日刊鹿島アントラーズニュース
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2016年12月17日土曜日
◆鹿島に受け継がれるジーコ・イズム クラブW杯決勝でレアルと対戦(the WORLD)
http://www.theworldmagazine.jp/20161217/05feature/100533
最大の目標は勝つこと。鹿島はずっと勝つことを宿命としてきた
現在開催中のクラブW杯の決勝カードは、レアル・マドリード(欧州王者)×鹿島アントラーズ(開催国王者)となった。Jクラブが同大会の決勝に進出したのははじめてで、鹿島は日本サッカーに新たな歴史を刻んだ先駆者となった。その勝ち上がりは実に鹿島らしく、オークランド・シティー(オセアニア王者)、マメロディ・サンダウンズ(アフリカ王者)、アトレティコ・ナシオナル(南米王者)を倒して決勝進出を果たしたが、いずれも劣性を強いられる時間が長いなか、粘り強く戦い、勝負強さを発揮しての勝利だった。
1997年から2006年まで鹿島でプレイし、日本代表として1998年W杯に出場した名サイドバックである名良橋晃氏も「(アトレティコ・ナシオナル戦は)自宅の寝室にあるTVで観戦しました。リビングでは娘がFNS歌謡祭を見ていたので・・・・・・。興奮して思わず一人泣きしましたよ」と、今回の活躍を自分のことのように喜んでいる。同時に、「アントラーズらしい戦いができている」とも語る。
アントラーズらしさ。引いてはアントラーズ・イズム、ジーコ・イズムと呼ばれる鹿島に根付いている文化・伝統は、いったいどういったものなのか。鹿島のサッカーは堅守速攻がベースになっているわけではなく、正確にパスを回してポゼッションし、自分たちから仕掛けることもできる。対戦相手のパフォーマンス、試合状況に応じて戦い方を変える臨機応変さがあり、どういうカタチからでもゴールできる応用力がある。そして、いまどういう状況なのか、どういうプレイをしなければならないかを個々の選手がしっかりと理解しているため、チームとして意思統一が成された状態で戦うことができる。
守るときは守る。自分たちのリズムのときは積極的に仕掛ける。単純なことだが、一人でも異なる意識を持つ選手がいると、そこをキッカケにチームのバランスが崩れていく。状況を見極めて、選手間で意思統一して戦うということに関して、鹿島は非常に優れている。
「最大の目的は勝つことで、内容が悪くても悪いなりに勝つ方法を見出してきました。(クラブの礎を築いた)ジーコが負けず嫌いで、ずっと勝つことを宿命としてきました。いまの選手たちは現役時代のジーコを知りませんが、試合はもちろん練習から勝ちにこだわることが受け継がれています。石井(正忠)監督はジーコとプレイしていたので、その辺りもしっかりと指導しています。勝負に対する姿勢、団結力、結束力の強さがアントラーズの魅力で、フロントも含めてクラブ全体が勝つことにこだわっています」
時代の移り変わりとともに、監督、選手は入れ替わっていく。それでも、鹿島ではアントラーズ・イズム、ジーコ・イズムが失われずに脈々と受け継がれている。大事なのは、チームをまとめられる選手、リーダーシップを張れる選手がいるかどうかで、鹿島にはジーコを筆頭に、ジョルジーニョ、レオナルド、本田泰人、秋田豊、岩政大樹など仲間を引っ張れる選手たちがいた。
現在のチームにはこうした選手たちとプレイしてきた小笠原満男、曽ケ端準などがいて、さらには昌子源、柴崎岳、金崎夢生など今度は小笠原や曽ケ端らを見て成長してきた選手たちがチームを引っ張る存在になっている。そして、鈴木優磨といった次世代へと受け継いでいく若手も育っている。
勝つためになにをしなければならないか──。鹿島の選手たちは、一人ひとりが理解している。「言われる前に行動で示せる選手が揃っています。練習中にピッチ内で言い争いがあることもありますが、すべては勝つためです。個性ある選手たちが勝利のためにひとつになっている。見なくてもどこに味方がいるかわかっているようなバランスの良さがあります。共通理解のもとで戦っているのがアントラーズです」と名良橋晃氏は教えてくれた。
レアルと決勝を戦う鹿島へのエール。「よそいきのサッカーはしてほしくない」
クラブW杯へ臨むにあたり、「最多で4試合できるので、その4試合に勝って終わることが最大の目標です」と語っていたのは石井正忠監督だ。目標達成のためには、決勝で現在公式戦に36試合負けなしのレアルを倒さなければならない。限りなく達成不可能な極めて難しいミッションだが、決してチャンスがないわけではない。「長距離移動による疲労や時差ボケもあるが、あと2日間でしっかり準備したい」と準決勝のクラブアメリカ戦後に語っていたのはジネディーヌ・ジダン監督である。
そのクラブアメリカ戦を見ればわかるとおり、レアルのコンディションは整っていない。無論、選手個々の能力は高いが、運動量や連携はいまひとつでクラブアメリカにも得点するチャンスがあった。ところが、「われわれは正確さが足りなかった。ミスがあってパスをつなぐことができず、とくに後半は自分たちのやりたいことができなかった」とリカルド・ラ・ボルペ監督が悔やむ結果となった。
決勝を終えて、石井正忠監督が同じようなコメントをすることがないように願いたい。公式戦でレアルと戦えるチャンスはそうない。しかも、クラブW杯の決勝だ。大事なところで普段の力を発揮できず、クラブアメリカのように悔いを残して敗れるのは避けたい。とはいえ、常勝を義務付けられてきた鹿島なら大丈夫か──。
「間近にいた選手たちが遠くへ行ってしまう感覚もあり、寂しさというか、うらやましい気持ちもあります。ただ、選手たちにはしっかりとプレイし、ここから世界へ羽ばたいていってほしいです」
「レアルと戦えるとかではなく、やるからには優勝してほしい。変に意識してよそいきのサッカーをするのではなく、普段の戦い、これまで培ってきたアントラーズのサッカーで勝負し、無敗記録を止めてほしい。もし気負っている選手、普段どおりではない選手がいたら、背番号40(小笠原満男)が黙っていないと思います。もとより、私は心配していません。一人ひとりがしっかりと準備し、勝つための戦いをしてくれると信じています」
こうした気持ちでいるのは、名良橋晃氏だけではない。ジーコやレオナルドも決勝を楽しみにしているコメントをそれぞれの公式SNSで発表している。レアルとの対戦によって、鹿島は多くのものを得るだろう。だからこそ、名良橋晃氏のこの言葉でこのコラムを締めくくっておきたい。
「負けて得るものもたしかにありますが、勝ってなにかを得たほうが次へつながります」
文/飯塚健司
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