天皇杯 4回戦
鹿島、4年ぶりの天皇杯ベスト8! ファブリシオの2得点で神戸を撃破!
元日に歓喜の時を迎えるために。鹿島が力強くベスト8へ駒を進めた。天皇杯4回戦、ヴィッセル神戸と対戦すると、32分に左CKからファブリシオが先制ゴールを挙げる。55分にもファブリシオが追加点を挙げ、神戸の反撃を1点でしのいで2-1と勝利を収めた。
鹿島は3日、2ndステージ最終節で神戸に0-1と屈し、4連敗でリーグ戦を終えた。2009年以来となる、不甲斐ない結果。試合後に行われたホーム最終戦セレモニーではブーイングも響いた。選手会長の西はそれでも、来たるべき天皇杯とチャンピオンシップの戦いに向けて「勝てると思っている」と、退路を断つように、力強く宣言した。石井監督も「最後に皆さんと喜びを分かち合えるように」と、決意を述べた。
悔しさと不甲斐なさを胸に、選手たちはひたむきにトレーニングに打ち込んだ。11日にはカシマスタジアムで日本代表とオマーン代表の一戦が行われ、永木が初キャップを記録。そして大迫は慣れ親しんだカシマのピッチでゴールネットを2回、揺らした。仲間たちの活躍から大いに刺激を受け、選手たちは勝利だけを目指して神戸との対峙に臨む。
石井監督はリーグ最終節から先発メンバーを3名変更。代表招集で欠場となる植田と永木に代わって山本が左サイドバックに復帰し、ボランチに三竿、2列目にはファブリシオを起用した。センターバックは昌子とファン ソッコのコンビ、右サイドバックは西、最後尾には曽ケ端。三竿とペアを組むのは小笠原で、2列目にはファブリシオとともに遠藤が並ぶ。前線は金崎と鈴木がコンビを組んだ。そしてベンチには、GK櫛引とブエノ、伊東、復帰を果たした土居、久保田、杉本、赤崎が控える。
穏やかな青空に恵まれたノエビアスタジアム神戸。ホーム扱いとなる一戦、神戸の地まで駆けつけたアントラーズサポーターが選手たちを鼓舞する。心地良い秋晴れの下、鹿島は14時4分にキックオフを迎えた。
立ち上がりから、鹿島は両サイドを使った攻撃を積極的に展開していった。開始3分、鈴木が力強い突破で得たFKを小笠原がゴール中央へ蹴り込む。ニアサイドへ飛び込んだ鈴木がダイビングヘッドを放ったが、惜しくも相手GKにセーブされてしまった。以降は激しいボディコンタクトの応酬となり、ファウルでプレーが止まる場面が増えていく。ピッチをブーイングが包む時間が多くなり、各々のメンタルコントロールが問われる試合となった。
鹿島は13分、左サイドからのロングスローを頭でつながれ、ボレーシュートでゴールネットを揺らされてしまう。しかし、オフサイドの判定で得点は認められず、事なきを得た。16分にはアクシデント。10分に競り合いでファウルを受けて痛んでいた鈴木のプレー続行が不可能となり、担架で運び出される。土居がピッチに送り出され、早くも交代枠を1つ使う形となった。
この日、最初の決定機は22分だった。遠藤のスルーパスを受けた金崎がペナルティーエリア内でフリーになり、右側へスライドしながら相手GKをかわす。あとは無人のゴールへ蹴り込むだけ、というタイミングだったが、カバーに戻った相手DFにブロックされてシュートを放つことはできなかった。
鹿島はボランチでコンビを組む三竿と小笠原が激しいプレスで神戸の攻撃の芽を摘んでいく。三竿は6月5日のヤマザキナビスコカップ大宮戦以来となる先発出場だったが、気迫に満ちたプレーでチームに活力を与えていた。
そして32分、待望の先制ゴールが決まった。遠藤が蹴った左CK、ニアサイドで反応したファブリシオが相手との競り合いを制してヘディングシュートを突き刺した。ファブリシオの来日2ゴール目で、鹿島が5試合ぶりに先制に成功した。
勢いに乗る鹿島は38分、小笠原がペナルティーエリア左奥へ浮き球のボールを供給。山本が頭で折り返すと、中央の金崎が倒れ込みながらシュートを放った。うまく当たらずに相手GKに阻まれたが、追加点への意欲を示した。前半は1-0で終了。リードを保ってハーフタイムを迎えた。
後半立ち上がりも拮抗した展開となった。鹿島は50分、左サイドでの細かいパス交換から山本が突破。クロスは精度を欠いたものの、鮮やかな連係でチャンスを作り出した。そして51分には、最終ラインの背後へ抜け出した金崎が相手GKと1対1になる決定機。しかし、シュートは惜しくも阻まれてしまった。
なかなか2点目を挙げられずに嫌な流れになりかけた中、鹿島を勝利へ前進させる2ゴール目が決まる。主役はファブリシオだった。55分、右サイドをオーバーラップした西のクロスはつながらなかったが、こぼれ球を拾った背番号11がペナルティーエリア右側へスライドし、強引に右足を振り抜く。ボールは相手DFに当たり、相手GKの頭上を越えてゴールへ吸い込まれた。ファブリシオ、加入後初の1試合2ゴール。鹿島がリードを2点に広げた。
2点差がついたことで、神戸は人数を割いてリスクを負った攻撃を仕掛けてきた。63分、細かいパス交換から渡邉に中央突破を許し、ペナルティーエリアに入られてピンチを迎える。しかし、曽ケ端が1対1を冷静に処理。至近距離からのシュートを弾き出し、チームを救った。
ただ、直後に落とし穴が待っていた。神戸の左CKからゴール前で混戦となり、渡邉に蹴り込まれて1点差に迫られてしまった。
勢いに乗って同点ゴールを目指す神戸に対し、鹿島は劣勢を強いられながらも、集中力を保って最後の一線は割らせない。ファウルで相手を止める場面も増えたが、セットプレーの守備でも激しい肉弾戦を繰り返し、ゴールを死守。神戸に同点ゴールを許さなかった。鹿島は機を見て反撃に転じ、73分にはファブリシオが鮮やかなミドルシュートでハットトリックを狙ったが、惜しくもクロスバーに阻まれて3点目とはならなかった。
試合終盤は防戦一方となったが、鹿島は昌子やソッコを中心とする守備陣が最後まで身体を張った。途中出場の杉本や伊東もしっかりと試合の流れを掴み、土居と金崎は労を惜しまないプレスでチームを助けた。アディショナルタイム3分を終えると、5試合ぶりの勝利を告げるホイッスルが鳴り響いた。
公式戦5試合ぶり、9月25日の新潟戦以来となる白星。チーム一丸で掴み取った勝利で、鹿島は天皇杯で4年ぶりとなるベスト8進出となった。準々決勝は12月24日、サンフレッチェ広島との対戦だ。
その前に、鹿島には重要な戦いが待っている。J1チャンピオンシップだ。まずは準決勝、23日の川崎F戦。リーグタイトル奪回へ、チーム一丸で準備を進めていく。
【この試合のトピックス】
・2012年以来、4年ぶりとなる天皇杯準々決勝進出を果たした。
・三竿が6月5日のヤマザキナビスコカップ・グループステージ第7節大宮戦以来の先発出場を果たした。
・ファブリシオが加入後初の1試合2ゴールを記録した。
・今季の神戸との公式戦は4試合で2勝2敗となった。
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:石井 正忠
・相手陣内に入ったら、視野を広く持って大胆にサイドチェンジを使っていこう。
・カウンターで仕掛ける場面では、リスクマネージメントの意識を高く持つようにすること。
・何があっても退くな!アグレッシブに戦い続けよう。
ヴィッセル神戸:ネルシーニョ
[試合後]
鹿島アントラーズ:石井 正忠
天皇杯は負けたら終わりという大会。勝ち進むことができて非常に良かった。内容的には、自分たちからボールを奪いに行く形が前半からうまくいって得点を取ることができた。後半も同じような形で追加点を取っていきたかったが、失点してからは相手に押し込まれてしまった。前からプレスに行くというより、自陣にブロックを敷いて守る形が多くなった。ただ、このような戦い方でもしっかりと勝ち切ることができて、準々決勝に進むことができて良かった。今日も多くのサポーターの方々が神戸に来ていたので、一緒に喜ぶことができて良かった。
Q.リーグ戦で4連敗中だったが、修正した点や良くなった点は?
A.最後の2試合は内容が良かったにもかかわらず、勝ち切れない試合だった。そこをどうにか勝利に結びつけるために、もう一度、自分たちの戦い方をするということを意識して戦った。攻守において連動してやれたと思う。最後の押し込まれる時間帯も、抑えることができた。全体で連動していたということの象徴ではないかと思う。
Q.ファブリシオ選手が2ゴールを挙げたが、評価は?
A.彼は途中からチームに合流したということで、まずは戦術を理解してもらうということがあった。チームの戦術を理解できたことによって出場時間が長くなってきた。彼の特長である、ボールをしっかりと受けること、そしてシュート力。今日はそこが非常に良かったと思う。以前もチャンスがありながらクロスバーに当たるという場面もあった。周囲を活かしつつ、自分の特長も活かすということをうまくやってくれたと思う。
ヴィッセル神戸:ネルシーニョ
前半から、チームとしてはうまく試合に入れたと思う。拮抗した内容になった。チーム全体で試合にうまく入っていった。アクシデントで三原を欠いてからは戦術的なバランスが少し崩れてしまったように思う。セットプレーでの失点も悔しいが、チーム全体としてはスピリットを見せることはできていた。内容を改善するためには、ボールを奪った後のプレーでもう少し判断をして、パスワークで相手を押し込む必要があると思ったので、ハーフタイムに選手たちへ伝えた。後半は相手を押し込む展開になったが、2点を取ることはできなかった。結果には満足していないが、選手たちの戦う姿勢やスピリットというものは出せていたと思う。局面での判断を怖がらず、責任を負うことを避けることもなかった。チームとして、どんな時でも失ってはいけない大事な要素を選手たちが示してくれた。
選手コメント
[試合後]
【ファブリシオ】
次のラウンドに進めたことが一番、嬉しい。チームとして何をすべきなのか再確認して試合に挑んだ。それを表現できたのはチームとして良かった。誰が得点するかは重要ではない。1点目は、このタイミングしかないという形だった。ボールとGKに半分ずつ、頭が当たった。2点目はシュートがたまたま相手に当たり、取れない位置に入った。3、4点目を取れるチャンスもあったが、得点することよりもチームの勝利がうれしい。今後もしっかり決められるように準備していきたい。チームに100パーセント、フィットしているわけではないと思うが、結果が全て。勝てば自分の信用も上がると思う。
【三竿 健斗】
自分が試合に出て勝てたことはすごく良かった。自分が戦わないと、試合に出してもらっている意味がないと思っていた。練習でやっていることを出せた。優磨とは「一緒に絶対に勝とう」と言っていた。(交代になって)本人はすごく悔しいと思う。同い年としても、勝って喜びたいと思っていた。勝てて良かった。
【山本 脩斗】
いつもとは少し違う形で割り切って守備をした。ファブが高い位置でボールを持てば相手にとっては厄介だろうし、彼らしさが出たと思う。チャンピオンシップに向けてしっかりとトレーニングをして、良い準備をしていきたい。
【遠藤 康】
みんなで勝ち取った勝利だと思う。(先制点の場面は)ファブが良い感じでゴール前へ入ってきてくれた。ただ、もっともっとできると思うし、慢心せずにチャンピオンシップに向けてチーム一丸でやっていきたいと思う。
【昌子 源】
神戸が押せ押せの中で1点を返されたが、それを守りきれたのはサポーターのおかげだったので感謝している。相手が勢いづいていたし、2-2になっていたら危なかった。選手が体を投げ出しながら相手の攻撃を防ぐことができたのも、サポーターの声援があったから。サポーターの方々自身が納得した応援ができたのかどうかはわからないけど、選手には響いた。次のチャンピオンシップに向けて、僕らももっと良くなるように、アントラーズファミリーが一つになって戦いたい。
【土居 聖真】
勝てて良かった。自分が途中から出る前から、球際の部分でしっかりと表現できていたと思う。ファウルが多かったのも、気持ちの表れでもあると思う。ここまできたら内容よりも結果が大事。1戦の重み、ワンプレーの重みが増していく。今日は結果につながって良かった。