8月24日、明治安田生命J1リーグ第24節で7位・鹿島アントラーズは10位・ジュビロ磐田をホームに迎える。今節はカシマでの金曜日開催となる。鹿島はリーグ戦2連勝、磐田は前節・柏レイソル戦で3試合ぶりの勝利を収めたものの、アウェイでは2連敗中だ。
鹿島にとって、前節・横浜F・マリノス戦(1-0)は3試合ぶりのクリーンシートとなった。前々節・名古屋グランパス戦を4失点して敗れていただけに、「ゼロ」に抑えられたことは大きい。今季、最終ラインの中央がなかなか固定できなかった中で、公式戦連続フル出場を重ねているのが、犬飼智也だ。
「自分たちの声で、ゼロに抑える確率を高める。そういうプレーが少しずつできるようになってきていると思います」
前節・横浜FM戦が会心のパフォーマンスだったかと問われれば、頷くことはできなかったかもしれない。それでも、スコアボードに刻まれたのは「0」だった。
今季から鹿島に加入した犬飼にとって、聖地・カシマスタジアムで2度目のクリーンシートだった。アントラーズでの1年目、シーズン開幕から約半年。背番号39は苦しみながらも前進を続けてきた。満足とは程遠くとも。一歩ずつ、着実に――。
「伝統あるクラブに来ることができて幸せに感じている。このクラブと一緒にタイトルを目指して日々努力していきたい」。強い決意とともに臨んだ、シーズン前の宮崎キャンプだったが、いきなりの試練が待っていた。
「アントラーズのやり方を伝えて、すり合わせをしていきたい。清水(エスパルス)の癖なのかなと思ったのは、サイドにボールが出た時に…」とプレー描写を交えて説明したのは昌子源だ。「清水の守り方と、うちのやり方とがあって…」。
歩んできた道のりの違いが、トレーニングマッチで顕在化した。犬飼自身も「まだまだ全然できていない」と、その事実を十二分に理解していた。
開幕を迎えた後も、苦難は続く。
3月7日、ACLグループステージ第3節・シドニーFC戦、敵地で飾ったデビューこそ2-0の完封勝利で終えたものの、4月3日の第5節・上海申花戦でPKを与えるファウル(2-2)、そして4日後のJ1台6節・湘南戦ではオウンゴールで1-2の敗戦。
低空飛行を続けたアントラーズにあって、犬飼もまた、暗闇の出口を探し求めていたのだった。結局、5月20日のJ1中断まで、背番号39は浮上できなかった。
「アントラーズに来て、勝っていないですからね。本当に結果で示すこと、勝つこと。とにかく、それしかないです」。犬飼が静かに語ったのは、6月1日のこと。不甲斐なきシーズン前半戦を経て、心境を問うのは酷だったかもしれない。それでも、5日後に迫っていた天皇杯初戦、そして7月の公式戦再開を見据えた時、背番号39の奮起が不可欠であることも容易に想像できた。
「アントラーズのグラウンドの中での厳しさ、バチバチ感は日本でのトップクラスだと思うんです。本当にいい環境に身を置けています」
「サッカーに対する取り組み方、チームの雰囲気ですね。一言で、と言われると難しいんですけど、率直に“いいな”と、ここにいて思うんです。一体感はもちろん、ここを離れた選手にも“アントラーズはよかったな”と思わせるものがある。そういうチームだと思います」
どんな時でも誠実に受け答えをする25歳の瞳に、充実の光が灯った。「成長していけるかどうかは自分次第」。果たして今、その言葉は現実のものとなりつつある。
植田直通の欧州挑戦、昌子の負傷離脱、チョン・スンヒョンの加入、町田浩樹の台頭。激しく変化するチーム状況に身を置き、背番号39は不可欠な存在として先発出場を続けている。7月11日の公式戦再開から10試合、フルタイム出場を遂げているのは一人だけだ。
7月22日のJ1第17節・柏レイソル戦、自身にとって、リーグ初勝利の舞台はカシマスタジアムだった。3日後の第17節・セレッソ大阪戦、リーグ初のクリーンシート。
「気にしていたので、よかったです」
安堵の言葉を連ねた後、青黒、青赤との2試合は不甲斐ない己と向き合うこととなったが、聖地で初めての完封勝利は8月5日、古巣・清水エスパルスとの90分だった。「もっともっと、突き詰めていかないと――」。もがきながらも、犬飼は次なる戦いを見据えている。
「アントラーズのために、自分ができることは全部やりたい。結果がすべてですし、自分が勝たせるという気持ちで」。不在だからこそ浮き彫りになる、植田・昌子という二枚看板との比較も批判も、すべてが進化への糧になる。
揺るぎない信頼を勝ち取るために、今夜も犬飼はアントラーズを守る。誇り高き鹿のエンブレムとともに、サックスブルーの前に立ちはだかる。
◆二枚看板との比較も批判も糧にして。鹿島DF犬飼、磐田戦を前にしての決意/J1第24節(GOAL)