日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年4月21日土曜日

◆リーガで奮闘する乾貴士、柴崎岳の強みとは? 宮澤ミシェル氏が“DF目線”で解説!(サッカーキング)




 4月21日に行われるリーガ・エスパニョーラ第34節で、乾貴士が所属するエイバルと柴崎岳が所属するヘタフェが対戦する。リーガ史上初の日本人対決実現に向けてスペインで奮闘中の乾と柴崎は、対戦相手のDFにとって脅威を与える存在となっているのか。現役時代にセンターバックとしてプレーし、現在はWOWOWのリーガ解説として活躍する宮澤ミシェルさんが“DF目線”で両選手の強みを考察した。

インタビュー・文=国井洋之 取材協力=WOWOW

■DFにとって厄介な選手とは?

——日本人選手2人についてお話を聞く前に、まずは守る側の選手、DFの思考についてうかがいます。DFは普段どんなことを考え、どんなメンタリティでプレーしているものなのですか?

 DFには個人でやれることと、チームが機能して初めてやれることがあります。自分たちの前の選手、つまり前線や中盤の選手たちがどう機能するかによって、最終ラインの守り方も変わってくるんです。前のプレスが効いていれば、後ろはやるべき仕事が整理されるので勝負しやすくなる。ところが前が機能していないと、後ろの仕事が増えて後手を踏むわけです。そういう意味では守りはチームありきですね。「後ろが弱い」と言われるチームの大半は、チーム全体の守備が機能していないということが多いと思います。

——ご自身が現役の頃、相手にどんなプレーをされるのが嫌でしたか?

 すり抜けるのがうまいタイプ、ポストプレーヤータイプ、ドリブラータイプ……いろいろなタイプの選手がいますけど、相手の特徴は試合前にある程度分かっているわけですから、それに対していかに自分をアジャストさせていくかが重要になります。「前を向かせないように」とか「左足を使わせないように」とか、「右サイドに逃がしておいたほうがいい」とか……。相手の長所を知って、いかに潰していくかの作業ですね。

——事前に相手の情報を得て、選手ごとに守り方を決めていくと?

 そうです。ただ、もちろん自分だけでなく、「中盤はこう守ってくれ」というような周りとの擦り合わせも必要です。先ほど言ったように、DFは周囲の助けがない状態では対応のしようがないですからね。例えば、横浜マリノス(現横浜F・マリノス)と対戦する時は、ボランチの選手に「(ラモン)ディアスの最初のパスコースだけは切ってくれ」と指示していました。最初のパスコースを切られると相手は動き直しますから、DFとしては時間的な余裕が生まれるんです。

 ただ、一流選手を相手にしていると、こちらが準備していたものを上回ってくることがある。当時よく対戦していたスキラッチ(元ジュビロ磐田)はそういう選手でしたね。彼を右サイドでプレーさせると面倒なことになるので、僕は常に自分から見て左側をケアしていた。すると、彼は左側に引っ張るだけ引っ張って、こちらが出ていったタイミングでスッと右側に入ってくるんです。スキラッチはスピードがあるので、一度すり抜けられるともう追いつけない。そういうプレーをされた時にDFは「コイツは危険だ」と感じるわけです。

——現在のリーガで「この選手とはやりたくない」という選手はいますか?

 (リオネル)メッシや(クリスティアーノ)ロナウドはもう別次元ですけど、例えばバレンシアのロドリゴなんかは嫌な選手ですね。彼の斜めに入ってくる動き、この「斜めの動き」がDFにとっては一番厄介なんです。自分でついていくのか、味方に受け渡すのかの判断がとても難しいですし、ついていった結果、自分が空けたスペースを使われたりすることもある。そこにタイミング良く縦パスを入れられたらDFは終わりです。僕自身、現役時代に一番嫌だったのはスッと斜めに入ってきて一瞬のスピードで裏に抜けるタイプでした。

■乾は繊細なボールタッチ、柴崎は独特のサッカー観が武器

——DF目線のお話を踏まえた上で、乾選手についてうかがいます。DFにとって「乾貴士の一番厄介なところ」はどこだと思いますか?

 まずボールコントロールの部分、技術がしっかりしているのが大きいですね。相手に「下手だな」と思われるのと、「上手だな」と思わせるのとでは、DFの対応も全く変わってきますから。さらに言うと、乾選手は数多くボールに触れるタイプですよね。彼のようにボールタッチが細かいタイプは、DFから見るとタックルの仕掛けどころがなくて非常に守りにくいんです。ボールを常に自分のコントロール下に置いているから、間合いを詰めてもクッと角度を変えて逃げられてしまう。DFとしては迂闊に飛び込めない状況です。

 ヨーロッパの選手たちは間合いが広いので、「ここなら届かないだろう」というところにも足が伸びてくる。でも、ドイツとスペインで揉まれてきた乾選手は、どこにボールを置いておけば相手に届かないかを感覚的に知っているんです。だから、相手の重心を見てフェイント一つでグンと入っていける。タイミングを外すだけでいいんです。代表戦で日本に帰ってきた時も、そういうプレーで相手を振り切っていました。

 ただ、最近は難しくなっている部分もあります。恐らく対戦相手のミーティングでは「あのアジア人には気をつけろ」という指示が出ていて、しっかりと対策されているんだと思います。そういう中でDFにとってより怖い選手になるためには、ボールを中に運ぶプレーを増やしていくことが大事だと思います。リーガに来たばかりの頃はそれができていたんですが、相手に読まれ始めたのもあって、最近は外一辺倒になっている気がします。その点は少し物足りないですね。

 乾選手はいいクロスを入れているし、外のゾーンで勝負した時はチームでも絶対的な存在だと思います。でも、一皮剥けるためには、もっと中に切れ込んでいくプレーでアピールしてほしい。中に切れ込んでいくプレーはDFにとって絶対に嫌なんです。ミスを恐れず、もっとエゴイスティックにやっていいと思います。

——では、柴崎選手はどうでしょう? 「柴崎岳の一番厄介なところ」はどんなところですか?

 普通の選手には見えていないパスコース、そういうものが見えている選手はDFにとって怖い。「ここに出るだろう、ここで出すだろう」という予測とは違うコースやタイミングでパスが出てくる。これはDFにとって一番厄介なんです。

 彼のあのサッカー観は、誰もが持っているものではないし、教わって身につくものでもない。柴崎選手にはそういう特別な感覚が備わっていると思うんです。だから見ていて面白い。サッカーでは「3人目の動き」が重要だと言いますけど、柴崎選手の場合は2人目をすっ飛ばして、いきなり3人目の選手にパスを出してみたりする。そうやって自分のプレーで周囲を動かす力があるんです。

 今は出場機会が限られていますけど、とにかくボールを呼び込んで、さばいて、自分でゲームを作ってしまうぐらいの感覚でやってほしいですね。守備一辺倒のチームではそれは難しいかもしれないけど、ヘタフェは決して悪いチームじゃない。あのチームならできると思います。どこでボールをもらって、どうやってペナルティーエリアに近づくのか。パスなのか、ドリブルなのか。自分でやるのか、味方をうまく使うのか。とにかく自分は中心選手なんだというプライドを持って、自分の持ち味を発揮できるやり方を見つけてほしいです。

——4月21日にはリーガ初の日本人対決が実現するかもしれません。どんなところを楽しみにしていますか?

 ようやくリーガにもこういう時代が来たなと思いますし、見る側としては最高ですね。どちらか一方が活躍するのではなく、2人とも存在感を示してほしい。2人はタイプこそ違いますが、ゴールに絡む仕事という点では役割は一緒ですし、どんなアピールをしてくれるのか楽しみです。彼らが出るか、出ないかで見る側のテンション、僕のテンションも大きく変わってくるので、ぜひ2人の対決を見たいですね。


リーガで奮闘する乾貴士、柴崎岳の強みとは? 宮澤ミシェル氏が“DF目線”で解説!

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