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準決勝で見えたマドリーの弱点は左の守備、S・ラモスの不在。
懇意にしている『サッカーダイジェストWeb』の編集者から、なかなか難しいテーマの原稿を依頼された。
欧州、いや世界を代表するレアル・マドリーの弱点を探り、日曜日の決勝で鹿島アントラーズが勝つシナリオを描いてほしいというのだ。
簡単ではないけれど、準決勝のマドリー対クラブ・アメリカ戦で見えたものを論じてみたい。
「最初の25分は難しい展開になった。日本の天候に慣れる必要があったし、長旅で疲れていたからね」
この試合のマン・オブ・ザ・マッチに選出されたルカ・モドリッチが試合後に語ったように、確かに序盤はやや押し込まれる場面もあり、最初のシュートもクラブ・アメリカが記録した。
この時間帯にメキシコ勢が有効に活用していたのは、彼らから見て右サイドのハーフウェーラインより前目のあたりだ。
多くのマッチレビューやチーム紹介では、今のマドリーは4-1-2-3のシステムを敷き、エースのクリスチアーノ・ロナウドは左のウイングを担うとされている。だが実情は、C・ロナウドが左サイドにいるのはスタートの時だけで、自由に最前線を動き回っている。
そのため、彼が空けた左サイドのポジション(相手から見て右サイド)は、後方のマルセロがそれほど守備を得意としないこともあって、相手が攻撃の起点としやすいエリアとなっていた。
鹿島もここをうまく使えば、遠藤康や西大伍らのコンビネーションで崩していけるかもしれない。
それから準決勝について言えば、マドリーはセルヒオ・ラモスの欠場が攻守に響いていたように見えた。
準決勝でCBを務めたラファエル・ヴァランヌは相手FWに何度もポストプレーから展開させてしまっていたし、もうひとりのCBナチョも、敵のプレスにバタバタとするシーンがあった。
また攻撃面では、セットプレー時にトニ・クロースが高精度のボールを入れても、最大のターゲットのひとりが欠けている状態で、迫力不足は否めなかった。
ただし、この2つの“弱点”のどちらも、鹿島にとってはアテにならないかもしれない……。
フォーメーションについては、途中から4-1-3-2に近いかたちになっていて、C・ロナウドはカリム・ベンゼマと2トップを組み、アンカーのカゼミーロの前に左からクロース、モドリッチ、ルーカス・バスケスが並ぶような陣形だった。
C・ロナウドは守備時にスペースを空けても特に問題にならないファーストストライカーであり、左サイドの守備は高い知性を備えたクロースが対応していたのだ。
また、準決勝前の会見で、ジネディーヌ・ジダン監督は「(準決勝に)セルヒオ(・ラモス)は出場しない。決勝にとっておく」と言っていたから、おそらく鹿島戦でキャプテンは先発出場してくることだろう。
そもそも、クラブ史上最長の無敗記録を36に更新したばかりの欧州王者に、ウィークポイントは見出しにくい。
ならば、鹿島はあまり余計なことを考えずに、この千載一遇のチャンスを思う存分に楽しんだらいいのではないだろうか。そう、自分たちのサッカーをして。
「良い時間もそうでない時間もあったし、運にも恵まれなかった。しかし、今日の試合の最大のポイントは、我々の攻撃性の欠如にあったと思う。もっと積極的に攻めるべきだった」
そう話したのは、マドリー戦後のクラブ・アメリカの将、リカルド・ラボルペだ。
Jリーグを3位でフィニッシュ(勝点では首位の浦和レッズに15も離されていた)した後に、世界大会の決勝に辿り着いた鹿島に、失うものは何もないはずだ。だからこそ、試合後に悔いが残るような戦いだけはしてほしくない。
文:井川 洋一