日刊鹿島アントラーズニュース

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2021年5月21日金曜日

◆鈴木優磨25歳が明かす“未来予想”「高望みの移籍は100%しない」「俺みたいな選手が1人くらいいても……」(Number)






 鈴木優磨25歳。金色に染めた髪、その激しいプレーは、ときに「ふてぶてしい」といわれることもある熱血漢。プロデビュー戦の翌々年には鹿島のエースナンバー背番号9を担ったが、アンダーカテゴリーも含めて、日の丸を背負ったことは一度もない。2018年に招集されるも、負傷で辞退。結局、そのリハビリ中の2019年夏、ベルギーのシント・トロイデンへ移籍する。

 ベルギー1年目のシーズンは7得点、2シーズン目となった今季は17得点をマーク。来季は新天地への移籍も噂されるほど結果を残している。そして、日本代表の森保一監督も4月の会見で、「代表にも当然絡んでくるだけのプレーを今、見せてくれているかなと思っている」と高評価を受けたのも話題となった。

 鈴木は、来季以降の自身の未来予想図をどう描いているのか? 本人に話を聞いた(全2回の2回目/#1から続く)。

◆◆◆

――シント・トロイデンへの移籍が発表されたとき、もっと上のクラブへ行けるのではないか? という声もあったと思いますが……。

「俺の考えでは、試合に出られる場所へ行くことが一番大事。サッカー選手は試合に出てなんぼだと思っているので。もし1年間、試合に出られなければ選手の市場価値はすぐに下がるけど、逆に試合に出ながら、少しずつであってもステップを踏めば、ちょっとずつでも大きくなりますよね? 場数を踏んで経験を積めれば、市場価値も上がっていくはずだから」

――たとえば、プレミアへ行くにしても、ベルギーから行くのはハードルが高い。遠回りになるのではないかという危惧もあると思うんですよ。

「たとえば、最初にブンデスへ行けたとしてそこで試合に出られなかったら、どうするのか? っていうと、選択肢は1つしかない。日本へ帰るしかなくなるんですよ。実際、そうやって日本に戻った選手も少なくない。そう考えたときに、目標には遠回りに見えるかもしれないけど、シント・トロイデンから始めたほうがいい。

 実際、シント・トロイデンで活躍して、日本代表の中心選手になっているのが、(遠藤)航くんであり、冨安(健洋)、(鎌田)大地だと思います」





――ブンデスへ行って試合に出られなくて、一旦下がって、そこから這い上がる日本人選手は少ないかもしれませんね。

「それで成功した日本人は、大地以外にはいないと思う。大地がブンデスへ戻って、試合に出られたときは、『特例だな』って思いましたよ。だからこそ、5大リーグに比べればベルギーリーグのレベルは低いかもしれないけど、ステップを踏むのはやっぱり大事だなって」


「高望みの移籍は100%しない」


――移籍会見でも、土台を作るという話をしていましたね。

「俺のなかで、ヨーロッパで戦える準備をすることが大事だと考えていて、シント・トロイデンで2シーズンやって、その土台がひとつ作れたと思っています。もちろん、考え方は人それぞれだと思います。一発でレベルの高いビッグクラブへ行って、もまれて成長したい人もいるでしょう。でも俺は試合に出られるところを選んで、積み重ねで成長したいって思っているんです」

――目標であるプレミアリーグへ行くために必要な時間だったと。

「たとえば、今、ベルギーからプレミアリーグへ行く選手の移籍金は、5、6億円で、高くても10億円くらいだと思います。でも、ブンデスの強豪を挟んでから、プレミアリーグへ行けば、もっと移籍金は高くなる。移籍金は高ければ高いほうが、チームは選手を大事にするじゃないですか? そのためにも、ステップを踏むことは大事だと思っているんです。だから、俺は高望みの移籍は100%しないと思う。出られないかもしれないというようなクラブへ行くことは絶対にないですね」

――バイエルンからオファーが来ても?

「100%行かないですね。もちろん、バイエルンでやったというのが欲しい人もいるだろうし、そういう人を否定するつもりもないです。ただそれは、今、俺が考える生き方じゃないかな。上は常に見ているけれど、地に足をつけて、足元を見ながらステップアップしていきたい。高望みはしない」

――ずっと目標として掲げているプレミアリーグからオファーが来たとしても?

「今行って活躍できるかと言われたら、まだ難しいと思う。だから多分、行かないですね。その前に、ドイツやフランス、イタリアへ行けたとして、そこで2桁獲って行くならまだ理解できます。ベルギーで十何点獲れたからプレミアへ行くというのは、俺の設計図ではまったく考えていないです。それだけ、海外で長くプレーするためには移籍のタイミングやどこへ行くのかは絶対に大事だと思っています」





2桁獲って代表キャップがないのも「面白い」


――日本で想像していたよりも、欧州にいると移籍の実例をリアルに見ていると思うんですが、そういう意味で、サッカー選手としての可能性を改めて感じているのでは?

「俺より若い選手が移籍金30億とかで移籍しているのを見ると、やっぱり実感しますね。単純にJリーグでプレーしていたら、30億もつかないので。日本で点を獲るのと欧州とでは、全く違うなっていうのは、こっちへ来て感じたかな」

――考えてみると、代表に選ばれないまま海外へ移籍したわけですが、それも珍しいですよね。

「俺は、クラブで結果を残して上へ行くというパターンもありだよねっていう例を作りたいんですよ。そんな人はこれまでいなかったから新しいじゃないですか? 俺はあまのじゃくなんで、そういうのがなんかいいなって思っちゃうんですよね。たとえば、5大リーグで2桁(ゴールを)獲っている選手に代表の出場経歴がないとなれば、俺だったら面白いなって思うし、同じように思う人も何人かはいるだろうなと。

 日本人で、俺みたいな選手が1人くらいいてもいいんじゃないかな、とは思っていますよ」

――移籍時の鹿島での会見では、「ワールドカップよりもチャンピオンズリーグに出たい。優勝したいのは、チャンピオンズリーグ」という話をされていました。

「クラブで活躍して上へ行きたいんです。だからこそ、5大リーグで結果を残す人ってすごいなぁって改めて思いますね。岡崎(慎司)選手のブンデスでの15点もそうだし、(内田)篤人さんのチャンピオンズリーグベスト4もそう。やっぱり、こっちへ来たからこそ、リスペクトの想いは強くなりました」

――そういえば、Jリーグでファーストゴールを決めた試合でも、「好きなFWは岡崎慎司」と言っていましたね。

「俺にとっては神様みたいな存在です。そもそも岡崎さんのこと、嫌いなFWなんているんですかね?(笑)」

――なにがそんなに魅力的なんでしょう。

「なんだろうな……。ゴール前での泥臭さというか。もちろん、岡崎さんは器用だし、技術も持っている選手なんですけど、まだ中学生か高校生だった僕は岡崎さんを見て、『器用じゃなくてもちゃんとしたやり方をすれば、ゴールは獲れるんだ』というのを思い知ったんですよね」


「5大リーグで1トップをはるというのは、正直難しい」


――ただ岡崎選手もそうですが、欧州では日本人ストライカーは「器用でハードワークができるから」という理由で、2列目やサイドMFで起用されてしまうことが多いです。ストライカーとして生き抜くのが難しい。

「それは、俺もすごく難しい問題だと思っていて、こっちに来てからめちゃくちゃ考えてるんですけど……俺の考えを言っていいですか? 日本人FWが5大リーグで1トップをはるというのは、正直難しいと思うんです。俺もできないと思う。突然、(ロメル・)ルカクみたいな選手が出てきたら話は別ですけど。

 だから、これまでの成功例を振り返って、じゃあ日本人の強みはなんなのか? って考えた時に、岡崎さんのレスター時代や大迫(勇也)さんのケルン時代もそうですけど、良い相方と2トップを組んでいるときが日本人選手の良さも活かせるし、一番輝けると思うんですよ」




――レスターのジェイミー・ヴァーディみたいな怪物とパートナーを組むと。

「20点超えるような得点を決める相方の存在は、悔しさも大きいと思うけど、自分よりも点を獲るなら認めざるを得ない。だからこそ、レスター時代に自分を変えた岡崎さんってすごいと思うんですよ。ヴァーディのために汗をかいて、簡単に言えば、ヴァーディのために死ねるみたいな覚悟がある。チームの怪物のために守備もして、なおかつ1シーズンに5、6点獲る。それってチームメイトからしたら、めちゃくちゃありがたい選手だから」

――ということは、鈴木選手もそういう怪物が相方だったら、命を捧げるんですか?(笑)

「気持ちとしては1トップをはりたいって思っていますよ! でも、守備とかを頑張って、その人のこぼれ球を狙って、10点獲るというのが現実的かもしれない。日本人選手のそういう生き方がストライカーとして、ヨーロッパでは認められると思うし、かつこっちで長く生き抜く方法だと思いますね」


「ゴールした喜びがまったく違うんです」


――ヨーロッパで長くプレーしたいですか?

「正直、最初に来たときは、すぐにチャンピオンズリーグ出場という夢を叶えて、プレミアへ行って、日本へ早く帰りたいと思っていたんです(笑)。でも、今はできるだけこっちで長くやりたい」

――やっぱり楽しい?

「日本とは、ゴールの喜びがまったく違うんです。大きいとか小さいとか、上とか下とかじゃなくて。もう種類が違う。ベルギーでそれを感じているくらいだから、5大リーグで決めるゴールなんてもっと気持ちいいのかなって。そう考えるとできるだけ長くヨーロッパでプレーしたいなって思います」

――2シーズンしか経っていませんが、ベルギーリーグに爪痕は残せましたか?

「爪痕残したというか、一番下の土台を1個作れたという感じで、これからどんどん進んでいくだけです」

――その土台には、もう家は建ちますか?

「まだかな。一気には建たないとは思います。その代わり強い土台を作って行くので」





立つ場所ではなく、いかにそこで生きているか


 わずか2シーズンだ。

 10シーズン近く欧州でプレーしている選手たちを取材してきた経験からいえば、この言葉に尽きる。鈴木の良さを理解してくれるベテランFWの存在が、今季の活躍を後押ししてくれたのも事実だろう。恵まれた環境を導いたのは鈴木自身の苦悩が結実したことも否定はしない。しかし、理不尽な現実がいとも簡単に訪れる可能性も小さくはない。契約が足かせとなって、身動きが取れなくなるケースもあるし、怪我という不幸もあるかもしれない。

 そんなネガティブな想定を鈴木も描いてはいるだろう。

 だからこそ、実直に着実にステップアップをしたいと考えているのだ。

 欧州での選手生活の成功は、立つ場所ではなく、いかにそこで生きているかだ。納得はできずとも、それがたとえわずかであっても、希薄なものであっても、納得感を得るためにもがく日々。その過程にこそ、意味がある。

 日の丸を背負い、世界と戦う鈴木優磨も見てみたい。

 彼の未来はいつだって白紙だ。そのキャンバスにどんな絵を描くのか? それは誰にもわからない。



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