■10月5日/天皇杯準決勝 鹿島アントラーズ 0ー1 ヴァンフォーレ甲府(カシマ)
時に激しい風雨に見舞われたカシマスタジアムでの試合後、さらに激しい嵐が巻き起こった。鹿島の選手に対し、サポーターが激しいブーイング。さらに、岩政大樹監督とサポーターが口論する事態に発展した。
天皇杯決勝をかけた一発勝負。J1鹿島はホームにJ2甲府を迎えるという有利な条件の中で、まさかの完封負けを喫してしまった。前半37分に失点。相手に完璧なまでに背後を突かれて得点を許すと、逆転を欲しながらもビハインドを覆すことができなかった。
試合終盤にゴールネットを揺らした場面があったが、判定はオフサイド。サポーターが応援歌で求めた“奇跡”は起きなかった。試合終了を告げるホイッスルが鳴り響くのを、岩政監督はじっと聞いていた。選手が一様に顔をしかめ、FW鈴木優磨はピッチにしゃがみ込むしかなかった。
その後、選手が場内を一周したときのこと。ホーム側の「サポーターズシート」の前で、衝突は起きた。その発端はサポーターのブーイングと野次だった。そこに、一部選手が反応。また、一緒にサポーターの前に姿を現した岩政監督とも口論になった。
一部サポーターが手すりを乗り越えてピッチに迫ろうとするのを警備員が抑えながら、選手からはFW土居聖真が対応。サポーターの声に耳を傾けた。
■「ファンじゃなくてサポーターだろ?」
冷たい雨が降りしきる中で、選手は「サポーターズシート」の前で一列になって話を聞いていた中で、岩政監督は「先に選手を帰させてくれ」「選手はまだやらなければいけないことがある」と説得し、選手がスタジアム内に。土居も、一部サポーターとグータッチをしてその場を去った。その後、サポーターと岩政監督が対峙することとなった。
サポーターからは、天皇杯準決勝で負けたこと、そして、監督交代後に成績が芳しくないことが主に投げかけられた。それに対し岩政監督は「簡単に変わるもんじゃないよ。俺たちが失ったものはたくさんあるよ。取り返すのに時間がかかるよ。みんなでやらないのか⁉」と大声で共闘を呼び掛けた。
それでもブーイングは鳴りやまず、「勝ったときだけみんななのか⁉ 負けたら俺らだけかよ!?」と反論。また、「ファンじゃなくてサポーターだろ? サポートするのがサポーターだろ?」「覚悟がなかったらサポーターやめろよ」「負けたのはみんな一緒だろ」と、サポーター、選手、スタッフのチーム全体が一体となっての前進を説いた。時に、スタッフに制止されるほどの熱量で、気持ちをぶつけた。
鹿島は天皇杯で敗退したことで、今季の無冠が決定。そのため、6年連続で国内タイトルを逃したことになる。2000年に国内3冠を果たすなど、常勝軍団の名を欲しいままにしたクラブは、苦しい時間を過ごしている。
■川崎やマリノスが何年かかったと思ってる⁉」
今季のリーグ優勝に最も近いのは横浜F・マリノスで、次節にも決まる可能性がある。それを追うのは現在、2連覇中の川崎フロンターレだ。この2チームで2017年以降のリーグタイトルを独占している。
特に川崎は直近5年間で4度もリーグ制覇を成し遂げているが、それ以前はタイトルに近づきながらも手が届かず、“シルバーコレクター”とも呼ばれた。岩政監督は、「川崎やマリノスが何年かかったと思ってる⁉」と2チームの名前を挙げながら、長期的なチームの改革の必要性を訴えた。
荒れに荒れた試合となったが、もう時計の針は戻らない。チーム全体としてこの敗退を糧に、常勝軍団復活への道を一歩ずつ歩むしかない。鹿島アントラーズであれば、きっとできるはずだ。
◆試合後に岩政大樹監督と鹿島アントラーズサポーターが雨の中で激しく口論! 「川崎やマリノスは何年かかったと思ってる⁉」「ファンじゃなくてサポーターだろ?」と大声で呼びかける(サッカー批評)