日刊鹿島アントラーズニュース

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2016年12月24日土曜日

◆バスク代表監督がレアル戦の鹿島を激賞。 「敗れざる者の誇りを見た」(Sportiva)


https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jleague_other/2016/12/24/post_1185/index.php

 クラブワールドカップ決勝戦。鹿島アントラーズは強豪レアル・マドリードをあと一歩のところまで追いつめている。90分間を戦い抜いて2-2。120分間で2-4と敗れたものの、世界を仰天させた。

「鹿島はアトレティコ・ナシオナル戦に続いて、レアル・マドリード戦でも自分たちのシステムを完璧に操っていた。戦術を適正に活用。距離感やサポート関係が格別で、攻から守、守から攻の切り替えも秀抜だった」



 そう語るミケル・エチャリは、レアル・マドリードを苦しめた鹿島を最大限に評価した。現バスク代表監督であり、レアル・ソシエダ、エイバル、アラベスなどで育成部長、監督、SDを歴任。”スペインの慧眼(けいがん)” には、なにが見えたのか?

「拮抗した試合。もしセルヒオ・ラモスに2枚目のイエローカードが正当に出されていたら……勝負の行方は誰にも分からない」

 エチャリはそう言って、試合を解剖し始めた。

「鹿島は立ち上がりにパワーを使っている。レアル・マドリードの力量を踏まえ、気圧されない戦略の一つだろう。攻撃的志向を示し、練度の高い連係攻撃によって、果敢にバイタルエリアへ侵入した。

 5分を過ぎると、ポゼッションはレアル・マドリードに奪い返されるが、積極的な前線からのプレッシングで対抗。ボールの出どころを抑えながら高めのラインを確保し、MFとDFのラインでほぼボールを奪い返している。

 レアル・マドリードの4-3-3に対し、鹿島は4-4-2(細かく分析すると4-2-2-2)を採用。サイドハーフで起用された遠藤康、柴崎岳の2人が戦術のカギになっていた。

 遠藤、柴崎は守備でも攻撃でも、PASILLO INTERIOR(バックラインの前)を意識。守備では2人のボランチ(小笠原満男、永木亮太)と並び、バックラインとの連係で堅固な陣を。攻撃では2トップ(金崎夢生、土居聖真)に近づき、相手のバックラインの前を横切り、あるいは侵入を試みた。

 一方、レアル・マドリードのアンカーであるカゼミーロは両サイドからの侵入に手を焼き、有効に守れていない。結果的にサイドバックが攻め上がれない現象が発生。ルーカス・バスケスのみがレアル・マドリードの戦術的攻撃を有効にしていた」

 鹿島ペースにも見えたが、先制したのはマドリードだった。前半9分、バスケスが右サイドからクロスを上げ、一度はクリアされるが、拾ったルカ・モドリッチがシュートを打ち、GK曽ヶ端準が弾いたところをカリム・ベンゼマが押し込んだ。

「鹿島は失点後の20分間近く、攻撃を展開した。スピード、精度が一気に高まり、主に右サイドからレアル・マドリードを混乱させている。クロスのこぼれを小笠原がミドルで狙い、コンビネーションプレーから抜け出した西大伍が際どいクロスを送り、遠藤がPASILLO INTERIORに入って、右足でシュート。ときには、クリスティアーノ・ロナウドも含めてマドリードの選手全員を陣内に押し込んだ。

 攻め立てる鹿島だが、守備のバランスも崩していない。ボールの出どころへのプレス(土居と金崎)、サポート、マークの受け渡し、戦術的動きが実に円滑。小笠原と永木はそれぞれの持ち場に入ってくる選手を追うが、2人は常に良好な相互関係を保っていた。1対1でも、DF陣はレアル・マドリーFW陣の”速い足の動き”に惑わされていない。壁パスでの侵入に対しても、鹿島の選手の反応は速く、予測ができていた。CKの守備も、曽ヶ端の判断や処理などを含めて質が高かった」

 善戦する鹿島は、前半44分、後半7分と立て続けに得点。とうとう逆転に成功している。

「鹿島の同点のシーンはカウンターの流れだった。自陣からのロングパスを土居がポストで落とし、それを受けた金崎が力強く抜け出すが、ここはシュートまで至らず。クリアされたボールを再び永木が拾い、左サイドの土居に預ける。土居はフェイントを入れ、エリア内でポジションを取っていた柴崎にクロス。柴崎はラファエル・ヴァランを振り切って、左足でGKを破った。

 カウンターは抜け目なかったし、ポジションがいいから連続攻撃を繰り出し、組織だっていた。

 逆転弾は、セルヒオ・ラモスのクリアが中央に入り、それを柴崎が見逃さなかった。PASILLO INTERIORでボールを的確に扱い、巧みなボールスキルで相手をかわし、左足で強いシュートを同サイドに突き刺した。特筆すべきは柴崎が右利きにもかかわらず、左足で難度の高いシュートを打っている点だろう。鹿島の選手たちは、両足でボールを蹴れる有利がある」

 しかし後半15分、鹿島はバスケスをエリア内で倒してPKを与え、2-2の同点に追いつかれてしまった。

「侵入してきたバスケスを柴崎は背後から追うだけ、ディフェンスになっていない。山本脩斗のチャージもタイミングが遅かった。堅固だった守備が崩れた。

 これでレアル・マドリードは一気呵成に攻め込んでくる。

 特筆すべきは、鹿島が落ち着いて巧妙に対処した点だろう。ナシオナル戦もそうだったが、支えきれなくなったらじわじわとラインを全体的に下げ、ライン間のスペースを狭め、堅陣を作る。密集戦の態勢で守備の効果を上げ、そのうえで反撃の機会を窺おうとするしたたかさ。事実、ファブリツィオが際どいミドルを放ち、終了間際には遠藤がファーサイドで決定機を得ている」

 結局、延長戦はロナウドに2点を奪われ、決定力の差が出たわけだが……。

「もし、89分にセルヒオ・ラモスに2目のイエローが出されていたら(審判はカードに手をかけており、何らかの影響を考えて逡巡したのだろう)、レアル・マドリードは10人になっていた。どちらが勝者になっていただろう?」

 そしてエチャリは、激闘をこう締め括っている。

「鹿島は最後まで戦い続け、敗れざる者の誇り高さを見せた。スポーツマンシップを感じるチームだった。それだけで賞賛に値する。2得点の柴崎にはシルバーボールが与えられるべきだった」
(つづく)

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