明治安田J1第33節、アントラーズは神戸と対戦した。前半は神戸に押し込まれる展開となり、14分、29分と前半早々に2失点を喫してしまう。それでも、40分に土居が追撃の狼煙を上げるゴールを決めて、アントラーズが息を吹き返す。後半に入っても、攻勢を強めるアントラーズだったが、得点を奪えない時間が続くと、88分にカウンターから痛恨の3失点目を喫してしまう。最後までゴールを狙い続けたアントラーズだったが、ゴールを奪うことが出来ず、今季のリーグ戦ホーム最終節は1-3で敗戦という結果になった。
▼▼DAZN MATCH HIGHLIGHTS▼▼
1週間前のアウェイ広島戦は、失意のスコアレスドローに終わった。「90分を通して、我々が勝ち切らないといけないゲームだった。最後にリスクを冒して得点を狙いに行ったが、ゴールを奪えずに終わり、悔しい気持ちでいっぱい。選手たちには次の試合に向けて準備しようと話した」。指揮官は悔しさを滲ませながらも、次の試合へ意識を切り替える重要性を説いた。
チームは1日のオフで気持ちを切り替えて、再びクラブハウスに集結した。神戸への対策を入念に確認し、緊張感を保ちながら、決戦に向けて準備を進めていった。
そして、試合当日を迎えた。キックオフ約2時間前に先発メンバーが発表される。GKは守護神スンテ、最終ラインは右から内田、スンヒョン、犬飼、町田が入った。ボランチは永木とレオがコンビを組み、サイドハーフは右にセルジーニョ、左に名古が務める。前線は、土居と伊藤が2トップを組んだ。ベンチには、曽ケ端、伊東、レアンドロ、遠藤、白崎、相馬、上田が座る。
一方、神戸は主力選手をメンバーから外し、イニエスタ、ビジャ、フェルマーレンは、ベンチ外、セルジ サンペール、古橋もベンチからのスタートとなった。
14時03分、戦いの火蓋が切られた。
立ち上がりから積極的に攻撃を仕掛けたのはアントラーズだった。右サイドから神戸を押し込み、立て続けにチャンスをつくっていく。
押し気味で試合を進めていたアントラーズだったが、14分に一瞬の隙を突かれてしまう。大崎からの縦パスがペナルティエリア内の安井に入る。安井はコントロール出来なかったものの、守備陣に連係ミスが生まれ、最後は藤本に右足で流し込まれてしまった。
想定外の失点を喫したアントラーズは、立て直すことが出来ない。29分、右サイドを少ないタッチで崩されると、藤本からのパスを郷家にダイレクトで決められ、痛恨の2失点目を喫してしまった。
2点のビハインドを追う展開となったアントラーズは、なかなかリズムを掴めない。前線までパスを繋ぐことが出来ず、攻撃が停滞した。神戸にほとんどボールを支配され、苦しい展開が続く。
だが、苦しい試合展開になっても、スタンドからの大声援は止まなかった。サポーターの後押しを受けて、チームは再び息を吹き返す。声援を力に変えて、徐々に攻撃を仕掛けられるようになっていった。
すると40分、セットプレーのこぼれ球を拾った土居が、ペナルティエリア手前から左足を振り抜く。シュートはゴールの左隅に飛び、ゴールネットを揺らした。1点差に迫るゴールが決まった。
前半はこのまま1-2のビハインドで終了した。
後半も、前半終盤に勢い付いたアントラーズが試合の主導権を握り、怒涛の攻撃を仕掛けていく。
まずは56分、左サイドから町田が絶妙なクロスを入れると、伊藤がダイビングヘッドで合わせる。だが、これは惜しくも枠を外れて、得点には至らなかった。
積極的に攻撃を仕掛けて神戸を圧倒していたアントラーズだが、61分にカウンターからピンチを迎える。山口からのスルーパスでポドルスキに抜け出され、数的不利の状況をつくられてしまう。決定的な場面となったが、ここはカバーに入った犬飼が粘り強い対応でボールを奪い、チームの危機を救った。
得点が欲しいアントラーズは、63分に2人同時に選手交代を行う。内田と伊藤に代わって、上田とレアンドロがピッチへ送られた。
アントラーズは70分に右サイドでフリーキックを獲得した。キッカーの永木からのボールに町田が高い打点で合わせ、ゴールを狙う。だが、これは枠を捉えることが出来ない。
74分、アントラーズは最後の交代カードを切る。疲労のみえた名古に代わり、白崎がピッチへ入った。
すると76分、アントラーズに再びチャンスが訪れる。右サイドから永木がクロスを上げると、ペナルティエリア内で途中出場のレアンドロがバイシクルシュートする。ボールは際どいコースに飛んだが、惜しくも枠の左へと外れた。
時間の経過とともに、試合はオープンな展開となっていった。互いにゴール前まで迫る場面が増える。
すると、88分にアントラーズはカウンターを受けてしまう。前がかりになった右サイドを崩され、ポドルスキのラストパスを小川に決められてしまった。悔しい3失点目を喫した。
最後までゴールを狙い続けたアントラーズだったが、神戸の固い守備をこじ開けられず、このまま1-3で試合終了のホイッスルを聞いた。
試合終了後には今季リーグ戦最終節の挨拶が行われた。今節の敗戦でリーグ戦優勝の可能性はなくなったが、最終節のアウェイ名古屋戦と天皇杯が残っている。選手を代表した挨拶したキャプテンの内田は「天皇杯は絶対に獲る」と次の戦いに目を向けた。ここから這い上がる必要がある。悔しさを糧に、これからも最善の準備を進めていく。
【この試合のトピックス】
・レアンドロがJ1通算50試合出場
入場者数 34,312人
天候 晴、無風 気温 9.9℃ / 湿度 41.0%
ピッチ 全面良芝、乾燥
主審 村上 伸次
副審 山際 将史 赤阪 修
第4の審判員 中村 太
監督コメント
ハーフタイム
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・守備の時、プレスをかけるタイミング、全体の距離感にもっと意識を配ること。
・ボールを大切にして、シンプルに味方を使っていこう。
・もう一度冷静になり、後半開始から全員で戦おう!
ヴィッセル神戸:トルステン フィンク
・チームとしていい前半だった。
・数的優位の場面を作って、ボールをつないでいこう。
・守備も攻撃も前半と同じようにプレーしていこう。
試合後
鹿島アントラーズ:大岩 剛
今ホーム最終節ということで、たくさんのサポーターが来てくれたが、特に前半は悔いの残る不甲斐ない結果となってしまった。1点を返して勢いづいたが、そこですこし前がかりになってしまい、追加点を与えてしまった。そこは、非常に反省している。サポーターの皆さんには、本当に申し訳ない気持ちでいるし、当然、責任を痛感している。残り1試合となったリーグ戦をしっかりと戦う。そして、我々にはまだ天皇杯が残っている。まずは、しっかりと次のリーグ最終戦に気持ちを持っていきたい。
Q.ここ数試合のゴール数が少ないが、その原因は?
A.チームとして、攻撃の形はシーズン通してやってきている。そのプラスアルファを選手たちに落とし込んでいたが、得点を取れないという意識の中で、パスやタイミングが合わないということが少しずつ増えていってしまったと思う。それは、自分の力不足だと感じているし。ただ、選手たちがアクションを起こそうとしてくれている。もっと、コンビネーションの質やシュートの質を上げて、得点を奪うための道筋を作ってあげていきたい。
Q.内田選手の途中交代の理由と内田選手に期待していることは?
A.90分の中でサイドバックのポジションを変えるということは、決して望んでいない。ただ、彼の落ち着きや組み立て、フィードの質の部分は他の選手にないものを持っている。総合的に見て、彼を起用している。後半になって少し推進力がなくなってきた時に、他の選手を入れることで、サイドの優位性を出したいという考えのもとで選手を送り込んでいる。彼だけではなく、他のポジションでもそのような意図で交代カードを使っていきたいと思っている。
Q.優勝に手が届かなかった理由は?
A.リーグ戦は長丁場であるし、その中で、さまざまなことが起こり、その対処をしていき、前進をしていく。リーグ戦は、その積み重ねである。結果論になってしまうが、最後に得点を奪うというところが、この数試合勝ち切れていない原因だと思う。監督としての責任を痛感している。ただ、選手たちは非常に良くやってくれている。まだ残りの試合もある。試合数が多い中で、全員で次のゲームに向かっていくというスタイルで我々はやってきている。しっかりと次の試合も全員が一体となって向かっていくというサイクルを続けていく。
ヴィッセル神戸:トルステン フィンク
このチームは、ピッチにいる11人だけでなく、全員がこの1年間いいトレーニングをしてくれた。現段階ではリーグ残留を決めていたので、ここまでトレーニングを頑張ってきてくれた選手たちにもチャンスを与えたいという気持ちがあった。
選手コメント
試合前
【内田 篤人】
神戸戦に向けて、自分たちはしっかり準備をしてきた。辛抱強く、吹っ切って戦っていくしかない。ここ数試合は辛抱強く戦うことはできていると思う。しっかりと準備して戦っていく。
【永木 亮太】
前線から守備をしていく時はみんなが連動していかないといけない。そして、プレスをかけに行った選手との距離感をコンパクトにしなければいけない。そこでスペースを空けてしまうと、そこを突いてくる選手が神戸にはいる。なので、守備をするうえでコンパクトさは大事になってくると思う。そこは意識してやっていきたい。
【土居 聖真】
チームの雰囲気は、引き締まっていると思う。神戸戦は、ミスを少なくして攻めていきたい。間延びせずに、フォワードと最終ラインの距離をいい距離感で保つということは大前提になってくる。そこの距離が開いてしまうと相手にスペースを使われ、いいように攻撃されてしまう。そこは注意してやっていきたい。
【犬飼 智也】
自分たちはやるしかないし、勝つしかない。神戸は個々の能力が高い選手が揃っている。ボールを奪いに行く場面もあるし、引いて守る場面もあると思う。チームとして奪いに行くところと行かないところの判断は、自分発信でやっていきたい。
【名古 新太郎】
勝たなければいけないという大事な試合。それは全員が分かっている。まずはしっかりと勝利出来るようにいい準備をしていきたい。個人的にはいつ試合に出てもいいパフォーマンスができるように準備ができている。強い気持ちをもって試合に臨みたい。
【町田 浩樹】
勝ちにいかないといけない状況なので、得点が必要になってくる。自分が高い位置をとってチームに積極的な姿勢を見せていく。その姿勢が、勝ちにいく上で必要になってくると思う。前節のように守備陣形を敷かれた時の崩し方やポジショニング、ボールの動かし方は、もう少し工夫が必要だと感じている。
試合後
【永木 亮太】
前がかりになったことで、このような結果になってしまった。ただ、チーム全体で前から積極的に行こうという話はしていた。そこで得点が取れなかったことは残念だったし、失点してしまったことも残念だったが、みんなの意識は良かったと思う。
【内田 篤人】
勝つしかなくて、得点を取らなければいけない状況だった。システム上の問題もあるが、自分たちがゴールを奪うために前がかりになったところで、裏のスペースを突かれ、失点が増えてしまった。
【土居 聖真】
前線の選手は前からプレスをかけに行っていたが、後ろの選手は少しきつくなってしまい、引いた位置での守備となってしまった。そこの連係があまりうまくいかず、ちぐはぐになってしまっていた。それを立て直す前に、追加点を取られてしまった。ビルドアップの部分は課題だと思うし、ロングボールが多くなってしまっていた。そこは改善しなければいけない部分だった。
【犬飼 智也】
本当の強さを出し切れなかった。ここ数試合勝ち切れないゲームが多かった。もっと強くなっていかないといけない。まだ残りの試合がある。その試合に向けて、しっかりと準備をしていきたい。
【名古 新太郎】
すごく悔しい気持ちでいっぱい。自分たちが先制点を取らなければいけない状況で、先にゴールを決められてしまったことは、すごくもったいなかった。結果的に90分の中で負けてしまったので、それがすべてだった。
【町田 浩樹】
タイトルを獲る可能性があった中で、それを逃してしまったことは率直に悔しい。ペナルティエリア内での処理の部分は、もっとはっきりとやらなければいけなかった。チーム全体で修正していかないといけない。
◆2019明治安田生命J1リーグ 第33節(オフィシャル)