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明治安田生命JリーグCS決勝第2戦 鹿島2―1浦和 (12月3日 埼玉)
J1年間王者を決める明治安田生命チャンピオンシップ(CS)決勝の第2戦が3日、埼玉スタジアムで行われ、鹿島が浦和を2―1で破り2戦合計2―2ながらアウェーゴールで上回り、7年ぶり8度目の優勝を果たした。8月下旬には心労による体調不良から休養に追い込まれた石井正忠監督(49)だが、最終的にはチームを頂点に導いた。年間勝ち点59で3位の鹿島は、レギュラーシーズンの勝ち点差15をひっくり返す下克上を達成。国内18冠目のタイトルを手にするとともに、クラブW杯の初出場を決めた。
この奇跡のような結末を、誰が本気で信じられただろうか。CS王者を告げる笛が鳴り響くと、石井監督は左手を突き上げてピッチに駆け込んだ。瞬く間に人の輪が重なっていく。クラブ創設から25年目、初めて日本人監督で獲ったJリーグタイトル。声は震え、目は潤んでいた。
「今年はタイトルを獲ることが義務づけられて始まったシーズン。それが実現できて本当に今、うれしい」
第1戦は0―1で敗戦し、優勝するためには2点以上を取らなければいけなかった。前半7分に失点しても、チームは冷静だった。しぶとく守りながら1―1に追いつくと、指揮官は浦和の左サイドの足が止まったことを見抜いて後半13分にFW鈴木を右に投入した。20歳は脱臼した肩の痛みを抱えながらスルーパスに抜け出してDFのファウルを誘い、PKを獲得。金崎が確実に仕留め、ついに逆転した。
第1ステージは堅守を生かして優勝を飾りながら、第2ステージは失速した。石井監督は8月20日の湘南戦で途中交代を命じたFW金崎の造反劇を発端に体調を崩し、心労でダウンした。休養中、クラブのOBから言われた。「逃げるな」と。27日の横浜戦は自宅でテレビ観戦。選手が戦う姿を見て思った。「自分だけがこんなところで諦めちゃいけない。もし許されるなら、もう一度チームを率いたい」
監督として再び選手の前に立った。「全体を後ろからサポートしていく」かつての指導法はかなぐり捨てた。「リーダーとしてもっと先頭に立って方向性を示していく」と決めた。自らの方針をぶれずに示すようになったことで、サッカー観の違いから起こっていた選手同士の意見の対立は次第になくなっていった。
それでも終盤は7年ぶりの4連敗。苦しい時期、今度は苦難を選手たち自身が乗り越えた。先月7日に決起集会。一人一人が意見をぶつけ合い、主将の小笠原が「監督が変わっても、一人一人が変わらないと意味がない」と最後にカツを入れた。響いた選手から、練習の態度が変わっていった。練習に活気が戻った。
激動のシーズンを乗り越えてつかんだ18個目の国内主要タイトル。伝統の「勝負強さ」は健在だった。だが、小笠原は言う。「チームが勝負強いわけじゃない。一生懸命に練習からやって、試合でも必死に戦って勝ってきたチーム。勝負強いから勝てるっていうほど、この世界は甘いもんじゃない。そこははき違えちゃいけない」。鹿島が起こしたドラマは、記録にも記憶にも残り続ける。
▼クラブW杯出場 鹿島は「FIFAクラブW杯2016」に開催国枠での出場が決定。鹿島はクラブW杯初出場。8日の開幕戦(横浜国際)にオセアニア代表のオークランド(ニュージーランド)と対戦する。開幕戦に勝利し、マメロディ(南アフリカ)、アトレチコ・ナシオナル(コロンビア)と3連勝すれば、決勝戦で欧州代表のレアル・マドリード(スペイン)と対戦する可能性もある。