日刊鹿島アントラーズニュース
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2017年9月21日木曜日
◆第97回天皇杯全日本サッカー選手権大会 ラウンド16(オフィシャル)
天皇杯 ラウンド16
底力を見せたのは鹿島!金崎の2発と中村、土居のゴールで浦和を撃破、天皇杯準々決勝進出!
鹿島が難敵を破り、連覇への道のりを力強く前進した。天皇杯ラウンド16、浦和レッズ戦。熊谷陸でのナイトゲームに臨むと、金崎の2得点でリードを奪う、理想的な展開に持ち込む。しかし、59分と69分に失点を喫してスコアは2-2に。思いがけない点の取り合いとなったが、74分に中村、そして90分に土居がゴールネットを揺らして底力を見せつけた。4-2と競り勝ち、ベスト8進出。10月25日の準々決勝では神戸と対戦する。
4日前、鹿島は新潟の夜に大逆転劇を演じてみせた。J1第26節、4-2。最下位に沈む相手に2点を先行される不甲斐ない展開となったが、ハーフタイムに大岩監督がチームを一喝。「前半は“いつかは追いつける”という気持ちがあったかもしれない」と昌子が振り返ったように、幾多もの決定機を生かせなかった45分間は閉塞感が漂っていたが、インターバルを経てピッチに帰還した選手たちはアグレッシブな姿勢を取り戻した。立ち上がりにレアンドロがヘディングシュートを突き刺して反撃の狼煙を上げると、輝きを放ち続ける背番号11はハットトリックを達成してチームを逆転へと導く。そして終了間際には金崎がPKを決め、勝利を決定付けた。
「前半と後半で違うチームになってしまった」と指揮官が反省の弁を述べた通り、改善すべき点が数多く見つかった90分でもあった。とはいえ、勝ち点3という結果を掴んでみせたことが何よりも重要だ。勝利の道のりを突き進みながら、さらなるレベルアップを目指して切磋琢磨を続ける。新潟の地を後にする選手たちの視線は、すでに次なる戦いへと向いていた。
次なる戦い――。中3日で迎える一戦は、元日決勝と連覇を懸けた大一番だ。難敵・浦和とラウンド16で対峙することとなった。新潟戦翌日から、チームはトレーニングを積み重ねて準備を進めた。試合前日にはミーティングを行い、セットプレーの確認を入念に行った。1つのスコアがより重い意味を持つノックアウトマッチへ、集中力を高めていく。グラウンドは熱を帯びた。大岩監督は「どの大会でも勝ちにいくことは変わらない」と語り、山本は「上に行くためには倒さなければいけない相手」と勝利への決意を述べて熊谷へと向かった。
3連戦の2試合目に臨む指揮官は、4日前から先発メンバー3名を入れ替えた。山本を左サイドバックに復帰させ、ボランチの一角には小笠原を指名。さらに2列目には中村を先発起用した。その他、GKは曽ケ端、最終ラインは山本の他、昌子と植田のセンターバックコンビ、そして右サイドバックには伊東が並ぶ。ボランチは小笠原とともにレオ シルバが並び、右サイドハーフは新潟戦でハットトリックのレアンドロ。そして2トップは金崎と土居が務める。ベンチにはGKのクォン スンテ、ブエノ、永木、三竿健斗、安部、鈴木という面々が並んだ。
曇り空に覆われた水曜日のナイトゲーム。アウェイ扱いとなる熊谷での一戦だが、2冠獲得への闘志を燃やす背番号12が続々と足を運んだ。県内から多くのサポーターが足を運んだホーム側スタンドに人数では及ばなくとも、アントラーズレッドの情熱が熊谷の夜を焼き焦がしていく。
19時、キックオフのホイッスルが鳴り響いた。ここ数試合、開始直後のゲームコントロールに課題を残している鹿島は、進化の証を刻み込むべく、ギアを上げてアグレッシブな姿勢を見せた。浦和にボールポゼッションを許しても、両サイドの深い位置で起点を作られても、動じることなく対応を続けていく。集中力を研ぎ澄まし、激しいボディコンタクトでピンチの芽を摘んでいった。
そして、待望の先制ゴールは7分だった。中盤から土居が繰り出した正確無比のスルーパスで中村が最終ラインの背後を取る。完全にフリーの状態でペナルティーエリアに入った背番号13は、シュートコースを切ろうと飛び出してきた相手GKをあざ笑うかのようなラストパス。左側を並走していた金崎に求められた仕事は、無人のゴールへ難なく押し込むだけだった。1-0。エースがゴールネットを揺らし、鹿島がファーストシュートで均衡を破ってみせた。
進化の証をスコアという形で刻んでみせた鹿島は、反撃を期す浦和にボールポゼッションを許す展開が続く。中盤で起点を作れず、セカンドボールを拾われて二次攻撃を受ける場面も数多くあった。それでも、サイドハーフのレアンドロや中村も精力的にプレスバックし、山本や伊東との連動したプレスで相手に自由を与えない。クロスを上げられても、昌子と植田がしっかりと身体を張り、曽ケ端が安定感抜群のセービングでゴールマウスに立ちはだかった。
鹿島は27分、曽ケ端のゴールキックから最終ラインの昌子、小笠原、山本とつないで浮き球を中盤へ。ポストプレーを成功させた土居が前を向くと、右前方のスペースへスルーパスを通す。最終ラインの背後へ走り込んだレアンドロは迷うことなく右足を一閃。強烈な一撃が浦和を襲ったが、惜しくもサイドネットに飛んでしまった。
前半は残り15分を切った。集中しなければならない時間帯、浦和のセットプレーが続く展開となってゴール前に釘付けになる展開となったが、鹿島の選手たちは身体を張り続けた。1分と表示されたアディショナルタイムもしのぎ切り、前半が終了。しっかりとリードを保ったまま、ハーフタイムを迎えた。
漆黒の闇に包まれた熊谷を、アントラーズレッドの歌声が切り裂く。ピッチへと帰還した選手たちに、ビジタースタンドはさらなるゴールを渇望する声を届け続けた。後半、キックオフ。準々決勝進出へ、勝負の45分が幕を開けた。
指揮官が「集中して、緊張感のある入り方をしてくれると思う」と信頼を語っていたように、この日の鹿島は後半もしっかりと集中力を保ってプレーを開始した。そして再び、立ち上がりにスコアを刻んでみせる。50分、鮮やかなパス交換からペナルティーエリアへ進出し、エリア左奥でパスを受けたレアンドロが鋭い突破。飛び出してきた相手GKに倒され、PKを獲得した。キッカーは、背番号33。鹿島のエースが放ったシュートは、力強くゴール右隅へ突き刺さった。2-0。鹿島がリードを広げた。
少ないチャンスを確実に生かし、2点を先行する理想的な展開となった。しかし、ここから鹿島は後退してしまう。金崎に代えて鈴木を送り出した直後の59分、セットプレーのこぼれ球からズラタンに押し込まれ、失点。1点差に迫られてしまった。さらに劣勢は続き、ゴール前へ迫られる時間が続いた。昌子は「リードしているのに、チーム全体の焦りを感じた」と反省の弁を述べている。
そして69分、次のスコアも浦和のものだった。カウンターから左サイドを破られると、ファーサイドへのクロスを通される。フリーで待っていた武藤にトラップからシュートを決められた。2-0から、2-2へ。4日前の新潟戦を反対の立場から想起するような展開で、鹿島はリードを失ってしまった。
しかし、底力を見せたのは、連覇を狙うビクトリーホワイトだった。失点から5分後の74分、右サイドで得たスローインから土居がペナルティーエリア右手前へカットインすると、ラストパスを中村へ。エリア正面でゴールを視界に捉えた背番号13は、アイデアと技術の詰まった右足を振り抜く。放たれたシュートは相手GKの手を弾き、そして左ポストに当たってゴールへ吸い込まれた。
再び奪ったリードを、失うわけにはいかない。鹿島は浦和の反撃に応戦し、機を見たカウンターで牙を剥いた。残り10分を切ってからピッチへ送り出された永木と安部も、持ち味を存分に発揮してチームのために献身した。
そして90分、勝利を決定付けるスコアが刻まれた。右サイドのスペースへ安部が飛び出し、パスを受ける。解き放たれたかのように加速した背番号30が浦和を切り裂くと、そのスピードと鮮やかなコントラストを描く、冷静な判断でクロスを選択。正確無比のボールに反応したのは土居だった。ヘディングシュートがゴールネットを揺らし、ホーム側スタンドを沈黙させた。4-2。鹿島が打ち合いを制し、準々決勝進出を決めた。
次なる戦いは3日後、J1第27節でG大阪をカシマに迎え撃つ。3連戦を締めくくる90分も難敵との対峙だが、チーム一丸で勝利を掴みに行く。連勝街道を突き進むために、チームは明日15時からのトレーニングでホームゲームへの準備を進めていく。
【この試合のトピックス】
・天皇杯で浦和と対戦するのは1992年、2006年に続いて通算3回目で、初めて勝利を収めた。
・浦和との公式戦は昨季のJ1チャンピオンシップ決勝第2戦から4連勝。今季は3戦全勝となった。
・曽ケ端がフル出場を果たし、釜本邦茂氏と並び天皇杯歴代首位タイとなる通算59試合目の出場を記録した。天皇杯初出場は2000年12月13日に行われた3回戦の鳥栖戦。
・金崎が2得点を記録。公式戦2試合連続でPKを決めた。
・小笠原が公式戦3試合ぶりの先発復帰を果たした。
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・守備の時、コースを限定し、あわてずに外に追い出していくことを徹底しよう。
・ボールを奪った後のファーストプレーは行きすぎず、シンプルにボールを動かしていくこと。
・後半頭からもう1回気持ちを見せてプレーしよう。
浦和レッズ:堀 孝史
・サイドからよい仕掛けができている。
・よいタイミングでローテーションを使おう。
・あわてずにゲームを進めて逆転しよう。
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
自分たちの課題である立ち上がりに関しては、選手たちが非常に集中して入ってくれたと思う。リードした時に戦い方はもう一度整理して、次へ生かしたい。ただ、最後に突き放す力があるということは自信を持っていいと思う。選手たちにも「評価している。自信を持っていい」と伝えた。
Q.リードされた後の戦い方について、アントラーズとして2-0から2-2というのはあってはならないと思うが?
A.1点目はセカンドボールへの反応が遅れた。2点目はサイドから崩されて、逆サイド(という展開)。メンタル的な部分も当然あるだろうし、2-0で戦うにあたっての時間の使い方を選手それぞれが統一できていなかったと感じている。失点前後の場面については映像で確認しながら選手たちに落とし込みたい。
Q.浦和は監督が代わってシステムにも変更があったが、どのような狙いでこの試合に臨んだのか?
A.ボールの動かし方、攻撃の部分はあまり変わっていないと分析していたが、選手が何人か変わった中で、そのクオリティーに苦労しているという印象だった。自分たちがやるべきことをやっていれば、非常に良い形で守備をしながら、攻撃につなげることができるのではないかとハーフタイムでも話をした。守備に関しては、5枚から4枚になるということで、距離感を掴めていないのではないか、慣れていないのではないかという分析をしていた。そこをうまく突いていければと考えていた。
Q.金崎選手が公式戦2試合で3得点だが、最近の状態やプレーをどう見ているか?
A.彼に限って言えば、非常にコンディションが良いということが大前提として挙げられる。得点に直接つながる要因ではないかもしれないが、前線からの守備は彼の素晴らしい部分で、評価していい部分。それをやり続けながら得点も取る。タスクをしっかりと果たしながら、攻撃の面ではスピードをもってゴール前へ行ける。それで周囲の信頼を得て、ボールが自然と集まる。そのような好循環が生まれていると思う。
Q.金崎選手を下げた後に失点したのは嫌な展開だったと思うが、スピードのある選手をベンチに残していたのは、余裕があったからか?
A.金崎は少し体調を崩していて、早めに代える予定だった。ただ、彼が得点を取ることでチームに勢いが出るという点では評価している。スピードがある選手云々というよりも、交代後は勢いがなかなか出なかった。優磨はなかなか試合に入れていなかった。時間が経つにつれて次第に慣れてはいったが、その部分は私が反省するところだと思う。(トーナメントの)天皇杯なので、延長戦も含めていろいろなことを考えてマネージメントしていた。少し遅くなったが、相手の出方を見ながら交代出場の選手たちがよくやってくれたと思う。
Q.金崎選手は調子が良かったのか、悪かったのか?
A.金崎はこの2日間ほど、発熱があった。次の試合も含めて考えることだが、短い時間でということだった。コンディションという部分では、走る勢いやプレッシャーのスプリントは持ち味なので、体調が悪い中でもよくやってくれたと思う。
浦和レッズ:堀 孝史
前後半ともに立ち上がりに失点してしまって、難しい試合になってしまった。2点ビハインドから選手たちはしっかりと力を使って追い付くところまで行ってくれたが、その後の試合の進め方を含めて、自分の指示の出し方を含めて、力が足りなかったと思う。最後まで諦めずに攻撃をしてチャンスを作れたが、決め切るところが課題になる。多くの失点を喫してしまったことも分析をしていきたい。
選手コメント
[試合後]
【中村 充孝】
前後半とも点がすぐに入ったし、良い入り方はできていた。ただ、自分たちで苦しくしてしまった。反省は次々と出てくるので、しっかりと改善したい。シュートはいつもは止めて狙うけど、今日はダイレクトで打った。ポストに当たった時は「入れ」と思ったけど、ボールの回転を見て入ると思った。もうG大阪戦に切り替えている。
【安部 裕葵】
(アシストの場面は)優磨くんが手前にいて、シュートの選択肢もあったけど、相手DFが張りついていたのでクロスを選択した。一番良い形でチームを楽にすることができたと思う。できることは最低限、できたかなと思う。
【土居 聖真】
得点以外でも何回かゴール前までには行くことができていたけど、チャレンジしたことが報われた。全得点に絡めて素直に嬉しい。勝って次に進めるのは良いこと。点を取りに行く姿勢は、どんな状況でも変わらない。同点に追いつかれても、慌てずに追加点を取れたのは、力があるということだと思う。
【曽ケ端 準】
(釜本氏の持つ天皇杯歴代最多出場記録に並んだが)恐れ多いです。2-0から追い付かれたし、チームに助けられたと思う。2失点をしたことは修正しなければいけない。3点目、4点目を取れたことは良かった。次につなげたい。
【植田 直通】
セットプレーが多かったけど、全部、自分が跳ね返すつもりでやっていた。2-0は危険と言われるけど、少し緩みが出てしまったのかもしれない。同点に追いつかれて、相手に勢いが出るところで3点目を取れたことが大きかった。
【昌子 源】
前後半ともに試合にの入り方は良かったけど、耐えるところで耐えられなかった。1点差にされてから、まるで同点にされたかのような焦りがあった。もっと落ち着いて試合を運びたかった。もっとコントロールできれば、自分たちのペースで進んだと思う。
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