浦和レッズは19日、オズワルド・オリヴェイラ氏の新監督就任を発表した。浦和は今月2日に堀孝史前監督との契約を解除してから、大槻毅監督が暫定的にチームの指揮を執っていた。かつて鹿島アントラーズを率いて数々のタイトルを獲得した名将はどのような人物なのだろうか。
優れたモチベーター
2002年にヤマザキナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)を制してから数年、鹿島アントラーズはタイトルから見放されていた。第一次トニーニョ・セレーゾ政権が2005年に終わり、翌年から引き継いだパウロ・アウトゥオリ体制も1年で幕を閉じた。
そして、オズワルド・オリヴェイラがやって来た。開幕5戦勝ちなしと出遅れたが、終盤にかけて猛烈な追い上げを見せる。残り5試合の時点で首位・浦和レッズとの勝ち点差は「10」あった。だが、鹿島は怒とうの9連勝を達成。浦和は最終節で横浜FCに敗れ、最後の最後で順位が逆転し、鹿島が奇跡を起こしたのだった。
初年度のリーグ制覇はあまりに劇的だったが、ここから鹿島は常勝軍団の力を誇示することになる。2008年、2009年もリーグ優勝を果たすのだ。連敗を喫することもあるなど、数字上は圧倒的に強かったわけではない。しかし、勝負所の強さは尋常ではない。大一番で輝き、最後に笑うのは鹿島だった。
1993年に開幕したJリーグにおいて、J1で3連覇を成し遂げたのはオリヴェイラ監督時代の鹿島だけである。
またオリヴェイラ監督が鹿島を率いた5年間で、チームは毎年、国内タイトルを一つは獲得している。選手のクオリティも高く、伝統的に勝負強さが際立つチームではある。主力が年齢的な成熟期に入ったことも大きかったかもしれない。とはいえ、個性的な面々を強固な集団として束ねたのはこのブラジル人指揮官だろう。
選手の家族にビデオレターを依頼し、試合前に流すことでイレブンの気持ちを一気に上げるなど、オリヴェイラ監督は優れたモチベーターでもあったという。そうした点も踏まえ、彼の手腕は「オズの魔法使い」と形容された。
ブラジル代表も育てた
当時の鹿島はクラブの十八番であるサイド攻撃や鋭いショートカウンターを軸に強さを発揮。ボールを持たせれば流麗なコンビネーションを見せ、守備も簡単には崩れない。結果論ではあるが、前人未到の3連覇達成も納得といったところである。
母国ブラジルでは、コリンチャンス、サン・パウロ、フラメンゴ、サントスなど名門クラブの監督を歴任。そのキャリアの中で、カカーやロビーニョといったスターも指導してきた。また2000年にはコリンチャンスを率いてFIFAクラブ世界選手権で優勝している。
ただ、鹿島からブラジルに帰国してからは思うような結果を残せていない。2013年にリオ・デ・ジャネイロ州選手権のタイトルを獲得したものの、就任と解任を繰り返す形でクラブを渡り歩いている。今年2月に解任されたアトレチコ・ミネイロでは、メディアとの関係悪化がブラジルメディアで報じられていたようだ。それでも、率いたクラブは名門ばかり。国内でも評価されている証ではないだろうか。
浦和でも結果が出なければ懐疑的な目を向けられるだろうが、今は期待感のほうが大きいのではないか。
浦和の中村修三GMはクラブの公式HPでコメントを発表している。
「監督選定の基準は3点ありました。1点目は、タイトル獲得経験があること、2点目は、日本をよく知っていること、そして3点目は、これまで目指してきた強くて魅力あるチーム作りを行える人材であることです。さらにオリヴェイラ監督は情熱と厳しい規律を持って指導してくださる方ですから、大槻監督が立て直してくれたチームを、今後、さらに改善してくださる人物だと考えています」
またオリヴェイラ監督は、「力強い応援に後押しされるこの素晴らしいチームの指揮をとる機会をいただき光栄に思います。高いモチベーションをもって結果をもとめ、みなさんと共に戦いたいと思います」とコメントを発表。日本で新たなキャリアを築くことを楽しみにしているようだ。
鹿島時代に国内タイトルを全て獲得した名将は、新天地でどのような采配を見せるだろうか。初陣は25日、明治安田生命J1リーグ第10節・柏レイソル戦となる。
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J屈指の名将、日本再上陸。浦和新監督、オリヴェイラ。ブラジルで“渡り鳥”も…その監督像とは?