レアル戦になかった10番の姿 クラブから公式な復帰時期は今も明確にされず
ヘタフェは14日に本拠地コリセウム・アルフォンソ・ペレスで行われたリーガ第8節レアル・マドリード戦で、試合終盤の85分にポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドにゴールを許し、1-2と敗れた。
この試合に左足中足骨亀裂骨折で戦列を離れているヘタフェの“背番号10”、日本代表MF柴崎岳の姿はなかった。レアル・マドリードは柴崎にとって、鹿島アントラーズの一員として出場した昨年12月のFIFAクラブワールドカップ決勝で対戦し2得点を決め(試合は2-4で敗戦)、自身の欧州移籍を後押しした相手。日本だけでなくスペインの一部のサッカーファンも、リーガの日程が決まった時に赤丸を付けて楽しみにしていたカードだった。
柴崎の怪我に関してはクラブから公式な発表があったものの、復帰に関しては選手の回復具合によるとするだけであり、具体的な復帰時期に関しては明確にされていない。レアル・マドリード戦前日の記者会見でヘタフェのホセ・ボルダラス監督は、日本人MFについて「1カ月半から2カ月、戦力として起用することはできない」とコメントしていたが、その数週間前のビジャレアル戦では「翌週からグラウンドで練習を始めることができる」としていた。
また、あるクラブ関係者は「復帰に関しては医者の判断と選手本人の回復具合による。1カ月ぐらいできっと戻ってくるだろう」と話しており、人物や時期によって柴崎の負傷に関する見解は全く異なっており、真相は闇の中だ。早ければ11月中に復帰する可能性もありそうだが、遅ければ12月、もしくは年明け以降とファンはしばらく気を揉む日々を過ごすことになりそうだ。
柴崎の代役がアピール、昨季主力MFも復帰
だが、この状況に誰よりも一番気を揉んでいるのは柴崎本人だろう。
「ビッグクラブが怪我人の出たことを嘆くのであれば、自分たちはなおさらだ。ガクの不在はチームにとって大きな痛手だ」と、ボルダラス監督はチームの攻撃にアクセントを加えられる貴重な戦力の戦線離脱を嘆いてはいる。だが、柴崎の代わりに出場した選手たちが結果を残していることへの満足感も示しているのだ。
特にスペイン人FWアンヘル・ロドリゲスは、敗戦濃厚だった第5節セルタ戦(1-1)の後半41分に同点弾を決めたほか、4-0と大勝した第6節のビジャレアル戦でも2得点と、ここまで196分間の出場で3ゴールと、定位置獲得に向けて大きくアピールしている。
また、スペイン人MFアルバロ・ヒメネスとMFフランシスコ・ポルティージョもそれぞれ1アシストと、中盤のライバルたちも数字に残る結果を出しており、チームに柴崎不在の影響は今のところ感じられない。
そして、左肩の負傷で戦列を離れていた昨シーズンの主力であり、ボルダラス監督の信頼厚いMFダニ・パチェコがグラウンドでの練習を今週から開始。主戦場は左サイドと、高めのトップ下でプレーしていた柴崎とは被っていないが、パチェコが左サイドに入ることで、不動の存在となっているセネガル人FWアマト・エンディアイエが右サイドに入り、中盤ならどこでもプレーできるモロッコ代表MFファイサル・ファジルが中央に流れる可能性も生まれてくる。
ボルダラス監督のここまでの選手起用を見ると、試合ごとにメンバーを大きく入れ替えることはない監督だ。選手に出場時間を分配するのではなく、固定したメンバーで戦っていく監督であり、柴崎が怪我から復帰した時に、定位置がすぐさま与えられる保証はない。
ともかく、今は戦列復帰に向けて焦ることなく怪我を完治させることが柴崎にとって一番重要だ。選手にとってチームを長期離脱することは、心中穏やかでいられないことだろうが、昨シーズンにテネリフェに加入した際も今回と同じ、もしくはそれ以上の逆境を乗り越えてきている。
何より、このタイミングで保存療法ではなく手術に踏み切ったのは、ヘタフェでの戦いだけでなく、シーズン終了後のロシア・ワールドカップ出場も見据えているからこその決断だろう。その思いを果たすためにも、戦列復帰後に待つ勝負の時に向けて、柴崎は今、静かに牙を研いでいるはずだ。
【了】
山本孔一●文 text by Koichi Yamamoto
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images
現地で意見が割れるヘタフェ柴崎の「復帰時期」 カムバック後に待ち構えるものとは?