2月23日から今季のJリーグがスタートしました。首を長くして待っていたファンの方々も多いのではないでしょうか。僕の古巣、鹿島アントラーズは名古屋グランパスを相手に3対0で勝利し、上々のスタートを切りました。そして、東京ヴェルディが16年ぶりにJ1の舞台に帰ってきたことも大変話題になりました。
セットプレーの変化
93年開幕時の相手もグランパス。なんだか懐かしかったですね。あの当時、スタメンで出ていた僕としては今回の初戦、“7番の復活”が妙に印象に残りました93年はアルシンドが7番を背負い、切れのあるドリブルとスピード2ゴールを奪う活躍を演じました。
今季、アントラーズで7番を背負うのは新外国人選手のチャヴリッチです。1ゴール1アシストと見事結果を残しました。彼自身、個人技も高いし、プレーの正確性などを見ると今後もさらに期待できます。クロアチア出身ということもあり、あの国は結構、“真面目なサッカー”を展開します。アントラーズの中でもしっかり機能するんじゃないかなと感じます。3点目、ワンツーで抜け出したあたりを見るに「もううまく当てはまっている」と見えました。ただ、以降は彼も研究されるでしょうから、周囲の選手とコミュニケーションをとって長いシーズン、乗り切ってほしいです。
ランコ・ポポヴィッチ新監督はセットプレーも入念に仕込んだのではないでしょうか。先制点を取った数分後、左サイドでのFKは変化をつけたものでした。グラウンダーでつないでから“ボランチ”知念慶がミドルを放ちましたが惜しくもGKのセーブにあいました。往年のアントラーズはセットプレーを大事にしてきましたので、このあたりかも僕がプレーしていたときと重なって見えました。
知念のコンバートに期待
新監督になって一番大きな変化はなんと言っても知念のボランチコンバートです。フィジカルコンタクトに長けているプレーヤーを中央に据えたかった狙いもあったのでしょう。彼が前線でできるのは誰しもがわかっていることです。隙あらばボランチの位置から前にいってほしいし、ミドルから積極的にゴールを狙ってほしい。
そうすると、相手DFとMFは否が応でもにも前に出ていかなければならなくなります。そうするとほかのプレーヤーは裏を狙いやすくなります。彼ひとりのコンバートでいろんなバリエーションが増えると思いますね。知念があがっても両サイドの片方が絞ったり、ワンボランチにしてバランスをとればさほど問題はないはずです。2トップの下に知念が入ってくれば面白いと思うし、彼ならできるんじゃないかなと期待しています。
初戦のアントラーズはペナルティーエリアに入り込む人数も多かったように見えました。サイドからのボールに対してゴール前の準備は意識して取り組んでいるんだなと感じました。そうすると得点の確率も高まります。クロッサーもある程度アバウトでもよくなるので、ここは継続してほしいですね。
ヴェルディ対横浜F・マリノスも93年と同じ開幕カード。5万人を超えるファンが国立に押し寄せました。最後にF・マリノスに逆転されましたが、ヴェルディはいい戦いをしていました。パスでいなしたりドリブルで仕掛けるといった93年時のスタイルから、今はしっかり走っています。戦うサッカーに変わってきたのかなという印象です。最後の最後、体力負けしてしまったのが残念でした。良い内容だっただけに終盤が勿体なかったけど観る者に期待感を持たせる試合でした。やっぱり、ヴェルディはJ1にいてほしいクラブだなと思った開幕節でした。
●大野俊三(おおの・しゅんぞう)
<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。
*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。
◆第203回 背番号7が輝いた31年前と今季開幕戦(SPORTS COMMUNICATIONS)