◆◆サッカーダイジェスト / 2019年8月8日号
2019年07月31日(水) 19:33キックオフ 埼玉スタジアム2002
【入場者数】37,265人 【天候】晴、無風、 気温31.2度、 湿度64.0% 【ピッチ】全面良芝、水含み
【主審】西村 雄一 【副審】野村 修 【副審】森川 浩次 【第4の審判員】中村 太
明治安田J1 第16節
伊藤が先制点を決めるも、1-1のドロー決着。アウェイで勝ち点1を獲得
ACLによる日程調整で延期されていた明治安田J1第16節が行われ、アントラーズは浦和レッズと対戦した。試合の均衡が破れたのは77分、土居のクロスに伊藤がヘディングで合わせて先制点を奪った。しかし、88分に一瞬の隙を突かれて失点を喫し、同点に追いつかれてしまう。最後まで浦和のゴールを狙い続けたアントラーズだが、勝ち越し点は奪えず、このまま1-1のドローで試合を終えた。
10日前の鳥栖戦。立ち上がりから激しいボディコンタクトの応酬となった試合は20分にレアンドロがペナルティキックを決めて、アントラーズが先制に成功する。23分に金崎のゴールで同点に追いつかれたものの、35分に白崎が勝ち越し弾を決めて再びリードを奪い、これが決勝点。アントラーズが2-1と勝利を収めた。
球際の激しい試合展開となったが、選手たちは最後まで集中力を切らさずに戦った。指揮官も試合後の会見で、「今日、ピッチに立った14人の選手たちは、本当にインテンシブの高いゲームをしてくれた。その気持ち、その姿勢が、伝わるようなゲームができて非常にうれしく思う。サポーターの皆さんと、しっかりと喜びをわかちあえる試合ができたと評価している」と、選手たちを称えていた。
会心の勝利を収めたチームは2日間のオフを挟んで、火曜日から練習を再開。指揮官は、「何かを新たにやるというよりも、コンディションの調整。あとは浦和のシステムに対して、自分たちのやるべきことを明確にすること。アウェイでの戦いなので、しっかりと良い準備をしていきたい」と、コンディション調整と浦和対策を入念に確認するトレーニングを行い、準備を進めた。
そして、迎えた試合当日。キックオフの約2時間前に先発メンバーが発表された。GKは2試合ぶりの先発復帰となるクォンスンテ。最終ラインは右から永木、犬飼、町田、小池が入った。ボランチは三竿と名古がコンビを組み、サイドハーフは右にレアンドロ、左に白崎。前線はスンテ同様、2試合ぶりの先発となる土居、そしてセルジーニョが務めた。ベンチには、曽ケ端、ブエノ、遠藤、小泉、伊藤、山口、上田が入る。新加入の小泉と上田は、アントラーズ加入後初のベンチ入りとなった。
対戦相手の浦和は直近の磐田戦から先発メンバーを1名変更。磐田戦で退場処分を受けていた柴戸海に代わり、怪我で欠場するとみられていたエヴェルトンが入った。
水曜日のナイトゲーム。座っているだけで身体中から汗を噴き出るような蒸し暑い気候となったが、埼玉スタジアムには続々と背番号12が詰めかけた。ビジタースタンドがアントラーズレッドに染められていく。アントラーズファミリーとともに戦う90分。
19時33分。戦いの火蓋が切って落とされた。
キックオフ直後の前半1分、いきなりアントラーズに決定機が訪れる。左サイドからのコーナーキックを獲得すると、キッカーの小池が鋭いボールを入れる。これにセルジーニョがヘディングで合わせたが、これは惜しくもクロスバーに弾かれ、ゴールには至らなかった。
試合早々に決定機をつくったアントラーズだったが、ここから浦和にボールを握られる展開となる。それでも、アントラーズは4-4-2のブロックを形成し、落ち着いてパス回しに対応。特に武藤、長澤に対しては、最終ラインとボランチがコミュニケーションを密に行い、自由を与えなかった。
浦和に押し込まれていたアントラーズだったが、18分にチャンスを迎える。中盤で相手のプレスを剥がすと、三竿からのパスを受けたセルジーニョがドリブル開始。ペナルティエリア手前まで進入し、シュートを放った。しかし、これは惜しくも枠を外れ、先制点とはならなかった。
ここからアントラーズが立て続けにチャンスをつくっていく。20分には、永木からのクロスにセルジーニョがヘディングシュート、21分にはコーナーキックから町田がヘディングシュートを放ち、浦和のゴールを脅かすも、枠は捉えられなかった。
完全に日が暮れても、肌にまとわりつくような蒸し暑さに包まれた埼玉スタジアムだが、ピッチ上では一つのミスで大きく戦局が変わる緊迫した戦いが繰り広げられた。
32分、まずはアントラーズが相手のミスから決定機をつくる。中盤でボールを拾うと、土居、白崎とパスを繋ぎ、ペナルティエリア右からレアンドロがゴール前へクロス。これにセルジーニョが飛び込んだが、惜しくも相手DFに阻まれた。
39分、今度はアントラーズがピンチを迎える。縦パスを受けた武藤から興梠にスルーパスが通ると、GKとの1対1の局面をつくられ、決定的なシュートを打たれてしまう。だが、守護神クォン スンテが見事に間合いを詰め、左手一本でセーブ。こぼれ球は白崎が素早くクリアし、得点を許さなかった。
前半はこのままスコアレスで終了。指揮官はロッカールームで「味方同士の距離感に気を付けること」、「自分たちがボールを支配する時間を長くしよう」、「もっともっとボールを動かし、シュートを増やしていこう」と伝え、選手たちを再びピッチへと送り出した。
後半立ち上がり、アントラーズは立て続けにシュートを打たれる苦しい時間帯となったが、チーム一丸となってゴール前で身体を張り、攻撃を跳ね返す。
64分、指揮官が動いた。レアンドロに代えて伊藤翔を投入する。
すると65分、交代で入った伊藤にいきなりチャンスが訪れた。右サイドに流れた白崎がクロスを入れると、ファーサイドでフリーになった伊藤がヘディングで合わせる。しかし、これは相手GKの正面に飛び、ゴールネットを揺らすことはできなかった。
決定機を逸したアントラーズは、68分に決定機をつくられてしまう。左サイドを関根に突破され、鋭いクロスを入れられると、ニアサイドで武藤が潰れ、ゴール前で長澤にシュートを放たれる。これは枠に飛ばず、失点には至らなかったが、肝を冷やす場面をつくられてしまった。
残りの試合時間は20分。ビジタースタンドをアントラーズレッドに染めた背番号12から大きなチームコールが送られる。選手たちは力強いスタンドからの声援に呼応するように、攻勢を強めていった。
77分、ついに歓喜の瞬間が訪れた。ハーフスペースで土居がボールを受けると、一度セルジーニョに預けて、ニアゾーンでリターンを受ける。ボールを受けた土居は、相手DFのタイミングを外してクロスを上げると、ファーサイドでフリーになった伊藤がヘディングシュート。これがゴールラインを割った。1-0。アントラーズが先制に成功した。
均衡が破れると、試合は好守が目まぐるしく入れ替わるオープンな展開に突入していった。
85分、アントラーズは2人目の選手交代を行う。セルジーニョに代えて遠藤を投入した。
勝ち点3まで残り時間あと僅か。しかし、一瞬の隙を突かれてしまった。88分、右サイドから山中にクロスを上げられると、ファーサイドで興梠に合わせられ、ゴールネットを揺らされてしまった。1-1。痛恨の失点で同点に追いつかれた。
試合を振り出しに戻されたアントラーズは、失点直後の89分に上田を投入。上田はアントラーズデビュー戦となった。
後半アディショナルタイムは5分。猛暑の影響を感じさせず、選手たちは最後まで球際で身体を張り、貪欲に浦和のゴールを狙い続けた。
しかし、最後までゴールを奪うことは出来なかった。試合終了を告げるホイッスルが鳴り響く。大型掲示板に1-1のスコアが表示されると、一瞬の静寂を経て、猛暑のなかで激闘を繰り広げた選手たちへ、ビジタースタンドに詰めかけたサポーターから拍手が送られた。
次なる戦いは、中2日でアウェイ湘南戦。準備期間は限られているが、可能な限りのリカバリーを行い、総力戦で勝利のみを目指す。今日味わった悔しさを必ず晴らすべく、最善の準備を進めていく。
【この試合のトピックス】
・伊藤翔が明治安田J1第4節札幌戦以来となるリーグ戦16試合ぶりのゴール
・上田綺世がプロデビュー
・小泉慶が移籍後初のベンチ入り
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・味方同士の距離感に気をつけること。
・自分たちがボールを支配する時間を長くしよう。
・もっともっとボールを動かし、シュートを増やしていこう。
浦和レッズ:大槻 毅
・自分たちの強み、武器をもっと活用するためにボールを速く動かそう。
・押し込んで足を振ろう!!
・トライしろ、チャレンジしろ、振れ、もっと打て、打つんだ!!
・みんなで1つになって、もう一度やるぞ!!
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
選手たちがこの暑さの中で、プラン通りのゲームをしてくれた。非常にいいゲームだったと思う。ただ、勝ち切るところは、今後、もう1度自分たちでしっかりと突き詰めていこうと話した。次のゲームまで中2日なので、しっかりとリカバリーをしていく。
Q.先制してからのゲーム運びは、どのように評価しているか?
A.ハーフタイムに自分たちがボールを支配して主導権を握っていくということと、簡単にボールを失ってしまうところの修正をしていこうという話をした。先制してからは、もっと効果的に攻撃をすることができたと思うし、自分たちのポジショニングやボールを奪われてからの守備のところを、次の試合に向けて改善していかなければいけないと思う。
Q.残り時間の少ない中で、上田選手をデビューさせたが、どのような指示をしたか?
A.リードしている状態での起用で進めていたが、直前に失点をしてしまったので、少しプランは崩れた。ただ、彼のボックス内での得点力や相手との駆け引きの部分に期待して送り出した。
浦和レッズ:大槻 毅
なんとかいい展開で、いい結果を掴みたいと思っていたが、なかなか難しいゲームだった。暑さもあり、鹿島も自分たちも我慢する展開だったし、お互いに決定機もあった。1-1が妥当なゲームだったと思う。
選手コメント
[試合後]
【伊藤 翔】
(ゴールシーンは)マイナスもGKとDFの間もコースを切られていて、ここしかないというところに、ボールが出てきた。聖真のセンスのおかげ。今年は最後に失点する試合が何度もある。点を取るまでは良かったけど、勝ちと引き分けでは全然違う。今日はそれがすべてだった。
【犬飼 智也】
相手にボールを持たれる形になっても、自分たちは慌てることなくできた。何度か危ないシーンは作られたが、どっしり構える時間もあって、みんなで話し合って、割り切ってできた。ただ、もっとボールを持つ時間がないときついかなと思う。
【町田 浩樹】
勝たなければいけない試合だったし、自分のマークのところで最後やられてしまったことが悔しい。マークは自分がつかなければいけなかったが、相手の逃げる動きについていくことができなかった。本当に申し訳なく思う。
【名古 新太郎】
今日は暑かったが、両チームどちらも同じ条件でやっている。勝てずに悔しい。健斗とバランスを取りながら試合を通してやれていた。ものすごく崩されたわけでもないが、チームのマネージメントとして、(先制後も)2点、3点と、追加点を決めないといけない。個人的にはもっとゴールに絡んでいかないといけない。
【三竿 健斗】
すごく暑い中での試合だったので、両チームともに間延びをしてしまっている展開だった。相手にもビッグチャンスが何度もあったし、自分たちにもチャンスはあった。そのなかで、先制ができた。ただ、ゲームの終わらせ方というところで、同点にされてしまった。このような形は今シーズン何回かあったので、すごくもったいない試合だった。
◆2019明治安田生命J1リーグ 第16節(オフィシャル)