日刊鹿島アントラーズニュース

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2015年2月9日月曜日

◆C大阪、百戦錬磨の知将・アウトゥオリ新監督に求められるものとは?(サンスポ)


http://www.sanspo.com/soccer/news/20150207/jle15020717030003-n1.html



 2月2日から行っていた和歌山での第1次キャンプを6日に打ち上げたセレッソ大阪。山口蛍と扇原貴宏が正式に契約を延長してチーム残留が確定し、合流が遅れていたディエゴ・フォルランもチームに加わるなど、3月8日のJ2開幕・東京ヴェルディ戦に向けての強化が着々と進んでいるようだ。

 1年でのJ1復帰を託されたのは、母国・ブラジルを筆頭に、ポルトガル、ペルー、日本、カタールで指揮を執ったことのある百戦錬磨の知将、パウロ・アウトゥオリ監督。同指揮官はご存じの通り、2006年に鹿島アントラーズを1年間指揮している。その際には、清水東高校から加入したばかりの新人・内田篤人(シャルケ)をいきなり開幕スタメンに抜擢する大胆采配を披露。彼が19歳で日本代表デビューするベースを作った。加えて、まだ成長途上にあった興梠慎三(浦和)や田代有三(前神戸)らにも積極的にチャンスを与え、前任のトニーニョ・セレーゾ監督(現鹿島)が作った底上げを図ろうとも試みた。シーズン途中にチームの大黒柱である小笠原満男がイタリア・セリエAのメッシーナへ移籍したこともあって、リーグ戦の成績自体は6位に沈んだが、次のオズワルド・オリヴェイラ監督(現パルメイラス)がリーグ3連覇を果たす礎を築いた側面もあったと言える。

 今のセレッソにもアカデミー出身の山口蛍、扇原貴宏、丸橋祐介といった20代半ばの選手、ユース上がりの阪本将基、沖野将基ら若手と大きく伸びてもらわなければならない選手たちがいるだけに、大胆な抜擢は大いに歓迎だ。若い力の台頭は日本サッカー界全体の課題。それを指揮官が率先してやってくれれば、セレッソから日の丸を背負う選手がさらに育っていくだろう。アウトゥオリ監督への期待はそういう意味でも高いのだ。

 このブラジル人指揮官がどれだけ安定したチーム作りを進められるかで、今季のセレッソの成否が決まると言っても過言ではない。実際、振り返ってみると、昨季はセルビア出身のランコ・ポポヴィッチ監督(現レアル・サラゴサ監督)に始まり、ドイツ出身のマルコ・ペッツァイオリ監督(現広州恒大U-17監督兼ユースディレクター)、セレッソU-18を長年指揮した大熊裕司監督と3人もの指揮官が率いることになり、チームが激しく揺れ動いた。シーズン中に2度も監督交代という大ナタが振るわれるのは異常事態。戦術やフォーメーション、選手起用が一定せず、チーム全体が混乱したままだった。

 この状況は昨季3冠を獲得したガンバ大阪が長谷川健太監督体制で2年間しっかりと土台を作って成功を収めたのとまさに対照的だった。セレッソもJ1・4位に入った2013年は長年チームを率いたレヴィー・クルピ監督のスタイルが浸透し、柿谷曜一朗(現バーゼル)や山口蛍らが劇的な飛躍を遂げている。そういう安定感を取り戻すべく、アウトゥオリ監督にはブレないチーム作りを進めてもらう必要がある。

 和歌山キャンプはフィジカル強化中心で、戦術的な部分はこれからが本番だと見られるが、とにかくJ2はインテンシティー(強度)の高いリーグ。昨季2位に入ってJ1初昇格をつかんだ松本山雅の反町康治監督も「J1とJ2は全く別のリーグだと考えた方がいい」と口癖のように強調していた。昨季昇格を果たした湘南ベルマーレ、松本山雅、モンテディオ山形はいずれも豊富な運動量とスピーディーな攻守の切り替え、タテへの速さを武器とするチーム。彼らの成功を目の当たりにした多くのJ2クラブが似たような方向性で戦ってくることは十分考えられる。

 そういう中、際立ったタレント集団のセレッソがこれまで通りのJ1基準を前面に押し出そうとするのはやや危険かもしれない。実際にジェフユナイテッド千葉や京都サンガ、昨季プレーオフで敗れたジュビロ磐田など、J1同等以上の戦力を誇りながらJ1復帰できていないチームもいくつかある。アウトゥオリ監督は昨季磐田を率いたペリクレス・シャムスカ監督が犯した過ちを繰り返してはいけない。対戦相手の出方をしっかりと分析しながら、戦い方を変化させられるような柔軟性を持つべきだ。

 選手たちも、いかにしてJ2基準に頭を切り替えるかが肝要だろう。チームの軸を担うと見られる山口蛍や扇原、長谷川アーリアジャスール、玉田圭司らはJ1経験は豊富だがJ2には慣れていないし、フォルランやカカウ、パブロ・フェリペといった外国人選手たちも独特の環境に戸惑うかもしれない。そこでアウトゥオリ監督が的確なビジョンを示し、選手たちを正しい方向へと導くことができれば、セレッソは必ず1年でJ1に復帰できるはずだ。

 J2屈指の選手層を誇る彼らはその大目標を果たす責務がある。熱心に応援してくれるサポーターを2年連続で失望させることだけは許されない。(Goal.com)

文/元川悦子

 1967年長野県松本市生まれ。94年からサッカー取材に携わる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は練習にせっせと通い、ア ウェー戦も全て現地取材している。近著に「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由」(カンゼン刊)がある。

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