毎年恒例の元日の天皇杯決勝は前倒しで行われたが、年をまたいでJリーグの動きは進行している。チームはオフに入ろうとも新シーズンへ向けてチーム編成を続けているのだ。
来たる2022年シーズンは、どのような1年になるのか。ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が、いろいろなことが起きた2021年を糧として振り返りつつ、2022年のJ1の行方を占う。
■予想以上のサッカーをした福岡
――上位ではなくとも、2021年に気になったチームはありますか。
大住「アビスパ福岡は褒めたいな。あのクラブもそんなに経営規模が大きくないのにね。長谷部茂利監督は、なかなかに力があると思うよね。筋が通っている。派手なことをやるわけじゃないんだけど、選手たちがそれぞれすごくしっかりプレーするよね」
後藤「あそこまで通用するとは思いませんでした。予想を大外ししました」
大住「個性をうまく組み合わせているけど、8位というのはびっくりだったよね。守備がしっかりしているから残留するだろうと思っていたけど、予想以上のプレーをしていたよ」
後藤「長谷部監督は水戸にいた頃から良いサッカーをしていた。名監督のひとりだよね。強いチームの監督だけじゃなくて、ああいう人にこそ、優秀監督賞をあげてほしい。『この戦力で、よくここまでのチームをつくったな』というのが名監督だよ。もちろん、名選手がたくさんいるチームでそうした選手たちを使いこなすのも名将だけど」
大住「長谷部監督は本当にサッカーの質を変えたよね。選手の給料の総額を勝点で割って、勝点1あたりの金額が一番少ない人に賞をあげたら面白いかもね」
後藤「そうなると、7位になったサガン鳥栖の金明輝監督だよね」
大住「交代することになったけど、彼も本当に良い監督だと思う。鳥栖の選手は、年齢なんて関係ない、っていう顔でサッカーをしている。だから、若くても全然年齢が分からない」
後藤「鳥栖は下部組織が、すごく強い。2020年の年末、U-15が全国優勝した翌日には、クラブユース選手権でU-18が優勝して、毎日鳥栖が優勝しているようだった。地方の大きくないクラブが、良いチームをコンスタントに育て続けていくというのはすごい。2021年の最後もUー15が優勝したでしょ? 一時は経営危機も叫ばれていたのにね」
大住「クラブの育成は人口にも大きく影響されるんだよね。だから東京にあるヴェルディやFC東京はかなり有利な状況にある。以前にベルギーの小さいクラブに行って話を聞いたことがある。運営が大変だというから、育成を頑張ればいいじゃないと言ったら、良い選手は大都市のビッグクラブに持っていかれちゃうんだって。鳥栖は福岡が隣にあるから、本来すごく難しい状況にある。本当によくやっている」
――Jリーグでも移籍金が発生すれば、まだ助かるのですが、そういうケースばかりではないようです。
大住「聞いたところによると、クラブはどこもコロナ禍で赤字になって、複数年契約を結ぶことはほとんどないらしいよ。ただし、この1、2年の経験で、新しく海外から選手を連れてくるのは非常にリスクが高いと分かっているから、このオフは国内の移籍が激しくなるんじゃないの」
後藤「大学の試合を見に行くとスカウトたちの隣の席になることがあって、彼らの話を聞くことがあるけど、『外国人選手を取るのは怖い』って言っている。ひどい目にあったチームが随分あるものね」
大住「鹿島アントラーズなんて、新監督は来日できるのか、と思っちゃうよね」
――その鹿島のレネ・ヴァイラー新監督は、クラブ初の欧州からやって来る監督です。この変化をどう見ますか。
大住「鹿島はJリーグで唯一、ひとつの哲学の中でサッカーをやり続けてきたクラブなんだけど、それを変えようとしている。その変化が成功するのかどうかは分からない。もしかしたら、しぼんでしまうかもしれない」
後藤「2021年は相馬直樹監督がチーム立て直したのに、どうして替えなければいけないのかな。鹿島では以前もOBの大岩剛さんが良いサッカーをしていた。タイトルを取れない年があっても仕方ないし、出だしが悪かったのにあそこまで立て直したのは大した手腕だと思うけど。フットボールダイレクターの鈴木満さんが退任したし、鹿島もこれから変わっていくのでしょうね」
大住「最初にザーゴ監督でやろうとして失敗したのはクラブであって、相馬監督じゃないからね」
◆「優秀監督賞をあげたいアビスパ福岡とサガン鳥栖」「鹿島アントラーズは変化の時代に」【Jリーグ、年末年始の大激論2021/2022年】(4)(サッカー批評)