特集南アフリカW杯から見えた日本サッカーの姿
[3.1 J1第2節 川崎F1-1鹿島 等々力]
絶妙なコンビネーションでJ屈指の堅守を破った。鹿島アントラーズは0-1で迎えた前半21分、自陣ビルドアップからDF内田篤人が最終ラインの背後にボールを送ると、ここまで2戦連発中のFW伊藤翔が見事なタイミングで反応。後ろ向きのトラップでうまく収め、劣勢を打破する同点ゴールを流し込んだ。
かつては世代別代表でU-17W杯を目指す予選を戦い、「高校の時から知っている」(内田)という1988年生まれのホットライン。内田が「前を見た瞬間に動いてくれた」と振り返れば、伊藤も「裏にボールを蹴る意思疎通ができていた」と同調するなど、同じチームになって間もない中でも関係性の良さを感じさせる。
裏へのロングボールというシンプルな攻撃ではあったが、高度な駆け引きの賜物でもあった。抜け出した伊藤にはDF奈良竜樹がマークについていたにもかかわらず、シュートの場面では大きく先着。これを伊藤は「相手センターバックは自分に付けなかったんじゃなくて、先に身体をぶつけなかったので走って来られなかった」と振り返る。
この駆け引きには内田もしっかり気付いていた。「適当に前にボンと蹴ろうか、翔が動き出したら高いボールを裏に蹴ろうか迷っていたけど、たぶん翔がディフェンスにぶつかってこけたんですよね。足を振りかぶった時に分かったので『これ行けるわ』って」。ストライカーの巧みな動きが名手のフィードを引き出していたようだ。
「前半に1-1に追いつけたのが本当にでかかった」と語った内田は「コンパクトに守ってくるのが現代サッカー。タッチラインからタッチラインまで(の距離を)蹴れれば守備も何もない。トラップも含めてよくやってくれた」と見事なゴールに手応え。ここまで2試合未勝利が続く鹿島だが、たしかな武器は磨かれている。
(取材・文 竹内達也)