守」と「速攻」、その双方において昨シーズンよりも精度や迫力が高まりそうな気配がある。
もちろん、鹿島の最大の武器はカウンターではなく、対戦相手や戦況に応じて変幻自在に戦える点にある。カウンターを狙うべきときには狙い、ボールを握って落ち着かせるべきときにはチームとしてそれができる。そうした戦い方の柔軟性において今シーズン、カギを握りそうなのは土居聖真だろうか。
2トップの一角、トップ下、サイドハーフを務められる器用さで前線の組み合わせにバリエーションをもたらすだけでなく、緩と急を自在に操るキープ力とドリブルで、攻撃のリズムも変えられる。その土居が、攻撃陣の再編について言及する。
「迫力が出たというか、ゴリゴリ系の選手が増えたので、そういう選手を使い、使われながらやっていきたいですね。迫力や推進力はすごいと思う。自分としては、一緒にゴリゴリ行く場面と、ゴリゴリ系の選手に相手の目が行くところで、相手の逆を取ったり、裏を狙ったり、バリエーションをつけていきたい。それができれば、相手にとって嫌なチームになると思う」
「相手にとって嫌なチームになると思う」という表現に、鹿島のチームとしてのプライオリティがくっきりと見える。
試合後、石井正忠監督は浦和との比較において、「うちは本当にベーシックなサッカーをやっていると思っている」と語った。人と異なることにトライしようとする監督が多い中で、ベーシックであると公言するのは珍しいかもしれない。しかし、特殊なことでも常識外れなことでもなく、オーソドックスなことを完璧と言える領域まで高めようとしているのが鹿島というチームであり、チームをそこへと導くチャレンジをしているという誇りが、石井監督にはあるのだろう。
駆け引きではなく、攻撃の徹底を選んだ浦和。
一方、浦和は攻撃的なスタイルを掲げているが、ホームで逆転されたチャンピオンシップ決勝第2戦を顧みれば、今シーズンは守備力やゲームマネジメント、駆け引きを磨くことに主眼が置かれても不思議はなかった。
だが、ミハイロ・ペトロビッチ監督が打ち出したのは、さらなる攻撃の徹底。「相手に90分プレスを掛け続け、相手のコートで試合をする」と選手たちに説き、これまで以上にバランスの針をさらに攻撃へと傾け、相手を圧倒することを誓った。
即戦力を獲った鹿島、将来性を取った浦和。
鹿島戦では、3日後のACLに備えて槙野智章と前日に負傷した柏木陽介をメンバーから外し、興梠慎三もベンチスタートだった。そのため、相手を押し込み続けるような場面は見られなかったが、それでもプレスを掛けに行く前線の選手に呼応して高く設定されたディフェンスラインから、今シーズンの狙いがうかがえた。ラインをコントロールした遠藤航が新シーズンの戦い方について語る。
「攻撃も守備も相手陣内でやるのはリスクもありますけど、後ろの選手としては、前でボールを奪う意識を常に持たなきゃいけないと思っています。去年よりもハーフウェイラインを越えて守備をするシーンはすごく増えるかなと。そこでボールを奪い切れれば、チャンスになる。行くときと行かないときの判断も大事になると思っています」
今オフの補強戦略も対照的だった。
ブラジル人選手3人(前述のふたりと元ブラジル代表MFレアンドロ)と韓国人GKクォン・スンテ、計4人の助っ人を獲得した鹿島が自前の選手でカバーし切れないポジションに一線級の選手を加えて戦力を一気に高めたのに対し、浦和はラファエル・シルバ(前新潟)こそ即戦力だが、どちらかと言えば、将来性のある若い選手たち(長澤和輝、矢島慎也、田村友、菊池大介)を獲得して「レッズカラー」に染めようとしているイメージだろうか。
ペトロビッチがチーム作りに持つ矜持と自負。
今シーズンの補強について問われたペトロビッチ監督は「J2の千葉、岡山、あるいはJ2に落ちた福岡、湘南のレギュラーを獲得したこと、それが全てのタイトル獲得を目標に戦っているチームにとって、昨シーズンに74ポイントを取ったチームにとって『補強』なのか」と語ったものの、その後に続けられた「新加入選手たちは、ユースから上がってきた関根(貴大)、仙台から来た武藤(雄樹)、清水から来た高木(俊幸)、京都から来た駒井(善成)のように時間をかけて必ず成長すると思うし、そういう選手たちが戦力を底上げし、競争に絡んでいってくれると思います」という言葉を聞けば、補強に不満があるというわけではないだろう。
むしろ、そこにはチーム作りの矜持と自負が感じられた。私は若い選手を育ててチームを強くするのが好きなのだ、と。そうやって抜擢され、チームとともに成長していったのが、指揮官が例に出した関根や武藤、高木、駒井であり、サンフレッチェ広島時代の柏木、槙野だった。
25年目のJリーグが、始まる。
FUJI XEROX SUPER CUPとの向き合い方も対照的で、鹿島は現状におけるベストに近い陣容だったが、浦和は前述したように何人かの選手を温存して臨んだ。もっとも、その点について指摘するのは酷だろう。3日後に控えたACLは、鹿島がホームなのに対し、浦和はアウェーで、シドニーまで向かわなければならないからだ。
なにはともあれ、シーズンの幕開けを告げる恒例のスーパーカップは終わり、週末にはいよいよ25年目のJリーグが開幕する。
開幕戦に先駆けて、2月21日に鹿島は蔚山現代と、浦和はウェスタン・シドニー・ワンダラーズとACLの開幕戦を戦う。カシマサッカースタジアムに凱歌が轟くことを、オーストラリアから吉報が届くことを期待したい。
http://number.bunshun.jp/articles/-/827471
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