◆国際親善試合 日本代表6ー0エルサルバドル代表(15日・豊田スタジアム、観衆3万7403人)
日本代表はエルサルバドル代表に6―0で大勝した。3トップ中央で先発したFW上田綺世(24)=サークル・ブリュージュ=が自ら獲得したPKを沈め、代表初ゴールをマーク。代表通算15戦目で生まれた待望の初得点の背景と、前線のタレントを躍動させた4―3―3の攻撃的布陣を選択した森保一監督(54)の判断を、各担当記者がコラムで深掘りする。上田とポジションを争うFW古橋亨梧(28)=セルティック=も途中出場で代表4点目を挙げてアピールに成功した。
眠れる大砲が、ついに目を覚ました。通算15試合目、出場時間にして721分目。上田がついにネットを揺らした。1―0の開始3分、猛プレスで相手DFからボールをかっさらう。背後から倒されてPKを獲得し、相手DFは退場に。当たり前のようにPKスポットに立ち、ゴール右に強いシュートを蹴り込んだ。待望の代表初ゴール。「ホッとしました」。喜びをかみ締めた。
そのシュート力は「音が違う」(鹿島関係者)と言われ、代表の公開練習時には、カタールW杯の正守護神・権田修一(清水)が報道陣に「綺世のシュートは本当に危ないんで。(当たらないように)気をつけてください」と呼び掛けるほど。日本人離れした跳躍力を持ち、スピードも兼ね備える。それでも、代表でのゴールは遠かった。
加入1年目で22点を挙げたベルギーでのシーズン中、“覚醒”の気付きがあった。加入当初から試合に使われるも、パスが回ってこない。練習でどれだけ強烈なシュートを放ち、味方に強く要求しても、信頼が得られない。ターゲット役になれず、MF起用された試合もあった。
考えを改めた。チームのために走る。前線から追い回す。苦手分野だった守備、献身性に注力した。すると、面白いようにパスが来るようになった。信頼をたぐり寄せ、チームのPKキッカーを任されるほどまでになった。その姿勢は代表でも発揮され、「キックオフから圧力をかける狙いだった」と猛プレスが代表初ゴールにもつながった。味方からのパスが増えたのも必然だ。
試合後、上田の一言が報道陣をあ然とさせた。「倒れていて見ていなかった。ハーフタイムに気付きました」。PKの場面で相手DFが退場したことに気付かないまま、ハーフタイムまでプレーしていたという。類いまれなる能力を持ち、ちょっぴり天然なストライカーが、飛躍の時を迎えようとしている。(岡島 智哉)
◆今季の上田 ベルギー1年目で全40試合出場で22得点の成績を残し、中位プレーオフ2位(6位相当)に貢献した。開幕戦からFWで先発フル出場すると、6試合目のワーレゲム戦で待望の初ゴール。第24節のスタンダール戦で10点目、中位プレーオフのウェステルロー戦でPKで2得点を決めて、20ゴールの大台に乗せた。シーズンを通して先発で起用され、ベンチスタートは3試合だけ。得点ランキング2位となる1シーズン22得点は、FW鈴木優磨(17得点)を抜き、同リーグ日本人最多記録となった。
◆上田 綺世(うえだ・あやせ)1998年8月28日、茨城・水戸市生まれ。24歳。鹿島ノルテジュニアユース、鹿島学園高を経て2017年に法大進学。3年時の19年、南米選手権でA代表デビュー。同年夏、21年から加入内定の鹿島へ前倒しで加入。22年7月、ベルギー1部サークル・ブリュージュへ完全移籍。J1通算86試合38得点。今季40試合22得点。代表通算15試合1得点。182センチ、76キロ。右利き。
◆上田綺世、15戦目代表1号「ホッとした」 守備と献身 ベルギーで覚醒の気付き(報知)