今回の試合運びは100点ではないですけど、『これをやったら勝率上がる』っていうところまでは見せられた。あれ(仲間隼斗のゴールがVARで取り消された場面)はオフサイドなのかっていうところも微妙ですけど、あそこで点が入ってれば確実に勝っていた試合内容だったと思います
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◆【浦和戦3年連続引き分け、96年組の三竿&鈴木優磨が見る鹿島の現在地(1)】「僕が決めてりゃ勝てた試合」。2つの決定機を逃したエース・鈴木優磨が悔やむ決定力不足(サッカー批評)
◆【浦和戦3年連続引き分け、96年組の三竿&鈴木優磨が見る鹿島の現在地(2)】「今日のような試合をしていたら勝率は上がる」。三竿健斗ら加入メンバーが鹿島にもたらすものとは(サッカー批評)
「僕が決めてりゃ勝てた試合」。2つの決定機を逃したエース・鈴木優磨が悔やむ決定力不足
J1中断明け初戦の8月7日のサガン鳥栖戦を3-0で快勝し、首位・町田ゼルビアに勝ち点差3と肉薄していた鹿島アントラーズ。続く11日のジュビロ磐田戦でまさかの逆転負けを喫したものの、町田もお付き合いしてくれて3ポイント差を辛うじて維持した状態で17日のホーム・浦和レッズ戦を迎えた。
浦和にリーグ戦で最後に勝ったのは、2021年11月7日のホームゲーム。2022・2023年は全てドロー、今季も敵地・埼玉スタジアムで戦った6月22日のアウェー戦も前半のうちに2点をリードしていながら、終盤に追いつかれるという勝負弱さを露呈した。
浦和にリーグ戦で最後に勝ったのは、2021年11月7日のホームゲーム。2022・2023年は全てドロー、今季も敵地・埼玉スタジアムで戦った6月22日のアウェー戦も前半のうちに2点をリードしていながら、終盤に追いつかれるという勝負弱さを露呈した。
だからこそ、今回こそは是が非でも白星がほしかった。「次の日に後悔するようになってはいけないし、『これが自分たちの最後のゲームなんだ』だと捉えて戦っていけるかどうかがすごく大事」とランコ・ポポヴィッチ監督も強い覚悟を口にしたが、選手たちはこれまで以上に闘争心をむき出しにする必要があった。
ただ、浦和も鹿島の戦い方を徹底分析。前半はエース鈴木優磨が消され、今季重要な得点源になっている濃野公人のところも関根貴大と大畑歩夢が2人がかりでマークにつくなど、手堅い守りを見せつけた。そのうえで鋭いカウンターを披露。関川郁万のミスパスを大久保智明が広い、渡邊凌磨にスルーパスが通った後半ロスタイムの決定機はチーム全体がヒヤリとさせられたことだろう。
■鈴木優磨の1対1
それでも何とか0-0で乗り切った後半。鹿島はギアを上げ、迫力を持ってゴールに向かい始める。そこで牙を剥いたのが鈴木優磨だ。15分にはサミュエル・グスタフソンからボールを奪った名古新太郎のスルーパスに反応。長い距離を持ち運び、相手守護神・牲川歩見と1対1になったが、シュートは正面。
「足がその時、追いつかないから」と本人は試合後、苦笑したが、これは決めておきたい千載一遇のチャンスだった。
直後には名古のシュートが枠をかすめ、30分にも仲間隼斗のシュートもクロスバーを直撃。さらに36分には鈴木優磨のパスを受けた柴崎岳が絶妙のスルーパスを仲間に出し、ついにネットを揺らしたかと思われた。これはVARの末にオフサイドと判定されたが、ポポヴィッチ監督は激怒。当の仲間も「映像を見た感じだと(オフサイドは)なさそうだった」と悔しそうにしていたが、一度下されたジャッジは覆らない。前を向くしかなかった。
そして最後の決定機だったのが、後半ロスタイムに濃野からパスを受けた鈴木優磨が強引に持ち込んだシーン。これもまた牲川にキャッチされ、万事休すとなった。
「今日は僕が決めてりゃ勝てた試合なんで、非常に悔しい。後ろはしっかり耐えてくれてたんで、2回チャンスあったんでしっかり決め切らないとこういう試合になるなと。個人的にはすごく反省してますね。
浦和とはお互い意地と意地をかけた戦いになる。これだけファンが集まってくれて、僕自身もチャンスがあって、『また来たいな』って思ってもらえるようなゲームにするためには、やっぱり勝たなきゃいけなかった。次の試合がその次の試合か、その次の試合か分かんないですけど、点を取って、またチームを勝たせられればいいなと思います」
鈴木優磨は改めて自分が鹿島を勝たせられなかった責任の重さをにじませた。
■鈴木優磨に託されるもの
目下、チャヴリッチが長期離脱中。FWには成長株の徳田誉と新戦力の田川亨介がいるものの、まだ少しフィットするのに時間がかかりそうだ。となれば、エースである彼が得点を重ねなければ、鹿島がトップに立つことはできない。
実際、彼らが0-0という悔しい結果を強いられている間に町田は磐田を4-0で一蹴。リーグ5連勝のサンフレッチェ広島もいつの間にか2位に浮上し、鹿島は町田と5差の3位に後退した。ここで踏み止まり、勝負弱さを払拭していかなければ、逆転タイトルも難しくなる。
最悪のシナリオを阻止するためにも、鈴木優磨に託されるものは大きい。それを改めて強調しておくべきだろう。
(取材・文/元川悦子)
(後編へつづく)
「今日のような試合をしていたら勝率は上がる」。三竿健斗ら加入メンバーが鹿島にもたらすものとは
浦和レッズに悔しいスコアレスドローに終わった鹿島アントラーズ。8月7日のJ1再開前にランコ・ポポヴィッチ監督は「6月の代表の中断明けは停滞してしまったが、今回は最初から一気にギアを上げて勝ち続ける必要がある」と話していたが、3試合が終わって1勝1分1敗というのは、常勝軍団復活を目指すチームにとっては納得できない展開だろう。
ただ、浦和戦で前向きな部分もあった。最たるものが、7月に1年半ぶりの古巣復帰を果たした三竿健斗だ。開始早々5分の安居海斗に対する素早いつぶしを筆頭に、鋭いボール奪取と攻撃の芽を摘む仕事を随所に披露。攻撃の起点となるパス出しも数多く見せていた。
7月にチームに合流した頃は欧州の湿度の低さと日本の高温多湿の気候のギャップに苦しみ、動きのキレを欠く部分が散見されたが、約1カ月が経過し、フィットネスは確実に上向いている様子だ。
「勝つためには、球際のところだったり、トランジションで相手を上回るっていうことがまず最低ラインだと思っていて、ホームのFC東京戦、(サガン)鳥栖戦とそこはできていたんで、今日もそこを意識して、自分の中でも行った時に球際で勝つ、相手から奪い切るってところで今日は結構出せてたんじゃないかなと。90分間戦う頭のところもそうだし、体力的にも戻ってきている。次はそれを勝利に繋げられるようにしたいです」と本人も手ごたえをつかんだという。
■「これをやったら勝率上がる」
2戦未勝利、しかも浦和戦に限って言えば3年間白星なしという苦しい状況ではあるが、三竿自身はこのゲームをネガティブには捉えていない。
「浦和戦で見せた姿勢をベースに落とさないように意識して、チームとしてやっていきたいです。今回の試合運びは100点ではないですけど、『これをやったら勝率上がる』っていうところまでは見せられた。あれ(仲間隼斗のゴールがVARで取り消された場面)はオフサイドなのかっていうところも微妙ですけど、あそこで点が入ってれば確実に勝っていた試合内容だったと思います」と彼はプレーた戦い方の質的向上は実感したという。
ただ、それを本当に成果にするには、浦和戦の基準をどの相手にも示し続けること。直近の磐田戦ではそれができていない時間帯もないとは言えなかった。
8月はこの後、21日の天皇杯3回戦・ヴァンフォーレ甲府戦、25日の東京ヴェルディ戦と連戦が続く。メンバー固定傾向の強い鹿島は連戦になると運動量やパフォーマンスが低下する傾向があるだけに「高いレベルの継続」という課題をクリアしなければ、高い領域には到達できない。
鈴木優磨と同じ96年生まれのリーダー格の三竿がそれを発信してくれれば、チーム全体が引き締まるはずだ。もちろんさらに年長の柴崎岳、植田直通、仲間、安西幸輝といったメンバーはいるが、鈴木優磨と三竿、樋口雄太の「96年組」にはより主軸としての強い自覚を持って戦ってほしい。
■今夏加入メンバーの力
三竿の存在によって、新加入の田川亨介も背中を押されるだろう。2人は2023年の半年間、同じサンタクララでチームメートとしてプレー。気心が知れた間柄だ。三竿は欧州から日本に戻って適応する難しさも熟知しているだけに、田川にそれを伝え、サポートしているという。
「亨介も合流して間もないですけど、すぐ自分の色を出したっていうのは、チームにとっても大きいし、亨介はこういう選手だっていうのも分かったと思う。あとは日本の夏に、暑さに慣れて、コンディションを上げてくれば、よりチームを引っ張ってくれるんじゃないかなと思います」
もう1人の新戦力であるターレス・ブレーネルとともに今夏加入のメンバーがどのようにチームを底上げしていくかが終盤戦を左右するのは確か。ラスト9連勝で逆転タイトルをつかんだ2007年のようなミラクルを起こすべく、彼らが原動力になってくれれば理想的だ。
(取材・文/元川悦子)