明治安田J1 第26節
後半アディショナルタイム、優磨が劇的決勝弾!鹿島が湘南を撃破、公式戦2連勝!
9月唯一のリーグ戦ホームゲームで、鹿島が意地の勝利を収めた。J1第26節、湘南ベルマーレ戦。スコアレスで迎えた49分に土居のヘディングシュートで先制すると、同点に追い付かれて迎えた後半アディショナルタイム、西のクロスから鈴木が気迫の決勝ゴールを突き刺した。2-1。リーグ戦では3試合ぶりとなる勝利を収めた。
4日前、鹿島は意地と気迫をみなぎらせてノックアウトマッチを制した。ルヴァンカップ プライムステージ準々決勝第2戦。味の素スタジアムで川崎Fと激突し、3-1と難敵を撃破した。聖地での“前半90分”を1-1で終え、中3日で迎えた大一番。「チャンスで仕留めれば、準決勝へ行ける」と静かに決意を刻んでいた山本が、前半のうちにアウェイゴールを2つ決めると、1点を返された後の72分にはセルジーニョが値千金の3点目を記録した。2試合合計、4-2。3年ぶりのベスト4進出を決め、聖杯奪回への道のりを一歩進んだ。
川崎Fとの180分、特に第1戦の内容は決して納得できるものではなかった。それでも、中3日の準備期間でしっかりと意思統一を図り、チーム一丸で勝利へと到達した事実に何よりも価値がある。永木は「これを続けていかないと」と気を引き締めていた。町田もまた「今日のような姿勢を全員が見せていかないといけない」と、進むべき道のりを照らし出していた。
息つく間もなく、次なる戦いが待ち受けている。つかの間の充電期間を経て、チームは火曜日にトレーニングを再開。穏やかな天候が続いたクラブハウスで、選手たちは集中力を研ぎ澄ましていった。日本代表の一員として新たなキャップを刻んだ三竿健斗、そして韓国代表での活動を終えたチョン スンヒョンも鹿嶋へ帰還。チームに刺激が注入され、グラウンドでの切磋琢磨は熱を帯びていく。
試合前日、指揮官は紅白戦を敢行した。タイトルマッチを控えたかのような緊迫感が漂い、激しいマッチアップが繰り返されていく。「選手たちは高い意識を持っていてくれている」と、大岩監督は改めて信頼を語っていた。そして永木は「チームが変わったかどうかは、この試合が重要」と、聖地での90分が計り知れない重要性を持つことを強調していた。
川崎F戦から中4日で迎えるホームゲームへ、大岩監督は6名もの先発変更を施した。ゴールマウスにクォン スンテを復帰させ、最終ラインには西とスンヒョン、安西を起用。ボランチの一角には健斗、そして前線には土居を指名した。その他、センターバックはスンヒョンとともに町田が務め、ミドルゾーンには古巣との対峙に臨む永木、2列目は遠藤と安部、そして前線にはセルジーニョが入る。ベンチにはGKの曽ケ端、内田、山本、犬飼、レオ シルバ、鈴木、金森が座る。大岩監督は「相手の特長と分析を踏まえて、自分たちがやるべきことを整理した」と、信頼とともに選手たちを送り出した。
今月唯一のリーグ戦ホームゲーム。戦いの時を待つ聖地は、秋の深まりを感じさせる涼しさに恵まれた。川崎Fとの対峙で示してみせた意地と気迫を確固たる自信へと変えていくために、重要な意味を持つ90分。キックオフが近づくにつれ、高揚感と緊張感がスタジアムを包んでいく。ウォーミングアップへと姿を現した選手たちへ、大音量のチームコールが注がれた。レジェンド・ジョルジーニョのチャントが継承され、セルジーニョを呼ぶ声が聖地に響き渡っていた。
19時3分、戦いの火蓋が切って落とされた。鹿島は立ち上がりからアグレッシブな姿勢を示し、2分には土居と安部が立て続けにミドルシュート。早々から得点への意欲を見せる。4分には左サイドからクロスを上げられてフリーでヘディングシュートを許してしまったものの、枠を逸れて事なきを得た。序盤から激しいボディコンタクトの応酬となり、攻守の切り替えが非常に速い展開となった。
最初の決定機は8分に生まれた。遠藤が中盤右サイドから浮き球を供給。敵陣左サイドのスペースへ飛び出した土居が深い位置まで持ち込んで折り返すと、待っていたのはセルジーニョだった。ペナルティーエリア左手前でトラップすると、対面する相手のタイミングを外して左足を一閃。しかし、グラウンダーのシュートはわずかに枠の右へ逸れてしまった。鹿島は以後もボールポゼッション率を高め、敵陣でのプレータイムを増やしていく。12分からは3プレー連続で右CKを得たものの、いずれも結実しなかった。
スコアレスのまま、15分を経過。すると次第に、主導権は湘南へと移ってしまう。鹿島は前線で起点を作れず、セカンドボールの攻防でも相手を上回ることができなかった。自陣へ押し込まれる時間が続き、遠藤と安部の両サイドハーフ、西と安西の両サイドバックもゴールライン際へ戻って守備をするプレーが増えていった。
鹿島はリズムを取り戻そうと苦心したが、高い位置からプレスを仕掛けてきた湘南に手を焼いた。最終ラインでのパスミスも多く、町田は「ビルドアップがうまくいかなかったので、修正していきたい」と回想。結果的に、ハーフタイムを迎えるまで主導権を取り戻すことはできなかった。土居は「前半の半ばから流れが良くなかった」と反省の弁。36分には左サイド深くからクロスを入れられ、こぼれ球を拾われてシュートを打たれる。ペナルティーエリア左角からの一撃はゴール前に詰めた選手にも反応されたが、枠を逸れていった。0-0。停滞感の漂う45分を経て、スコアレスでハーフタイムへ突入した。
アントラーズレッドが待つゴールへ。勝負の後半、鹿島は右サイドの鮮やかなパスワークからチャンスを作り出す。48分、ペナルティーエリア右外で遠藤がボールを持つと、西が瞬時の加速で背後へ。スルーパスを受けた背番号22が鋭い切り返しで進路を変更すると、相手のハンドでFKを獲得した。立ち上がりに得たセットプレーのチャンス。歓喜の瞬間は、数十秒後に生まれた。
遠藤のキックはニアサイドでの混戦から、ゴール前へ浮き上がる。密集地帯での競り合いから、こぼれ球が西の足下へ。ゴールエリア右側でボールを確保した背番号22、そのアイデアは緩やかなクロスだった。湘南の守備網を越えたボールが、ファーサイドへ。飛び込んだのは土居だった。「押し込むだけだった」と振り返るヘディングシュートがゴールネットを揺らす。1-0。土居の今季5得点目で、鹿島が均衡を破ってみせた。
リードを奪った鹿島は攻勢をかける。53分には両サイドを広く使った攻撃から、位置を上げていた町田がこぼれ球を確保。思い切りよく放った強烈なシュートはしかし、枠の右へ逸れてしまった。61分にも右サイドのスペースを破り、遠藤が右足でグラウンダーのラストパス。土居が飛び込んだが、わずかに届かずにクリアされてしまった。
しかし、盤石の試合運びをすることはできなかった。選手交代で打開を図った湘南に押し込まれ、劣勢を強いられてしまう。そして66分、左サイド深くへパスを通されると、ファーサイドへ飛んだクロスから梅崎にヘディングシュートを決められてしまった。1-1。残りは25分、底力を示して踏みとどまるか、後退していくのか。真価を問われる戦いとなった。
大岩監督は失点直後に鈴木を投入。78分にはレオをミドルゾーンに送り出し、活力と推進力を注入した。次第にオープンな打ち合いへ推移する中、80分には鈴木のヘディングから土居が詰めるも及ばない。82分には永木の右CKから西が頭で合わせたものの、枠を逸れていった。85分には山本がピッチに立ち、安西が1列前へ。配置変更を施しながら、必死の攻撃でゴールを目指した。
果たして、歓喜は鹿島のものだった。アディショナルタイム1分、中盤左サイドのスローインから土居が右サイドへ展開。走り込んだ西がピンポイントのクロスを上げると、相手DFの頭上を越えたボールに背番号9が飛び込む。強烈なヘディングシュートを、相手GKは見送ることしかできなかった。2-1。鈴木が劇的な決勝ゴールを決め、鹿島が勝ち点3にたどり着いた。
2-1。背番号12は勝利を歌い上げ、そして敵地へ向かう選手たちの背中に情熱を注ぎこんだ。次戦は4日後、アジアでの戦いだ。18日のACL準々決勝第2戦、天津権健とのアウェイゲーム。台風接近のマカオへ移動し、ベスト4進出を懸けた大一番へ臨む。
【この試合のトピックス】
・今季J1での湘南戦は1勝1敗だった。J1では通算26回目の対戦で、17勝目(1分8敗)を挙げた。
・土居が今季のJ1で5得点目を挙げた。
・鈴木が今季のJ1で9得点目を挙げた。2016年の8得点を上回り、自己記録を更新した。
・町田が8月1日の第19節FC東京戦以来、J1では7試合ぶりに先発出場を果たした。
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・相手の2列目の動きに対し、しっかりマークにつくこと。
・攻撃の時、前線の選手は一人一人の距離感をもっと近くしよう。
・サイドからのクロスに対し、しっかりと中に人数をかけよう。
湘南ベルマーレ:チョウ キジェ
・ゲームコントロールできている。ラインを下げずにコンパクトに保とう。
・前線の選手はうまくポジションを取って、後ろからボールを引き出そう。
・シュートは思い切り、力強く打とう。
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
ゲームの入り方は、注意して入った。湘南のアグレッシブな姿勢は見習うべきところがある。こちらも、そこで負けないような立ち上がりをしようと話していた。最後の最後まで、そこは非常に意識できていた。サポーターのあと押しもあって、勝ち切ることができた。この勢いを次の試合につなげていきたい。
Q. 後半、サイド攻撃がうまくいった要因、狙いはどこにあったのか?
A. 前半は当然圧力があった。また、日ごろコンビを組むことがない選手たちがいて、最後の精度のところでコンビネーションがあわない場面が何度かあった。しかし、前に行く姿勢、背後を取る姿勢はあった。後半は相手がサイドを強化してきたので、こちらもその後ろを狙おうと選手に伝え、選手交代をした。そこを西、永木、安西がしっかり意識してやってくれたので、最後のゴールにつながったと思う。選手のパフォーマンスを評価したい。
Q. 鈴木選手をピッチに送り出したとき、どんな声をかけたか?
A. 彼をピッチへ送り出す直前に同点に追いつかれてしまったので、少しプランが崩れたが、彼を送り出すときには「ゴールを取るのはお前だぞ」と言って送り出した。ああいう場面を周りの選手たちが作ったことをまず評価したい。そこで決め切った優磨のいいところが出たと思う。
Q. 次のACLに向けて、ポイントは?
A. 上海上港戦、リードして第2戦に臨んだが、アウェイで非常に苦しんだ経験がある。リードしていても、試合の入り方が重要。十分注意して入りたい。リードしているが0-0の状況で戦うという気持ちで入るよう、準備していきたい。
湘南ベルマーレ:チョウ キジェ
金曜日の夜にもかかわらず湘南から多くのサポーターが来てくれた。勝ち点1ではなく3を狙いにいったがゼロに終わり、申し訳ない気持ちだ。しかし、選手たちは前半から自分たちのよさを出すと同時に、アントラーズのよさを少し消しながら、たくましく戦ってくれた。後半の立ち上がりと最後の時間に点を取るところが、アントラーズの強さ。ホームゲームでは逆に我々がそこで点を取って勝ったが、そんなに甘くはないと感じた。自分たちの精度を高めていかないと、こういう試合を勝っていけない。前向きにとらえ、次のゲームに向かいたい。
選手コメント
[試合後]
【鈴木 優磨】
最近は点を取れていなかったので、取ってやろうと思っていた。監督からも「追加点を」と言われていた。大伍さんには、ピッチに入った時に「(クロスを)上げてくれ」と話していた。決めることができてよかった。
【土居 聖真】
(ゴールは)押し込んだだけ。試合の入りは良かったけど、前半の半分くらいから良くなかった。相手の時間帯で、我慢強く戦うということを共有できていた。今まではそれが足りなかった。みんなで意思統一して戦うことができた結果だと思う。
【西 大伍】
(クロスは)「だいたい、あのあたりへ」という感じ。優磨があのように後ろから入ってきてくれると、点ではなくて線で合わせることができる。今のチームで、全てを圧倒して勝つのは難しいと思っている。今日は我慢するところをみんなで我慢できたし、決定機はそこまで作られなかった。
【安部 裕葵】
自分は得点には関わっていないけど、そういう時こそ守備の面でどのようなプレーをしているかで評価されると思う。そういう意味では、やることは最低限できたと思う。このような終わり方ができて、ACLに向けていい雰囲気になっていくと思う。
【安西 幸輝】
攻撃に行きたかったけど、前半に押し込まれることが多かった。もう少し前でプレーしたかった。勝ててよかった。
【町田 浩樹】
課題はたくさんあるけど、勝ったことが一番の収穫だと思う。走り負けたり、球際で負けたりしないということを言い合っていた。声を掛け合ってプレーできていたので、それはよかったと思う。勝てたことがよかった。ACLにもつながると思う。
◆2018明治安田生命J1リーグ 第26節(オフィシャル)