日刊鹿島アントラーズニュース

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2024年6月4日火曜日

◆【首位・町田に勝点で並んだ鹿島の「好調の要因」(2)】新デュエル王誕生。ボランチコンバートから3か月で守備強度が増した知念慶効果……ビルドアップの割り切りも良い方向に(サッカー批評)



知念慶


 攻撃陣の活性化によってリーグ4連勝・8戦無敗という快進撃を見せている鹿島アントラーズ。ランコ・ポポヴィッチ監督の強度と推進力を前面に押し出すスタイルが着実に浸透し、ACL準優勝の横浜F・マリノスと対峙しても互角の戦いができることを改めて実証したのだ。

 こうした中、進境著しいのが、今季からボランチにコンバートされた知念慶。ご存じの通り、彼は昨季までFWとして長いプロキャリアを生き抜いてきた選手。ボール扱いやパスの出し入れにこだわる川崎フロンターレで長くプレーし、中村憲剛(JFAロールモデルコーチ)や守田英正(スポルティング・リスボン)、田中碧(デュッセルドルフ)といった面々と間近で接し、自分なりのボランチ像を描きやすかったところはあるだろうが、29歳の選手が運動量や寄せ、球際の部分で負担が大きく増える中盤に下がるのは簡単なことではない。

 それでも1日の横浜戦を見る限りだと、知念はコンビを組む佐野海舟と相手両インサイドハーフ(IH)の天野純と渡辺皓太を警戒。さらにサイドバック(SB)の位置から中に絞ってくる永戸勝也らの位置も見て、要所要所でボールを奪っていた。


■「絶対に自分は負けちゃいけない」


「今、鹿島の特徴として、両サイドバックが高い位置で攻撃参加してチャンス作ってくれてるので、相手のヤン・マテウス選手、逆のウイングも攻め残りする選手が多いんで、そこのカバーを意識してやりました。

 前半は天野選手の立ち位置がすごく賢くて、やりづらかった、自分としては苦戦したんですけど、後半はちょっとオープンな展開になって、自分たちの攻撃で上回れたんで、そこは良かったかなと思います」と本人も90分間通して自分らしさを出せたという。

「危険な場所には必ず知念がいる」と言ってもいい状況を作った背番号13。この日の最たるシーンと言えるのが、鈴木優磨がアンデルソン・ロペスから奪ったボールを知念が運ぼうとして、逆に後ろからタックルされた後半26分の場面だろう。普段温厚で感情の起伏が少ない背番号13が熱くなってロペスに向かっていき、木村博之主審が止めに入ったほどだった。

「球際だったり、デュエルだったりの部分では、絶対に自分は負けちゃいけないと思ってやってるんで、そこは持ち味出せたかなと思います」

 本人も語気を強めたが、5月30日時点の2024シーズン・デュエル勝利数は68とダントツのトップ。鹿島のデュエル王というと、佐野海舟を思い浮かべる人も多いだろうが、佐野は30で知念の半数以下。このデータを見ても分かる通り、「ボランチ・知念」が今季鹿島に大きなプラスをもたらしているのだ。


■知念の割り切りがいい方向に


「正直、課題はいっぱいあると思いますし、ビルドアップなんかも割り切ってあんまり関わらないようにしているんで(苦笑)。奪ってそこから攻撃に繋げる部分に振り切って今はやっているんで。周りが自分が足りない部分をサポートしてくれるし、逆に周りができないことを自分がサポートしてあげるようないい関係が今、作れてるかなと思います」と本人もできる仕事を徹底的に遂行するというスタンスを貫いているという。

 この守備強度は5月22日のYBCルヴァンカップ・町田戦から復帰した柴崎岳にも出せない部分。柴崎が戻ってきたら知念がどう扱われるかというのは1つの疑問ではあったが、指揮官はこのまま知念・佐野をベースに戦っていくつもりだろう。柴崎は横浜戦終盤にトップ下に入ったが、より攻撃的な役割を担う可能性も少なくない。いずれにしても、知念抜きにポポヴィッチ監督のサッカーは具現化できないということなのだ。

「今のところ信頼して使ってもらってるんで、その期待に応えないといけないなっていうプレッシャーや責任感はあります」と知念は神妙な面持ちで言う。29歳にして新境地を開拓し、才能を開花させつつある男が今後の鹿島を支え続けていくことになりそうだ。

(取材・文/元川悦子)




◆【首位・町田に勝点で並んだ鹿島の「好調の要因」(2)】新デュエル王誕生。ボランチコンバートから3か月で守備強度が増した知念慶効果……ビルドアップの割り切りも良い方向に(サッカー批評)





◆【首位・町田に勝点で並んだ鹿島の「好調の要因」(1)】鈴木優磨が8点、大卒新人・濃野が5点と「左から右」の崩しが具現化……鈴木が説明する要因は「幸輝のパフォーマンス」(サッカー批評)



鈴木優磨


 YBCルヴァンカップは早々と敗退してしまったものの、最重要タイトルのJ1はというと5月の6試合で無敗と調子を上げている鹿島アントラーズ。16試合終了時点で勝ち点32と首位・町田ゼルビアと3ポイント差まで迫っており、頂点が見えつつあるところまで来ている。

 とはいえ、6月は1日の横浜F・マリノスを皮切りに、浦和レッズ、ガンバ大阪、ヴィッセル神戸といった難敵が続く。3連戦が3回もあった4月終盤からの1か月に比べると日程的に余裕があるのは確かだ。

 まずは最初の横浜戦を勝利で踏み出すことが先決。東京・国立競技場に5万2000人超を動員した大一番で、しかも横浜には過去2年間勝ちがない。23-24AFCチャンピオンズリーグファイナリストの相手に今回こそは白星がほしかった。

 強度とハードワークを前面に押し出し、試合に入った鹿島だが、前半10分にパスカットした関川郁万がボールを引っかけられ、井上健太のシュートを許し、最終的にアンデルソン・ロペスに押し込まれるという苦いスタートを強いられた。

「自分がゲームを壊してしまったので、申し訳なさもありますし、何とかしてチームを救いたいっていう気持ちはありました」と関川本人も奮起を誓ったという。


■鈴木優磨の心を盛り立てたもの


 その後、横浜に主導権を握られたものの、徐々に修正。関川自身が奪ったと思われた同点弾がVARで取り消され、師岡柊生の決定機も阻止されるなど、チャンスは作ったものの、追いつけないまま45分を終えることになった。

 そこでランコ・ポポヴィッチ監督はいつも通り、ハーフタイムに檄を飛ばし、チャヴリッチを早めに投入。しかも彼をサイドではなくトップに配置。鈴木優磨をトップ下に一列下げ、右に名古新太郎、左に仲間隼斗という変則的な並びに変更したのだ。

 これが奏功し、攻撃のギアが一気にアップ。後半12分に右の名古のクロスをチャヴリッチが頭で落とし、ファーから鈴木優磨が豪快な左足シュートを決め、同点に追いつく。

「上(のコース)はなかったんで、いかに下を狙うかだった。正直、かなり運もあったんですけど、何とか相手の股を抜けて、いいところに行きました。

 誰だか忘れちゃったんですけど、相手に煽られたおかげですごい力が発揮できましたね(笑)。『絶対に勝ってやる』『絶対に点取ってやる』って心に決めていたので。僕はそういうタイプなんで力が入りました」

 いかにも鈴木優磨らしい物言いで今季8点目を喜んだ。エースが得点ランキング上位に挙がってくるとチーム全体に弾みがつくのは事実。13点のレオ・セアラとはまだ5差あるものの、したたかに一発を決められる技術と戦術眼があれば、その領域に辿り着ける日も近そうだ。


■「幸輝に依存しているところがあって」


 彼が後半29分の2点目をお膳立てしたのも特筆すべき点。背番号40が左の大外の低い位置まで下り、ボールを受けて、フリーになっていた知念慶に展開。13番がドリブルで持ち上がった瞬間に右の名古がダイヤゴナルで中に走って永戸勝也を引きつけ、空けたスペースに濃野公人が飛び込み、今季5点目を叩き出すという理想的な流れだった。

「キミ(濃野)が点を取っている大きな要因としては今年の(安西)幸輝のパフォーマンスがすごくいいことがある。ビルドアップに関しては幸輝に依存しているところがあって、あそこでボールが止まる瞬間があることがすごく大きい。そのおかげで左から崩れて、キミが取れていると思う」と鈴木優磨も説明していたが、「左から右」は鹿島の必殺パターンになりつつあるのだ。

 最終的には関川のリスタート弾が飛び出し、3-2で横浜を振り切った鹿島。首位・町田と勝ち点35で並び、いよいよトップが見えてきた。鈴木優磨が8点、チャヴリッチが6点、濃野が5点、名古が4点というように、得点源が分散できているのが、今の鹿島の強さ。そこは昨季と比べると大きな前進と言っていい。

 エース中心に攻撃陣に自信が生まれている今、この流れを加速するしかない。6月代表ウイークの2週間を有効活用すべきだろう。

(取材・文/元川悦子)




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◆「ゲームを壊した」 鹿島23歳DF、失点関与→幻ゴール→決勝点に複雑胸中「素直に喜べない」(FOOTBALLZONE)



関川郁万


関川郁万はチームの修正力に自信


 鹿島アントラーズの23歳DF関川郁万にとっては、ジェットコースターのような試合だっただろう。6月1日に行われたJ1リーグ第17節の横浜F・マリノス戦、鹿島は前半10分にFWアンデルソン・ロペスに先制点を決められるが、後半に3得点を奪って3-2と逆転勝利を挙げ、勝ち点で首位のFC町田ゼルビアと並んだ。

 この試合の先制点の場面、自陣からボールを持ち上がった関川は、ボールを奪われて相手のショートカウンターの起点となってしまった。前半32分には汚名返上とばかりにセットプレーからゴールを決めたが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の結果、オフサイドと判定されて得点は幻となる。

 後半に入りエースのFW鈴木優磨の活躍もあって逆転したなか、後半39分には再びセットプレーから関川がゴールを決める。後半アディショナルタイムにゴールを決められたことから、関川のゴールがこの試合の決勝点となっている。

 試合後のミックスゾーンで関川は「ゲームを壊してしまったので、申し訳なさもありましたし、なんとかこのチームを救いたい、勝たせたいっていう気持ちはありました。どういう形でも、得点でも、身体を張った守備でも、チームを助けられたらと思っていました」と、1失点目に絡んだ反省を口にした。最終的に決勝点を挙げたが、「オフサイドもありましたし、ミスからの失点もあったので、素直に喜べない試合だったかなと思います」と、複雑な表情を見せた。

 それでも、この試合の結果、鹿島は直近のリーグ戦は4連勝、8試合負けなし(7勝1分)と勝ち点を重ね続けている。個人としては反省の言葉を述べた関川だが、チームの「修正力」に手ごたえを感じているという。

 好調の要因を問われた関川は、「修正できる能力とは言わないかもしれませんが、去年は逆転勝ちがあまりなかったんです。そういうメンタル的な部分であったり、今年は失点が多い中でも、得点力があったりする。いろいろありますが、前の試合からの修正、試合の中での修正が両方できるようになったのは、強みだと思います」と、コメントしている。

 実際、3-0とリードしながらも3-3の同点にされた東京V戦以降、チームは4連勝を飾っている。この横浜FM戦の中でも、チームがハーフタイムに「守備のことだったり、メンタル面だったり、自分たちのやることに集中するように修正できたと思います」と、関川は流れを変えられたことに胸を張る。

 勝ち点を重ねながら、修正をしていく。「常勝軍団」と呼ばれた当時の鹿島のような戦いぶりが戻ってきつつある。決勝点を挙げながらも、心から満足のいく試合ができなかったという関川は、心の底から喜べる日に向かっていくチームを象徴しているかのようだった。

(河合 拓 / Taku Kawai)





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