鹿島の背番号10がもがいている。プロ2年目の昨季は10得点を挙げる活躍で城彰二以来、27年ぶりとなる10代2桁得点の偉業を達成し、ベストヤングプレーヤー賞を受賞した荒木遼太郎(20)は、リーグ戦を9試合終えて1得点。コロナ禍で入国が遅れていたヴァイラー監督就任後、4月はリーグ戦でベンチスタートが続くなど若き才能が試練の時を迎えている。
「今のチームのサッカーと、ここまで自分がやってきたサッカーで違いもある。まだ対応しきれない自分がいる」。3―0で快勝した4月23日のルヴァン杯大分戦。公式戦では2試合ぶりに先発出場した荒木は前半修了間際に獲得したPKを外すと、その後も決定的な仕事をすることはできず後半12分に途中交代を告げられた。
今季からヴァイラー体制となった鹿島は縦に速いサッカーを志向している。キーワードは「スプリント」そして「守備の強度」。選手は猛然とボールに食らいついて即時奪回する守備力のほか、MFはショートカウンターでFWを追い越す動きなどこれまで以上に運動量が求められている。
高い技術力を持つ荒木はイマジネーションあふれるパスで相手を翻弄(ほんろう)したり、天才的な感覚で相手の危険なゾーンに侵入するポジショニングが魅力だ。ただ、前述のプレースタイルとは対照的ともいえるタイプで、ヴァイラー体制では最初の壁に直面しているともいえる。
いわゆる“ファンタジスタ”的なプレーをしているだけでは、ヴァイラー監督の要求する基準には到達しない。今季の鹿島はリーグ戦9節まで、チーム平均で1試合209回のスプリントを数え、それは昨季の平均190回を上回る。試合別でも第5節湘南戦(荒木は後半17分に交代)ではリーグ2位の241回を記録するなど、数字の上でも走力を重視していることが分かる。
ただ、試合に出られないことで腐る10番は鹿島にはいない。スプリント、守備の強度という荒木の課題ともいえる能力について、本人は一段上のステージに進むために克服したいと考えているようだ。「自分でも足りないと思っていた部分。ポジティブに考えると良い機会だなって自分も思っている」
事実、運動量に関しては荒木も開幕前から意識は少しずつ変えていた。開幕前、荒木にインタビューする機会があった。まだ指揮官は合流前だったが、荒木はヴァイラー監督が目指すイメージを「アグレッシブなサッカー」と表現。「守備の部分も求められる。去年からの課題なので、そこは強化していきたい」と語っていただけに、少なからずこういう試練が訪れることを想定していたのではないか。
練習ではスプリントの回数を増やすなど改善に取り組んでいる。「走る質を変えることを言われている。やらないと試合に出られないですし、意識的にやっています。(スプリントは)圧倒的に少ないので、そういうところを監督から求められている」と地道に課題克服を目指している。
荒木は言う。「出られないときこそ、強くなれるとはよく聞く。今の時間を大事にしてやっていきたいなという風に思っている」。シーズン前には今季から背負う背番号について「10番に恥じないプレーをしたい」と決意を語っていた荒木。簡単に乗り越えられる壁ではないが、現状打破した先に、新たな背番号10のプレーが見られるはずだ。(記者コラム・河西 崇)
◆鹿島の背番号10・荒木遼太郎に試練の時 出場減のヴァイラー体制で自己改革期す(スポニチ)
「試合に出られない事で腐る10番は鹿島にはいない。スプリント、守備の強度という荒木の課題ともいえる能力について、本人は一段上のステージに進む為に克服したいと考えている」
— 日刊鹿島アントラーズニュース (@12pointers) April 25, 2022
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