ACLグループステージ 第5節
鹿島、意地のドロー。2点差を挽回して勝ち点1を獲得、ACLラウンド16進出。
鹿島が上海での激闘で意地のドローを演じ、グループ突破を決めた。AFCチャンピオンズリーグ グループステージ第5節、敵地での上海申花戦。引き分け以上でラウンド16進出が決まる大一番に臨むと、前半で2失点を喫する苦しい展開を強いられたものの、58分に鈴木、63分にレアンドロがゴールネットを揺らす。逆転には至らなかったが、2-2の引き分けで勝ち点1を獲得。1試合を残してグループステージ突破を決めた。
ついに始まった怒涛の連戦、その幕開けを告げる90分は不甲斐ない時間に終始した。3日前のJ1第5節、札幌を相手にスコアレスドロー。開始直後にミスから迎えた大ピンチを皮切りに、札幌の攻勢を受け続ける展開となった。クォン スンテの好セーブやセンターバックコンビの奮闘もあってクリーンシートを記録したものの、攻撃陣はミスからリズムを崩してしまい、ゴールネットを揺らせず。閉塞感に覆われた聖地に、ブーイングが鳴り響いた。
だが、下を向く時間はない。チームは翌朝に鹿嶋を発ち、次なる戦いの舞台へと向かった。中2日で迎える上海申花戦は、グループステージ突破が懸かる大一番。昌子が「大会が変わるし、気持ちを切り替えてしっかりと勝ちたい」と語っていた通り、不甲斐ない90分を引きずることなく歩みを進めなければならない。準備期間はわずかだが、札幌戦で露呈した課題と反省点を胸に刻み、さらなる進化を遂げなければならない。
1日の午後、チームは上海に到着。間もなくして練習場へ向かい、トレーニングを実施した。リカバリーメニューでコンディションを確かめ、そして準備を進めていく。試合前日の公式練習では、上海虹口足球場のピッチコンディションを確認しながら最終調整を実施。強い日差しの下、選手たちは意欲的にボールを追っていた。そして前日会見には、大岩監督と安部が出席。もがき苦しみながらも前進を続ける背番号30は「絶対にチームとして勝たなければいけない試合。グループステージ突破ということもあるが、一試合一試合にこだわることで他の大会につながると思うので、どうしても勝ちたい」と、勝利への強い決意を語っていた。
グループHの首位で第5節を迎えた鹿島は、引き分け以上の結果を残せばグループステージ突破が決まる状況にある。だが安部が言う通り、勝利にこだわる姿勢を示すことがチームに勢いと自信を生むことは間違いない。勝ち点3を目指して戦う、アウェイでの90分。指揮官が指名した先発メンバー11人は、3日前から6名が入れ替わっていた。GKに曽ケ端、センターバックの一角に犬飼、そしてボランチには小笠原が入る。2列目は金森、そして札幌戦で実戦復帰を果たしたレアンドロが今季初先発。前線にはペドロ ジュニオールが指名され、今季初ゴールを狙う。その他、最終ラインには伊東と植田、山本が並び、小笠原とコンビを組むのはレオ シルバ。2トップはペドロとともに鈴木が務める。またベンチには、GKのクォン スンテ、西、小田、永木、土居、安部、金崎が座る。
夏のような暑さとなった上海も、日没後は気温が下がっていった。アジア制覇への決意を胸に海外遠征に臨んだ背番号12が、ボルテージを高めてスタジアムへ足を運んでいく。数ではホームチームに及ばなくても、2階スタンドの隅に指定されたエリアからアントラーズレッドの情熱を降り注ぎ続けた。決戦の舞台に到着した指揮官は「試合開始からアグレッシブに戦う」と語り、そしてロッカールームへと向かった。
キックオフのホイッスルが鳴り響いた。開始直後は上海申花にボールを持たれていたものの、鈴木やレアンドロが敵陣でプレスをかけて押し込み返していく。最初のチャンスは5分、鈴木がペナルティーエリア右側で小笠原からのロングパスに反応し、ヘディングで後方へ。走り込んでいたペドロが右足を振り抜くと、強烈な一撃がゴールを襲った。相手GKに阻まれたものの、今季初得点を狙う背番号7がホームチームに脅威を与えてみせた。
続いてのチャンスは10分だった。敵陣左サイドでボールを持った鈴木がペナルティーエリア手前へパスを通すと、相手との競り合いからこぼれ球を拾ったペドロが前を向く。視界にゴールマウスを捉えた背番号7が右足で放った強烈なミドルシュートはしかし、またも相手GKにセーブされてしまった。
ペドロが切れ味鋭い2本のシュートで存在感を示したものの、スコアを刻むには至らない。すると13分、均衡を破ったのはホームチームだった。クロスに反応した犬飼がファウルを取られ、PKに。ジョバンニ モレノのシュート、曽ケ端はコースを読み切っていたものの、わずかに及ばなかった。0-1。重要な意味を持つ先制点を許し、敵地でビハインドを負った。
1点を追う鹿島はなかなか決定機を作るに至らないが、中盤でのパス交換から必死にリズムを掴もうと腐心する。24分にはレアンドロがペナルティーエリア左手前でボールを持つと、鋭い反転から右足を一閃。強烈なミドルシュートをゴール右隅へ飛ばしたが、相手GKに弾き出されてしまった。レアンドロは直後の25分にも、敵陣でのボール奪取から強引かつスピードに乗ったドリブル突破でペナルティーエリア左側へ。左足シュートは枠を捉えるに至らなかったが、今季初先発の背番号11が持ち前の突破力で存在感を示してみせた。
チャンスを作り出し始めていたものの、結実できずにいた鹿島。すると28分、上海申花の左CKからマオ ジエンチンにヘディングシュートを決められ、2失点目を喫した。警戒していたセットプレーでゴールネットを揺らされ、2点を追う展開となった。
30分経過後は上海申花に主導権を握られ、セットプレーからゴール前へ迫られる場面も増えていってしまった。さらに34分には、センターサークル内でパスを受けたペドロがドリブルを始めたところで腰を痛め、ピッチに倒れ込む。一度はピッチへ戻ったが、背番号7は交代を余儀なくされた。38分、金崎がピッチイン。2点ビハインド、そしてアクシデントでの選手交代と、苦しい時間が続いてしまった。0-2。反撃できないまま前半終了のホイッスルが鳴り響き、ハーフタイムを迎えた。
アントラーズレッドの背番号12とともに、意地と気迫を見せなければならない後半45分。開始早々、小笠原が相手選手の悪質なタックルを受けてピッチへ倒れ込む。頭部に強い打撃を受けた闘将はしかし、静かなる闘志とともに立ち上がった。戦う姿勢を示し続ける背番号40とともに、鹿島の反撃が始まった。
まずは58分、敵陣左サイドからの攻撃でレオがペナルティーエリア左側に入る。混戦から粘ってシュートを放つと、相手DFに当たってコースが変わったところに鈴木が反応。相手GKの前で押し込み、ゴールネットを揺らした。背番号9、待望の今季初得点。1点差に迫り、アントラーズレッドはボルテージを高めていく。
鹿島の攻勢は続く。運動量が落ちた上海申花を押し込み、同点ゴールを狙い続けた。そして、待望の瞬間は63分。鈴木がペナルティーエリア右手前から緩やかな軌道のクロスをファーサイドへ供給すると、待っていたレアンドロが左足で強烈なボレーを放った。着実に枠を捉えた一撃は、相手GKの手を弾いてゴールへ。今季初先発の背番号11が値千金のスコアを刻み、鹿島がついに同点に追い付いた。
残された時間は30分。勝たなければグループステージ突破が苦しい状況となる上海申花も、必死に攻勢をかけてきた。中盤に広大なスペースが生まれ、次第にカウンターの応酬へと傾斜していく。激しいボディコンタクトが繰り返される中、時間の経過とともにファウルを取らずにプレーを流す判定基準が鮮明になってきたこともあって、上海のピッチは肉弾戦の舞台と化した。それでも選手たちは冷静に戦い続け、時計の針を進めていった。
大岩監督は85分に安部、終了間際に永木を投入。中盤に運動量を加え、上海申花の攻撃をしのぎながら逆転弾を狙った。最終盤はパワープレーを敢行してきた相手に押し込まれたものの、最後の一線は割らせない。2-2。勝利には届かなかったが、ラウンド16進出を意味する1ポイントを獲得した。
敵地で2点ビハインドを負いながら、意地のドローを演じてみせた鹿島。チームは明朝、帰国の途につく。次戦は中3日、再びのアウェイゲームだ。7日に行われるJ1第6節の湘南戦に向けて、全員で準備を進めていく。
【この試合のトピックス】
・2大会連続のラウンド16進出を決めた。
・上海申花との対戦は通算7回目で、戦績は2勝4分1敗となった。アウェイでは3試合連続の引き分け。
・中国のクラブとACLで対戦するのは通算15回目で、7勝4分4敗となった。
・レアンドロが今季の公式戦初先発を果たし、今季初得点を挙げた。
・鈴木が今季の公式戦初得点を挙げた。
・犬飼が今季のACLで3試合目の先発出場を果たした。
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
上海申花:WU Jingui
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
前半は会場の雰囲気も相まって、上海申花のアグレッシブな姿勢に押され気味になり、セットプレーから2失点を喫してしまった。ハーフタイムに スイッチを入れて、自分たちがやるべきことをしっかりとやってくれた結果、後半に同点に追い付くことができた。選手は非常に感謝しているし、 最大限の評価をしたいと思う。
Q.ハーフタイムには、具体的にどのような指示をして修正したのか?
A.今日は相手のホームであるということで、分析の中で、前半は押される展開になると思っていた。後半は相手の運動量が落ちる、特に両サイドの強度が落ちるという分析をしていた。そこをうまく突いてくれて、そこからの得点を生むことができた。自信を持って選手に指示をして送り出した。
Q.グループステージ突破が決まった感想と、2列目に金森選手とレアンドロ選手を起用した狙いは?
A.次のラウンドに進めたことは率直に嬉しい。非常にタイトな日程の中でリーグ戦とACLを戦っている。選手たちは非常に前向きにトレーニングとゲームに取り組んでくれていて、その結果として次のラウンドに進めることは非常に嬉しく思っている。サイドハーフの起用の狙いは、相手の分析をした中で、今日は彼らを使って肉体的にも精神的にも相手を押し込むということ。小杉分析担当に感謝したいと思う。
Q.1ゴール1アシストと結果を残した鈴木選手の評価は?
A.得点もアシストも含めてだが、特に守備でスイッチを入れるアグレッシブさを相手が嫌がっているのは手に取るように分かった。そこを評価したい。そのご褒美が1得点1アシストだと思う。チームのために守備を怠らず、チェイスを続けたことを高く評価したい。
上海申花:WU Jingui
選手コメント
[試合後]
【鈴木 優磨】
ゴールシーンは、あのようなボールが来ればいいと思っていて実際に来た。そういう場所にいることが、FWにとっては大事だと思う。1点を取れば相手は慌てると思っていた。グループステージを突破したけど、課題の多い試合。もっとやらないといけないし、満足してはいけない。グループステージ突破は最低限。
【犬飼 智也】
相手にPKを与えたところで勢いに乗せてしまった。10番のマークをレオ、脩斗くんと自分ではっきりさせることができていなかった。後半はそこをはっきりさせたので良くなった。PKを取られた場面ではボールに触れると思って行った。実際に触ったけど、見られ方によってはPKでも仕方がない。体の向き、ポジショニングを修正しないといけない。
【曽ケ端 準】
ホームでの対戦よりも勢いよく来られて、前半はうまくいかなかった。もう少しうまく前半から試合に入らないといけない。ここでグループステージ突破を決められたので、あとは今日の失点をしっかり反省していきたいと思う。
【植田 直通】
センターバックのどちらが10番の選手を見るのかをはっきりさせた。一人が見て、ボランチが下りてくるのを待って対応した。勝ちたかった気持ちはもちろんあるけど、グループステージ突破の目標は達成したので、そこだけは良かった。前半は改善しようという中での失点してしまったので、反省しなければいけない。
【金森 健志】
前半のような試合をすると苦しい展開になってしまう。後半にやっていたことを前半からやらなければいけなかったと思う。前半は相手の勢いに飲まれてしまった。自分たちからアクションを起こさないといけなかったということが反省点。全員の「グループステージを突破するんだ」という気持ちが後半の内容を変えたと思う。
【安部 裕葵】
監督からは「サイドが空いているので、そこを狙っていくように」と言われていた。自分も試合を観ていて、そこが空いていることは分かっていた。点を取りにいくこともそうだけど、最低限、失点しないように攻撃よりも守備を意識した。グループステージを突破して良かった。
AFCチャンピオンズリーグ2018 グループステージ 第5節