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新年を迎え、2019/20シーズンは後半戦へと突入した。欧州各国でプレーする日本人選手たちはどのような活躍を見せたのか。今回は今季からバルセロナBでプレーする安部裕葵の前半戦を振り返る。(文:編集部)
バルサBで1トップに起用され躍動
アントワーヌ・グリーズマンやセルヒオ・ブスケッツと並び立つかと期待された日本でのプレシーズンツアーは、負傷もあって試合に出場できなかった。だが、昨年夏に鹿島アントラーズからバルセロナに加入したMF安部裕葵は、Bチームで成長しトップチーム昇格への道を着実に歩んでいる。
シーズン開幕当初から3部相当のセグンダBで戦うバルセロナBで主力としてプレーした安部は、左ウィングを主戦場としていた。鹿島時代にも務めたポジションだが、当時とバルサで求められる能力が異なることもあり、なかなか結果を残せない日々が続く。
昨年10月初旬になるとベンチスタートが増え始め、悶々とした日々を過ごしたことだろう。そんな苦しい状況が変わり始めたのは、11月3日に行われたセグンダB第11節のFCアンドラ戦だった。安部はそれまでの左ウィングではなく、4-3-3の1トップとして起用されたのである。
この役割が見事にハマった。どんな角度からもパスを引き出してボールを足元に収めることができ、攻守に献身的で、周囲の状況を素早く把握して自由奔放な他のアタッカーたちをサポートすることもできる安部にとって、バルサ式“偽9番”はうってつけだった。
そして1トップ起用3試合目となった11月17日のコルネジャ戦でバルサ移籍後初ゴールを挙げると、続く23日のレリダ・エスポルティウ戦で2試合連続ゴール。チームは勝ちきれなかったが、安部は結果を残したことで信頼を確固たるものとし、1トップが定位置になっていった。
Bチームで存在感を発揮するとともに、トップチームの練習にも度々参加するようになった。11月の代表ウィーク中には、DFジェラール・ピケらとともにトップチームの親善試合にも出場。さらに12月上旬にはチャンピオンズリーグ(CL)で決勝トーナメント進出が決まっていたため、グループリーグ最終節でトップチームのアウェイ遠征メンバー入りするのではないかとも報じられた。
結局、この時はトップチームへの帯同はなかったが、バルサBでは15試合出場4ゴールという成績を残し、2019年最後の試合まで先発出場を続けた。これはチーム内でも5本の指に入るほどの数字で、得点はMFモンチュに次ぐ2番目の多さだった。
安部の評価の高さを語る上で、ポジション争いをしているライバルの存在も見逃せない。シーズン開幕から1トップに入っていたのは、年代別のスペイン代表常連でエースを張り続けてきたFWアベル・ルイスだった。
近い将来のトップチーム昇格が期待されるバルサ生え抜きのストライカーを抑えて、安部が1トップとして起用されていたことからは、12番の日本代表MFが戦術的に非常に重要な役割を担っていたことがうかがえる。
鹿島で10番を背負っていた、Jリーグでもトップクラスの実力者にとって、スペイン3部はクオリティに見合わず簡単すぎるのではないかという見方もあるだろう。しかし、セグンダBはセミプロリーグで、バルサのように整った環境で試合をできることもあれば、地方の小都市で荒れた芝のスタジアムや、時には人工芝のピッチでも戦わなければならないこともある。
しかもバルサBは20歳前後の若手ばかりで構成されているが、対戦相手はスペイン下部リーグのサッカーを知り尽くした百戦錬磨の大人たち。独特のスタイルで世界的なクラブのBチームには、対抗心むき出しで襲いかかってくる。
このような難しい環境でもコンスタントに試合出場を重ね、結果を出せている経験は安部にとって非常に大きいはずだ。言葉が通じなくても、プレーで自らの実力を証明し、バルサの独特なスタイルにも素早く適応した20歳のタフさやクレバーさは称賛されて然るべきだ。
年明け初戦、1月4日に行われたエスパニョールB戦で阿部は今季16試合目のリーグ戦出場を果たした。この試合ではアベル・ルイスが1トップに入り、安部は左ウィングに配置されて2-0の勝利に貢献している。続く15日のバダロナ戦は1トップに戻って先発出場したように、後半戦も2つのポジションでの起用が続くとみられる中、試合ごとに異なる役割を確実にこなしつつ、いかに継続してゴールやアシストといった数字を残していけるかが重要だ。
バルサはトップチームのエルネスト・バルベルデ監督が解任され、キケ・セティエン監督が就任したばかり。ベティスで狂気じみたポゼッションスタイルを築き上げた智将が、どんな選手を起用していくかはまだわからない。
今季はBチームから17歳のFWアンス・ファティがトップチームに引き上げられてブレイクを果たし、21歳のFWカルレス・ペレスもベンチ入りする試合が増えてきている。伝統的に下部組織から若手を積極的に登用してきたバルサでは、成長をアピールすればチャンスが与えられる土壌がある。
ウルグアイ代表FWルイス・スアレスの長期離脱も決まり、前線の駒不足が囁かれる中で外部からの補強が上手くいくかも不透明。状況しだいでは着実に成長を続ける安部にも、トップチームの公式戦に出場するチャンスが訪れるのではないだろうか。
(文:編集部)
【了】
◆安部裕葵、19/20前半戦の評価は? 1トップ起用がハマりトップチームに近づく【欧州日本人中間査定(6)】(フットボールチャンネル)