http://www.hochi.co.jp/soccer/national/20141102-OHT1T50180.html
◆J1第31節 G大阪1―1仙台(2日・万博記念競技場)
J1ベガルタ仙台は、敵地でG大阪と1―1で引き分けた。0―1と敗戦濃厚だった後半ロスタイムに、元日本代表FW柳沢敦(37)が左足で今季初ゴール。これでJ1で得点した通算シーズンを「17」とし、鹿島MF小笠原満男らを抜いて歴代単独1位に浮上した。ピッチ外でもチームを引っ張るベテランが意地を見せ、貴重な勝ち点1をもぎ取った。
ガッツポーズは控えめだった。イレブンに抱きしめられてゴールを祝福されると、柳沢は右拳を握りしめた。敗戦なら15位に転落していたチームを救う貴重な同点弾。「相手は優勝争いに加わっているチーム。耐えるところは耐えて、最後まで諦めない姿勢が勝ち点1につながった」と手応えをにじませた。
冷静な判断力は健在だった。後半ロスタイム。DF上本がロングボールを上げると、FWハモンロペスが頭で競り勝った。「かなりスペースが空いていた。こぼれてくる予測はあった。そこを拾えば、厚い攻撃ができる」。狙い通り、こぼれ球に素早く反応。左足を振り抜くと、ボールはゴールネットを揺らした。
諦めない姿勢を、普段から見せてきた。4月に左腓(ひ)骨を亀裂骨折。2か月がたっても、痛みは消えなかった。長く続いた地道なリハビリ。だが、どれほど追い込まれようと、チームのことは忘れなかった。「僕が落ち込んでいる時、柳沢さんは『大丈夫。必ずチャンスは来る』と言ってくれた。けがをしても前向きに練習する柳沢さんの言葉が、心に響いた」とFW武藤は明かした。
年齢を、けがを言い訳にせず、前向きに戦う男のゴールには、1点以上の価値がある。この日、無得点に終わった武藤は「最後まで諦めないからゴールが生まれる。その姿勢を見習いたい」と力を込めた。「勢いをもたらしてくれる」と渡辺晋監督(41)。残りは3試合。逆境で輝いた光が、未来への道しるべとなる。(高橋 宏磁)