http://www.so-net.ne.jp/antlers/games/51931
明治安田生命2016Jリーグチャンピオンシップ 決勝 第2戦
金崎の2発で逆転勝利!鹿島、7年ぶり8回目のJ1制覇!
魂の90分間の先に、最高の景色が待っていた。7年ぶりのリーグ制覇を懸けたチャンピオンシップ決勝第2戦。埼玉スタジアムに乗り込んだ鹿島は「2点以上を奪って勝つ」という任務を遂行してみせた。開始7分に先制ゴールを奪われたが、40分に金崎がダイビングヘッドを突き刺して同点に。そして79分、鈴木が奪ったPKを金崎が決めて逆転に成功し、2-1と勝利を収めて歓喜の時を迎えた。
鹿島は11月29日の決勝第1戦で、浦和に0-1と敗れた。前半はアウェイゴールを奪われないことを最優先に、重心を下げた戦い方を選択。シュートゼロに終わったが、無失点でハーフタイムを迎えた。内容が低調と見る向きもあるが、スコアレスでの折り返しは狙い通りの展開だった。
しかし後半、西のチャージがファウルと判定され、阿部のPKでゴールネットを揺らされた。柴崎とファブリシオ、伊東を投入して敢行した反撃も及ばず、0-1で試合終了。聖地・カシマスタジアムで、心の底から悔しい敗戦を喫した。
しかし、まだ何も終わっていない。下を向く必要はない。カシマスタジアムに舞ったタオルマフラー、そして鳴り響いた「奇跡を起こせ」が、選手たちを鼓舞した。決勝第2戦までの準備期間は3日間。今大会の規定により、鹿島がタイトルを獲得する条件は「2点以上を奪って勝つ」ことと定まった。これで、遂行する任務が明確になった。最高の景色へ足を踏み入れる己の姿をイメージしながら、選手たちは燃えたぎる闘志を胸にトレーニングを積んだ。試合2日前には、石井監督の就任後初となる非公開練習も敢行。集中力を高め、来るべき決戦へ準備を進めた。指揮官は「どの選手も、この試合に懸けている思いがある。全ての力を集結して勝利へ向かっていきたい」と静かに語る。そして遠藤は「綺麗なゴールじゃなくても良い。チームとして2点取れれば良い」と力を込めた。
指揮官は第1戦から先発メンバーを1名変更。2列目に柴崎を指名し、逆転優勝への望みを託す。前線は金崎と土居、中盤は柴崎とともに遠藤が並び、ボランチでは永木と小笠原がペアを組む。最終ラインは右から、西とファン ソッコ、昌子、山本。最後尾には曽ケ端が立ちはだかる。ベンチには、GK櫛引と植田、伊東、ファブリシオ、中村、赤崎、復帰となった鈴木が控える。
埼玉スタジアムは穏やかな青空に包まれたが、早くから駆け付けたサポーターの熱気が充満していた。開場前から高まるボルテージ。タイトルマッチを前にした高揚感と緊張感が、敵地を覆っていく。アントラーズレッドに割り当てられたビジタースタンドはわずかだった。しかし、例え人数では及ばなくても、背番号12が叫ぶ愛情と情熱はしっかりと選手へと届く。昌子は試合前日に話していた。「来られない人もたくさんいると思う。でも、映像越しでも念は送れる。僕たちを信じてほしい。僕たちも信じていますから」。どこにいても気持ちはひとつ。アントラーズファミリー全員で臨む、魂の90分間だ。
19時35分、キックオフ。立ち上がりから激しい展開となった。鹿島は開始早々、金崎が右サイドから強引に持ち込んで左足シュート。相手DFにブロックされたが、ゴールへの意欲をいきなり形にしてみせた。ただ、以降は浦和が積極的に攻勢に出てきたことで、鹿島は押し込まれる時間が続く。
そして7分、先制ゴールは浦和のものだった。鹿島の左サイドを縦へ突破され、クロスを上げられる。ファーサイドで待っていた興梠に右足ボレーを決められた。
敵地で負ったビハインド。しかし「2点以上を奪って勝つ」というミッションは、失点前後で変わることはない。選手たちは口々に「あの失点で、攻めなければいけないということがより明確になった」と振り返る。鹿島は10分にもクロスバー直撃のシュートを打たれたものの、事なきを得た。なかなか前線で起点を作れず、シュートまで持ち込めない時間が続いたものの、少しずつ中盤でセカンドボールを拾えるようになっていった。自陣に引いてブロックを形成し、カウンターを狙う浦和に対して、集中力を高めて応戦していった。
26分には守備の要がビッグプレーを見せる。浦和の左サイドからスルーパスを通され、ペナルティーエリア左側からシュートを打たれてしまったが、寸前のところで昌子が身体を投げ出してブロック。ボールは枠の左へと逸れていった。試合前日に“流れを変えるプレー”の重要性を強調し、「全員が、チームのために身体を張ってできればいい」と話していた背番号3が、鹿島を救った。
30分以降は両サイド深くまで攻め込む機会も増え、少しずつゴールへと迫っていった鹿島。西のクロスに反応した金崎はボールに届かなかったが、迫力に満ちた攻撃で突破口を見出そうと腐心していた。
そして、40分。「2点以上を奪って勝つ」、その第一のミッションが果たされる。最終ラインからのロングパスを競り合った遠藤が、身体を張ってボールを背後へ流す。スペースへ抜け出した背番号25は、利き足と逆の右足でクロス。ファーサイドへ飛んだボールに反応したのは金崎だった。魂を込めたダイビングヘッドは、GK西川の手を弾いてゴールネットを揺らした。1-1。ワンチャンスを生かしてみせた鹿島が、同点に追い付いてハーフタイムを迎えた。
1-1で迎えた後半、鹿島はボール支配率を高めて主導権を握った。51分、柴崎が蹴った左CKに飛び込んだ金崎のヘディングシュートは惜しくも枠を越えてしまう。しかし下を向くことなく、鹿島はひたむきにゴールを目指した。石井監督は58分、遠藤に代えて鈴木を投入。2列目に貪欲な若武者を送り込み、攻撃の圧力を高めていく。
試合は残り20分を切った。石井監督は73分、小笠原に代えて伊東を投入。西をボランチにスライドさせる、思い切った交代策でチームを活性化させた。悔しさをあらわにしてピッチを後にしたキャプテンの思いとともに、優勝への絶対条件・2点目を目指す道のりへと向かった。
そして78分、鈴木が最終ラインの背後へ抜け出し、スピードに乗ってペナルティーエリアへ。シュートを打とうとした瞬間、背後からのタックルで倒される。判定は、PK。キッカーは金崎だ。アントラーズファミリー全員の祈りを託されたエースが、思いを込めた一撃をゴールへと届けた。歓喜のビジタースタンド。これで、優勝へ課せられた条件は満たした。
4分と表示されたアディショナルタイムを含め、残りは15分弱。パワープレーを敢行する浦和に対し、鹿島は曽ケ端とソッコ、昌子を中心とした守備陣が気迫に満ちたプレーでゴールを死守する。88分に投入された赤崎もしっかりと役割を遂行した。痺れるような、永遠のように長く感じられる時間を走り抜いた選手たちは、ついにその時を迎えた。
歓喜を告げるホイッスルが鳴り響いた。2-1。2試合合計、2-2。アウェイゴール、2-1。鹿島が敵地でミッションを完遂し、逆転でリーグ制覇を成し遂げた。アントラーズファミリー全員でたどり着いた、7年ぶりの頂点だ。目の前には最高の景色が広がる。歓喜の歌が鳴りやむことはない。18個目の星が、鹿島の歴史に刻まれた。
さあ、次は世界が待っている。FIFAクラブワールドカップ2016出場を掴み取った鹿島は8日、オセアニア王者のオークランド・シティと対戦。世界に鹿島の名を轟かせるために。新たな戦いが始まる。
【この試合のトピックス】
・7年ぶり8回目となるJ1制覇を達成。最多記録を更新した。
・国内三大タイトル通算18冠目を獲得した。
・2ゴールを挙げた金崎がMVPに選出された。金崎はチャンピオンシップ3試合で3ゴールを挙げた。
・今季の浦和との公式戦は2勝2敗となった。
・埼玉スタジアムでの浦和戦は2連勝。昨季のヤマザキナビスコカップに続き、この地でタイトル獲得を果たした。
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:石井 正忠
・自分たちがやるべきことは何も変わらない。まずは落ち着いて守備から入り、そこから攻撃を積み上げよう。
・焦らずにボールをつなぎサイドチェンジを効果的に使っていこう。
・最後までコミュニケーションを大切に!この45分にすべてをかける!
浦和レッズ:ペトロヴィッチ
・もう少し後ろからボールをつないでいこう。
・アグレッシブにプレーしよう。
・後半、点を取りにいこう。
[試合後]
鹿島アントラーズ:石井 正忠
今日の試合は、最初から厳しい戦いになると理解していた。失点してしまったが、やるべきことが変わらないことはわかっていた。そこでうまくチーム全体が対応できて同点に追い付けたことが非常に良かった。あと、これだけ浦和のファンが多い中、アントラーズのサポーターの後押しがあって選手たちが90分間戦ってくれた。今年はタイトルを獲ることが義務付けられて始まったシーズン。それを実現できて、今は本当に嬉しい。90分間、戦ってくれた選手を誇りに思う。
Q.逆境の中での強さ、その要因は?
A.現場だけでなく、クラブ全体が持っているタイトルへの執着心だと思う。
Q.1点を取ったことで浦和の戦い方がカウンター狙いになったように思うが、どのように感じていたか?
A.同点に追い付けたことによって、浦和に逆にプレッシャーがかかったのではないか。特に後半に入ってからは前半のような勢いがなくなったような形だった。浦和の左サイドが少しバテてきているように見えたので、そこを徹底的に突く攻撃の形に変えた。
Q.クラブワールドカップについては?レアル マドリードとの対戦が実現する可能性もあるが?
A.まずは1つ1つ、対戦する相手の分析をしながら準備をしていきたい。先のことを考えずに1試合ずつ準備をしていきたい。
Q.鈴木選手を投入した後、途中で交代させたが?
A.投入したところは、もう1点を奪いに行かないと勝てない状況だったので、点を取るために彼を出した。形はどうであれ、得点に結び付く活躍をしてくれた。そして交代させたのは、サイドの守備で対応が遅れていたところがあったので。後から聞くと、PKを取った場面で少し痛めた部分もあったとのことで、パフォーマンスが落ちていたので秀平を投入した。
Q.久々のリーグタイトルを獲ったことの意義は?
A.長い時間、リーグのタイトルを獲ることができなかった。リーグタイトルを獲ることが義務付けられていた。獲れたことは非常に価値がある。ここからまた、チームが常に勝ち続けるポイントになってくれればいい。優勝することによって選手は成長するし、クラブに新たなタイトルを積み重ねることができて、クラブ全体がタイトルに向けてやってきたことが報われた。大きな意味を持つと思う。
Q.アントラーズで初めて日本人監督としてリーグタイトルを獲った心境は?そしてクラブワールドカップについては?
A.うちはずっとブラジル人監督が務めていたが、初めて日本人監督がリーグタイトルを獲れたということは、クラブにとっては非常に大きな意味があると思う。日本人指導者にとっても、何かプラスの部分があると思う。クラブワールドカップについては先を見ずに、1試合ずつ相手の分析をして、自分たちの戦い方や対応の仕方を考えていきたい。
Q.小笠原選手がチャンピオンシップに入ってさらに切れ味を増していたように思うが?
A.満男の貢献度は相当なものがある。交代の意図は運動量や守備の部分で落ちてきていると感じたから。とはいえ、それまでのプレーは攻守におけるチームの中心で、彼がいるといないとでは、チームのパフォーマンスは大きく変わってくる。それはシーズンを通して言えることだと思う。
浦和レッズ:ペトロヴィッチ
試合の入りは非常に良かった。早い段階で先制することができた。2、3点目を獲るチャンスがあった中で、30分過ぎからは自分たちがボールをつなげない展開になった。相手が攻勢に出てきた中で受けに回ってしまった面がある。必ずボールを後ろからつないで守備を剥がしていくように求めたが、前半の途中から自分たちがボールを持つことができなかった。その中で同点に追い付かれてしまった。ハーフタイムには、選手たちにしっかりと後ろから攻撃を組み立てようと話をした。後半は少し良くなったが、時間が進むにつれて少し運動量が落ちていた中で2点目を取られてしまった。最後は槙野を前に上げて、2トップにして外からのクロスから得点を狙った。もう少し落ち着いていれば、もう少しキレが残っていれば同点にできる場面はあったが、残念ながら1-2で敗れてしまった。勝利を収めたアントラーズに「おめでとう」と言いたい。
選手コメント
[試合後]
【櫛引 政敏】
難しい試合のなかできっちり勝ち切ることができた。一発勝負に強いなと見ていて思った。今年加入したが、いい経験ができていると思う。ただ、試合に絡めなかったのは悔しい。この悔しさをいい方向に持っていければと思う。
【昌子 源】
2点目を取られたら終わりだと思っていた。0-1のままだと苦しかったけど、夢生くんの同点ゴールが大きかった。チャンピオンになりたい、勝ちたいという気持ちで上回っていたから勝てたのだと思う。アントラーズのサポーターは負けていなかった。気持ちのこもった応援をしてくれたことが(優勝の)一番の要因だと思う。
【永木 亮太】
大舞台でも緊張することなく入れた。前半は入りが良くなくて、失点してしまった。前半の終わりに夢生が点を取ってくれたことが大きかった。チームの士気が上がった。2点目が入ってからは、割り切って守ることができた。ヒヤヒヤしたけど、アントラーズの底力を体感できた。
【土居 聖真】
「チームのために」という気持ちで戦っていた。1点を取られてもどうこうという感じはなかった。僕たちは2点取るしかない状況だったが、前半のうちに1点を返せたのは大きかった。個人としてはフルスロットルでやった。1年目の時に「クラブW杯に出ることが目標です」と言ったが、実現して嬉しい。しっかりと爪痕を残せればいい。
【柴崎 岳】
チームとして、2点を取ればいいということがあった。あの時間帯での失点は予想していなかったが、バタバタしても仕方がない。あとはもう点を取るだけだったので、切り替えることができた。勝つことができて良かった。タイトルがかかった時にクラブとして強さがある証だと思う。
【中村 充孝】
全員がこのためにやってきた。誰一人として諦めることなく、自分の役割を理解したうえで戦ったから、この結果が付いてきたと思う。こういうことが起きるんだなって。信じてやるとこういうことになると、改めて感じた。次は世界大会なので、切り替えてやりたいと思う。雰囲気は悪くなくて、後半立ち上がりからこっちに流れが来ているなと思っていた。
【ファン ソッコ】
ウイングバックの後ろやセンターバックの横が空いていることはスカウティングから聞いていたので、ヤスと「狙おう」と話していた。早めに失点したが、いけるという手応えは十分あった。チームの士気は下がっていなかったし、とにかくハートは熱く、頭はクールにいこうと思っていた。優勝は何回しても最高です。
【山本 脩斗】
最高でした。失点はしたけど、試合に入る前から2点を取らないといけなかったので「攻撃的に」という部分はあった。前半の最後に夢生が点を取ってくれたので、気持ちとしてもあと1点取ればいけるという気持ちで後半に入った。最初に点を取られたこともあって、勢いに乗せたかなというのもあったが、やるべきことはハッキリしていた。90分を通して実現することができた。
【曽ケ端 準】
失点しても2点が必要な状況は変わらなかった。後ろの選手としては、2点目を取られてはいけないという思いでプレーしていた。チャンスをモノにしてくれた。リーグ優勝はやっぱりうれしい。チームとして、優勝することは嬉しい。この光景をスタンドで見る悔しさを持った選手もいると思うが、そういうことがチーム力を上げていく。
【西 大伍】
早い段階で1点取られたが、僕らのやることは変わらない。落ち着いてできた。相手の方が緊張しているように感じた。ボランチでのプレーは何度かリーグ戦など試合でやったが、自分としてはできるという気持ちを持っていた。最後は相手がパワープレー気味にやってきたので、セカンドボールを拾うことを意識していた。
【植田 直通】
うれしさと悔しさが混じっている。チームとしては嬉しかった。その後、悔しさが出てきた。自分としては、負けている時でもパワープレーで出ると監督から言われていた。センターバックとして入ったとしても、全てはね返す準備はできていた。
【伊東 幸敏】
2点以上必要なことはかなり意識していた。点を取らないといけない時は、必ず出番があると思っていたので準備はしていた。
【遠藤 康】
1点を取られても、全然焦りはなかった。得点の場面は岳がニアにマークを釣ってくれて、夢生が空いていた。フリーだったので、正確にクロスを上げるだけだった。右足でも左足でも、チームの勝利につながるパスを出したり、ゴールを決めることができればと思っていた。石井さんを中心に、常に前を向いてやれていた。石井さんを信じて、石井さんのサッカーをするだけだった。こういう結果に終わって良かった。
【金崎 夢生】
1点目はヤスから良いボールが来たので、飛び込むだけだった。PKは優磨には悪いけど譲ってもらいました。2点目はPKだったけど、しっかりと取れて良かった。アウェイだったけど、サポーターの声は聞こえていた。しっかりと勝って優勝できて良かった。
【鈴木 優磨】
久しぶりの試合だったので、試合に入るのが難しかった。でも、PKを取れて良かった。(PKの場面では)結構な“攻防”があったけど、仕方ない。でも、決めてくれて良かった。もっと僕たちが新しいアントラーズを作らないといけないと思っている。まだ試合があるので、もっと成長して、いいシーズンといえるよう頑張りたい。
【小笠原 満男】
先制されたが、1点取られても状況は変わらない。むしろ浦和のほうが試合を難しくしたのではと感じた。僕らは冷静に戦えたと思う。レギュレーションに沿って戦い方を変えることができたのは、アントラーズの方だったと思う。またタイトルを獲りたいという欲がある。まだクラブW杯も天皇杯もあるので、勝ち続けていきたい。