日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年6月17日日曜日

◆大迫勇也の価値と課題。『2秒』を生み出す図抜けた能力、決定機で揺れないゴールネット【西部の目/ロシアW杯】(フットボールチャンネル)






 最前線で身体を張り、適切な位置取りと技術でボールを収める。ポストプレーで大迫勇也の右に出る者は日本にいない。彼が作るタメがチームを助けている。しかし、この万能型FWの課題として決定力が挙げられる。勝負どころでゴールを奪うことができれば、大迫はさらに絶対的な存在となる。(文:西部謙司)




背負って受ける能力、接近戦での技術

 相手を背負ってパスを受ける。ターゲットプレー、ポストプレーと呼ばれるFW必須の技術だが、大迫勇也は図抜けてこれが上手い。

 足腰が強そうでバランスが良く、細かいステップも踏める。何と言っても相手CBとのコンタクトプレーの技術、駆け引きが際立つ。ボールが到達する前に体を当てて空間を確保する、低く潜り込んでからカチ上げるようにブロックする、そうかと思えば相手のパワーに逆らわずに受け流しながらボールをコントロールする。接近戦でのテクニックが多彩だ。

 かつてヴェルディ川崎(当時)や鹿島アントラーズで活躍したビスマルクも接近戦の名手だった。ビスマルクはMFなので、相手を背負うというより半身の攻防が多かったのだが、肘を張ってそこから中へ相手を入れない体勢を作ってボールを確保していた。

 ある日、取材でビスマルクと1対1をやるはめになった。撮影用の1対1なので、そんなに激しくはやらないが、そのときにビスマルクの腕のバリアに硬軟あることに気づいた。防御の中へ強引に入って行こうとすると、スッと腕を“抜いて”しまうのだ。こちらは暖簾に腕押しとなってバランスを崩し、その間にビスマルクは間合いを取り直す。

 大迫のターゲットプレーも硬軟を上手く使い分けていて、フィジカルコンタクトもパワーがすべてではないことがわかる。

課題は決定力





 高校選手権のスーパースター、大迫は鹿島アントラーズとプロ契約した。鹿島の先輩である柳沢敦とはいくつかの共通点がある。

 大迫と柳沢は十代の時点ですでにプロでやれる才能を持っていた。2人ともポストプレーが上手く、点もよくとっていた。柳沢のほうがよりオールラウンドだったが、どちらも万能型のFWといっていいだろう。

 最近、2002年ワールドカップの試合を見返したとき、柳沢の身体能力が特別だったと改めて思った。かなり単調な縦へのロングボールをベルギーやロシアの長身DFと競り合って一歩も引かない。あの攻撃で何とか成立していたのは柳沢の能力があったからだ。マークを外す動き、裏をとるセンスも素晴らしい。アシストも上手かった。ただ、柳沢はワールドカップ2大会に出場して1点もとっていない。

 大迫はこの点では柳沢に似なくていいところまで似ている。2人とも決してシュートが下手なわけではない。大迫のパワーのあるシュートは柳沢にはなかった長所である。しかし、あれだけ何でもできるのに不思議なぐらい決定機で決まらない。点をとっていないわけではないのだが、ここという決定機に決める印象が薄い。

マグロ漁船の漁師

 シュートが決まるエリアはペナルティーエリア内のゴールエリア幅だ。この場所からのシュートと他の場所からでは、得点になる確率が全然違う。つまり、このエリアに人とボールを送り込むことが攻撃の第一目標になるわけだ。スルーパスでもドリブルでもクロスボールでもいいが、とにかくこのエリアからのシュートを目指すことになる。

 このエリアへ入る機会が最も多いのは通常CFであり、決定機にシュートする機会も自ずと多くなる。大迫もこのエリアへ入りシュートしている。当然、守備側も最大限に警戒しているので簡単に得点できる状況ではないわけだが、ここでのチャンスを決めるかどうかは勝敗の分岐点になりうる。その点で大迫の責任は重大だ。

 ただ、量産型のストライカーはあまり責任を感じているようには見えないのが面白いところだ。もちろん外せば悔しがるが、たいがいさっさと切り替えている。ヘラヘラしている選手すらいる。

「外してしまった」と下を向くより、「これなら次もあるだろ」と気楽に構えている。「ストライカーはマグロ漁船の漁師みたいなもの」と言った人もいる。「ケチャップみたいに出るときは出る」とも言われる。そういうメンタルのストライカーは、何回外しても毎回「絶対決める」と思っているから不思議なものだ。

 絶対決めると思って外しているのに、次もそう思っている。得点を量産するFWは、実は外している数も多い。どんどん打って外すが、そのうち何本かが決まる。そういう性質の仕事なのだろう。

 前線で2秒のタメを作れる大迫は日本代表にとって貴重だが、さらに決定的な存在であることを示せれば、日本は勝利に近づくはずだ。

(文:西部謙司)

【了】


大迫勇也の価値と課題。『2秒』を生み出す図抜けた能力、決定機で揺れないゴールネット【西部の目/ロシアW杯】



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