http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00171546.html4月26日(土)J1 第9節 広島 vs 鹿島(19:00KICK OFF/Eスタ)
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F東京とホームで闘い、北京遠征に出て、アウェイの新潟。そしてホームに戻ってACLのグループリーグ最終節を闘い、土曜日には鹿島戦。長距離移動と中2日(F東京→北京は中3日だが、1日は長距離移動日)が続くこの日程は、ある広島担当記者が「労働基準法的にどうなんですか」と聞いてくるほどの厳しさだ。Jでは優勝候補と戦い、ACLは決勝トーナメントを争う。常に緊迫感に満ちた試合を繰り返し、緊張から緩和へと向かう余裕もない。
実際、常に同じ選手で闘うことの難しさは、新潟戦での広島のパフォーマンスが明白に証明している。水曜日に行われたACL最終節、森保一監督は新潟戦の先発から5人を入れ替えた。しかも、エース・佐藤寿人や攻守の中心である森崎和幸をベンチからも外す思い切った処置。「批判は覚悟の上」と指揮官は決断を振り返るが、もし結果がついてこなかったら「ACL軽視」と指弾されたはずである。
今季、広島はJとACLで常に、メンバーを大きく変えて闘っている。最終ラインは水本裕貴・千葉和彦・塩谷司に加え、ファン ソッコも合わせた4人で連戦を乗り切った。もっとも運動量を必要とするワイドは両サイドで5人。1トップ2シャドーは先発で起用されてきた4人に加えて森崎浩司が復帰し、浅野拓磨も継続的に使われている。そしてボランチは青山敏弘こそ固定だが、森崎和と柴?晃誠をローテーションで起用。この采配がコンディションをギリギリで維持し、それがACLのグループリーグ突破につながった。「多くの選手を起用することでチームの選手層が厚くなった」と、メディアも高く評価。もちろん、それぞれのクオリティや個性の違いはあるが、誰が出場してもチームとしてのコンセプトを表現できるようになったことが、ここまでの結果につながっている。
実際、明日の試合も誰が起用されるのか、わからない。佐藤や森崎和、さらに千葉ら水曜日の試合を回避できた選手たちは、満を持して登場してくるだろうが、たとえば青山や石原直樹、高萩洋次郎や塩谷といった北京からセントラルコーストまでの3試合全てに出場している選手たちは、果たしてどうなのか。アウェイでの鳥栖戦という厳しい戦いが待っていることを考えると、彼らの起用法に指揮官が慎重になっても不思議ではない。
一方、この1週間を広島戦の準備に使うことができた鹿島も、CBの青木剛が出場停止という悩みを抱えている。かわりに入るのは、実績のある山村和也か、それとも19歳の植田直通か。ただ、深謀遠慮なトニーニョ セレーゾ監督のことである。誰が入ってもチームとしての守備が機能するよう、細心の準備を施しているだろう。
今の鹿島は新潟・神戸と連敗中。この2試合で5失点と、鹿島らしくない戦績である。アウェイで守備の堅い広島に勝利するためにも、まずは失点しないことが絶対条件。この準備期間でチームとしての組織的守備の確認を行っただろうことは、想像に難くない。ただ、日本代表候補の昌子源とU-21日本代表の植田がCBコンビを組んだとすれば、肉体の強さで圧倒できる可能性もある反面、狡猾な広島の1トップ2シャドーに若いCBが振り回される可能性もゼロではない。そこは、周囲の経験ある選手たちがしっかりとサポートしなければならないはずだ。
一方、広島とすれば、やはり柴崎岳や小笠原満男のクオリティをどう封じ込めるかが勝利の鍵になる。もちろん、ダヴィという巨大な存在もあるが、北京国安のゲロンとの対戦経験がダヴィ対策の一環として有効だろう。だが、柴崎や小笠原のような攻撃の質の高いアイディアのあるボランチが2枚もそろっているチームは、やはり特別だ。彼らから出る1本のパスで局面はガラリと変わるし、ポゼッションからスイッチを入れる役割も果たす。もし、二人が自在にパスを出し入れする状況になってしまうと、遠藤康や土居聖真ら若いアタッカーたちが躍動し、広島は窮地に追い込まれる。「パスの出所を抑えろ」は守備の鉄則だが、鹿島に対しては特にその意識を強く持つ必要がある。
「実は今季の監督会議で、トニーニョ セレーゾ監督から『おまえたちには、絶対に負けない』と本気で言われたんです」と森保監督は振りかえる。ブラジル史上に残る「黄金の四人」の一人であり、鹿島に三冠をもたらした名監督にとって、昨年最終節の広島戦で完敗、ホームで優勝の歓喜を見せつけられた光景は、今も忘れられないのだろう。そんな指揮官の思いがそのまま鹿島の選手に伝播し、強い気持ちで広島に乗り込んでくることは疑いない。
一方の森保一にとって敵将はかつて同じボランチとして憧れ続けた存在。その偉大な男に強烈なメッセージをぶつけられた喜びが闘志と変換。勝利への希求は大きく燃えている。
闘志と闘志、クオリティとクオリティが激しくぶつかりあうこの対決。面白くならないはずがない。
以上
2014.04.25 Reported by 中野和也