日刊鹿島アントラーズニュース
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2016年12月18日日曜日
◆小笠原満男が絵馬に書いた「世界一」。 レアル相手でも、ひょっとしたら……。(Number)
http://number.bunshun.jp/articles/-/827087
話は2010年までさかのぼる。1月、鹿島アントラーズの選手たちは、鹿島神宮でシーズン開幕前恒例の必勝祈願を行った。このとき、小笠原満男は新年の目標として、絵馬にこう書き込んだ。
世界一
当時、その真意について尋ねてみた。
「絵馬に何を書いたかなんて、よく見てるね。毎年やるから、書くことがないんですよ(笑)。でもね、今年はACLを獲って、その先のクラブW杯も獲りたいから。代表の南アフリカW杯もあるんで、そういう意味も込めて。俺が個人として世界一になるのは難しいと思うけど、チームとしてなら可能性はある。可能性がゼロならば話は別ですけど、ACLを獲ってクラブW杯に出れば、可能性が全くないわけじゃない。やってできないことはないと思うから、世界一を目指したいよね」
その年、残念ながら小笠原は南アフリカW杯の登録メンバーから落選した。ACLもラウンド16で敗れ、世界一への道は閉ざされた。Jリーグでも4位に終わり、4連覇を逃す悔しいシーズンになった。
あれから6年――。
本当に「世界一」に王手をかけた鹿島。
今も小笠原がキャプテンマークを巻く鹿島が、本当に「世界一」へ王手をかけた。Jリーグ3位から頂点に立ったチャンピオンシップの勢いそのまま、クラブW杯でも3連勝。12月18日、アジアのクラブとして初めて決勝の舞台に立つ。
チャンピオンシップ決勝から数えて、3週間で6試合を戦うハードスケジュールに、疲労はピークのはず。それでもやっぱり、鹿島の選手たちは“欲ばり”だ。彼らの頭の中には、「目の前のタイトルは全部獲る」意識しかない。
普通の選手は、タイトルを獲ると一度落ち着く。
Number917・918号に掲載したインタビューでも、小笠原はチャンピオンシップ優勝直後にも関わらず、何度も何度も「これで満足しちゃいけない」「この先が大事」と口にした。
この人は、なぜ何歳になっても貪欲でいられるんだろう。取材中、思わず聞いた。
小笠原選手ほど何回も優勝を経験していたら、すぐにまたモチベーションを上げるのは、大変じゃないですか?
闘将は、笑顔とともに即答した。
「大変じゃないっす。タイトルを獲る喜びを、一度、味わっちゃうとね。言葉にするのは難しいけど、優勝して嬉しいというよりも、またあそこに行きたいって思う。これは、Jリーグで3連覇した頃と変わらない。チャンピオンシップが終わったら、すぐにクラブW杯があって、天皇杯がある。周りからは忙しいように見えるかもしれないけど、またタイトルを獲る喜びを味わうチャンスがあるって思えば、楽しみでしょうがないですよ」
鹿島の25年の歴史で、紛れもなく最強の相手。
チャンピオンシップ優勝からわずか2週間後、再びタイトル獲得の喜びを味わうビッグチャンスがやって来た。ただし、相手はあのレアル・マドリーだ。鹿島のクラブ創設25年の歴史の中でも、最強の相手であることは間違いない。
だからこそ、問われるのは「割り切り力」だろう。チャンピオンシップ後のインタビューで、小笠原は勝因をこう語っている。
「常にスタイルを変えないチームもあるけど、チャンピオンシップのような勝負事では、絶対に割り切りも必要になる。守るときは、守る。例えば日本代表でも、サッカーのスタイルについてみんな議論するけど、やっぱりアジア予選で格下と戦う場合と、W杯本大会でブラジルと戦う場合とでは、展開も戦い方も違う。そういう駆け引きや試合運びは、もっと覚えるべきだと思うし、俺がこのチームで一番学んだことだから」
おそらくクラブW杯決勝で、鹿島がボールを支配して相手を押し込む時間帯は、ほとんどないはず。その中で、いかに選手全員が「割り切り」、レアルの暴風雨のような攻撃を我慢強く耐えることができるか。そして嵐の中でもファイティングポーズを取り続け、強烈なカウンターパンチを繰り出すことができるか。
レアルに勝つ確率はとてつもなく低いがゼロじゃない。
レアルに一瞬の隙が生まれるとすれば、サイドのスペースだ。鹿島の粘り強い守備に焦れたサイドバックのマルセロやカルバハルが、前のめりになった背後に金崎夢生や土居聖真が走り込み、一気にフィニッシュに持ち込めるか。まさに準決勝アトレティコ・ナシオナル戦の85分、ボール奪取から遠藤康→金崎夢生→鈴木優磨と、わずか2本のパスでゴールネットを揺らした3点目のようなゴールを再現できるか。
とはいえ、この試合で鹿島がレアルに勝つ確率は、とてつもなく低い。世界じゅうの人々が、レアルが勝つと思っている。
だけど、可能性はゼロじゃない。世界一へ、「やってできないことはない」と信じている男がキャプテンマークを巻くチームだからこそ、「ひょっとしたら」を期待してしまうのである。
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