日刊鹿島アントラーズニュース

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2023年2月21日火曜日

◆大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第105回「霧にむせぶ夜」(1)Jリーグ屈指の名門・鹿島アントラーズが見せた、さすがの準備と対応(サッカー批評)



鈴木優磨


■Jリーグでの事例


 サッカーは雨で中止になる競技ではない。しかし霧には弱い。霧は大気中の水分が冷却などで飽和状態(これ以上気体としてとどまっていられない状態)となって微小な水滴となり、空気中に浮遊するもので、基本的には「雲」と同じだが、空に浮かんでいるものを雲、そして地表にあるものを霧というらしい。「もや」も同じ現象だが、視界が1キロメートルを割ると、気象庁では「霧」と呼ぶことにしているという。そしてそれが100メートルを切ると、「濃霧」ということになる。

 こうなると大変だ。サッカーのピッチは108メートル×68メートル。濃霧が発生すると、GKは相手ゴールポストが見えない状態となる。そして副審は逆側のタッチライン近くの選手の動きが確認しにくくなるだろう。これでは試合はできないから、中断ということになる。

 2017年のJリーグで霧によって試合が二度も中断された試合があった。J1第20節の鹿島アントラーズ対ベガルタ仙台、8月5日にカシマスタジアムで行われた試合である。午後6時半のキックオフ時からもやっていたスタジアム内だが、試合が進むとともにどんどん霧が濃くなり、ボールが見にくくなった。

 この年のJリーグ使用球はアディダスの「クラサバ」というデザインのもので、白地に赤と黒の「×」印が6つ描かれたものだった。全体的な印象としては白いボールである。しかし霧のなかでは非常に見えにくい。そこで運営を担当する鹿島アントラーズはオレンジ色をベースとした「カラーボール」を持ち出し、前半24分の鹿島のスローインからこのボールがピッチにはいった。しかし霧はさらに濃くなる。

 3分後、飯田淳平主審は試合を止め、三原純副審、堀越雅弘副審、そして第4の権田智久審判員と協議、「逆サイドが見えない」ことを確認すると、一時中断を決めた。しかしこのときにはすぐに状況がよくなり、3分後に試合再開、前半のアディショナルタイムに鹿島の土居聖真が右から抜け出して先制点を決め、どうにか前半を終えた。


■鹿島の見事な準備と努力


 後半は規定どおり前半終了から15分後にキックオフされたが、霧はおさまらず、16分、飯田主審は再び試合を止めた。すると係員がピッチに何か大きなものを持ち出す。巨大な扇風機だった。ピッチに風を送り、霧を払ったのだ。この努力が実り、10分間の中断の後に試合再開。後半のアディショナルタイムに再び鹿島が得点し、2-0で勝って試合を終えた。

 ちなみに、鹿島の2点目を決めたのは鈴木優磨、仙台のゴールを守っていたのはシュミット・ダニエル。この2人は後にベルギーのシントトロイデンでチームメートとなる。鹿島のGKが曽ヶ端準、中盤で試合をコントロールしていたのは小笠原満男だった。一方の仙台では、前線で西村拓真が奮闘していた。

 私が感心したのは、鹿島アントラーズがすばやく「カラーボール」を用意し、後半には扇風機まで持ち出してなんとか試合を中止せずにやり遂げたことだった。Jリーグの試合球は公式サプライヤーのモルテンから提供されるが、カラーボールは主として雪国のチームのために用意されたものだった。しかし鹿島はスタジアムからわずか1500メートルのところに広がる鹿島灘で頻繁に濃霧が発生し、スタジアムにまで影響を及ぼす場合もあることから、特別にリクエストを出してカラーボールの提供を受けていたのだ。扇風機はピッチの芝育成用のものだが、濃霧のときにはこれも使おうと用意していたのだろう。いずれにしろ、試合を成立させた準備と努力は見事だった。

 だがピッチ上ではなんとか試合ができる状況でも、観客席のファンやテレビ(この試合はDAZNのみの放送だった)で見ていたファンには、何が何だかわからない展開だっただろう。選手や審判員たちには見えていても、観客席からはカラーボールでも遠くにあると見えない。選手たちがなんとなく動き回っているのはわかるが、ボールの動きはさっぱりわからず、鹿島の選手たちが喜んでいるから点がはいったと推察するしかない。試合を成立させることは非常に大事だが、プロとしてどうなのかと思ってしまう。




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◆大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第105回「霧にむせぶ夜」(1)Jリーグ屈指の名門・鹿島アントラーズが見せた、さすがの準備と対応(サッカー批評)



◆最前線に入れない悔しさを糧に、2シャドーの一角で数字とプレーの幅にこだわる…ベルギー移籍1年目、上田綺世の今【現地発】(サッカーダイジェスト)



上田綺世


「センターフォワードよりも自分に合ってる部分もある」


 現地時間2月19日に行なわれたサークル・ブルージュ対クラブ・ブルージュのダービーマッチ。2017年には日本代表がベルギー代表と対戦したヤン・ブレイデル・スタディオンは、試合開始前から発煙筒が焚かれ、凄まじい熱気に包まれた。

 ここまで25試合を終えて、8位とプレーオフ(PO)圏内につけているサークル・ブルージュとしては、宿命のライバルに勝利し、より上の位置に浮上する足掛かりを築きたかった。

 ベルギー移籍1年目ながら、早くも10ゴールをマークする上田綺世は3-4-2-1の左シャドーで先発。立ち上がりから凄まじいハイプレスをかけに行き、ボールを奪おうとする。そして開始5分には、右CKの場面でヘディングシュートを狙う。これは惜しくも得点には至らなかったが、ゴールへの鬼気迫る思いが如実に出ていた。

 直後には左サイドからのドリブル突破で、対面に位置する相手の右サイドバックのデニス・オバイを抜き去る果敢な仕掛けを披露。最前線を主戦場にしていた鹿島アントラーズや日本代表ではあまり見せたことのない局面打開にも意欲的に挑み、プレーの幅を広げていることが窺えた。

「最前線じゃない分、新しい自分の武器とか、求められるタスクの種類が違ったりしている。守備面もそうだし、攻撃も含めて、センターフォワードよりも自分に合ってるような部分もあるのかなとも感じてはいます。

 それでも僕は『センターフォワードをやりたい』というジレンマを抱えながら、今季プレーしてきました。そういうなかで、『自分じゃなきゃできないオリジナリティ』をどう新しいポジションで作っていくかをずっと考えて取り組んできた。動き出しや攻撃性といった部分にはこだわりを持ってやってきました」と上田は語っていたが、もがきながらも2シャドーの一角に陣取る自分に磨きをかけている様子だ。

 その後、サークル・ブルージュは相手に一瞬で背後を突かれて、VAR判定の末に失点。前半を0-1の劣勢で終えると、後半開始直後にケビン・デンキーが同点弾をゲット。これでリズムを取り戻したが、再び1点をリードされてしまった。

「2失点目の後、少しメンタル的にも疲労感がどっと表われた時間帯があった」と上田も話したが、彼は闘争心を持ち続け、攻守両面で献身的なプレーでチームを引っ張る。その姿勢が奏功し、78分にリスタートからティボ・サマーズが同点ゴールを奪う。

 上田自身はその後、決勝点を挙げるチャンスが何度かあったが、この日は欲しいポイントでラストパスをもらえない場面が多く、残念ながら無得点。チームも2-2のドローに持ち込むのが精一杯だった。

「今日は確かになかなかボールが来なかったのはあります。9番(デンキー)にも『ニアに釣ってくれれば、左にいる自分がフリーになるから』と話したりするし、(マイロン・ムスリカ)監督も言ってる。自分はそれを言いつつやりつつ、日々トライしています。そういう作業を7、8か月続けてきて、少しは僕の考えも浸透してきたのかなと感じます。

 このチームはそこまでテクニカルじゃないし、見た通りの蹴って走ってっていうスタイル。そこで活躍できることに価値があると思う。僕は『どういう環境に行っても点を取るのが理想』とずっと言ってますけど、チーム事情とか環境とかを言い訳にせず、結果を出すというのを追い求めています」と本人はどこまでも前向きだった。


「結局のところ、やっぱり点を取るのが一番信頼される」


“ブルージュ・ダービー”で得点に絡む仕事はできなかったものの、今季の上田はすでに二桁得点を奪っている。リーグ戦で8試合を残した段階でこれだけの数字を挙げるというのは、賞賛に値すると言っていい。

「僕自身は特に何も変化していなくて、常に自分の感覚のアップデートをしている結果だと思います。シャドーのスタイルっていうのは僕にはよく分からないし、セオリーを知らない。セオリーは分からなきゃいけないんですけど、自分にとって未知な部分がたくさんあって、それを勉強しながら、ここまで来ています。

 例えば、センターフォワードだったら、どこで力を抜くかを考えながらメリハリをつけるというセオリーが僕の中にありますけど、今のポジションだとそれがない。自分の中で常に駆け引きしながら、守備やマークを良い意味でサボりながら、どのくらい前に力をかけられるかを模索し続けています。

 ただ、結局のところ、やっぱり点を取るのが一番信頼される。攻守両面で貢献しつつも、そこにこだわっていくのが大事。『ここで自分が出せる』と思った時にエンジンをかけたことが噛み合って、1、2月の3試合連続ゴールも生まれたのかなと思っています」

 1つ1つのプレーを熟慮し、自分なりに納得したうえで、貪欲にチャレンジを続ける上田。彼が初挑戦の異国で進化を続けられるのは、こういった思慮深さと積極性を持ち合わせているからだろう。

 彼自身の中では「センターフォワードをやらせてもらえない自分」に対してのもどかしさや苛立ちはもちろんあるというが、この経験も必ず先々に活きてくるはず。もともと多彩なシュート力には定評があったが、それ以外にも仕掛けやチャンスメイク、前からのハイプレスなど様々なタスクをこなせるようになれば、欧州5大リーグへのステップアップや日本代表での定位置確保も見えてくるのではないだろうか。

「『移籍1年目でこの結果』とか『このチームで二桁』とかよく言われるんですけど、自分はそれ以上に決定機を外している。多分、外してきた決定機は50個くらいはあると思う。そういうのを沈めていくのと同時に、もっともっと数字を伸ばしていくのはできるはず。そう考えて、常にゴールを目ざしてやっていきます」

 自分に甘えを許さず、常に厳しさを持って上田は前進を続けていく。そんな彼の未来はきっと明るいはずだ。

取材・文●元川悦子(フリーライター)




◆最前線に入れない悔しさを糧に、2シャドーの一角で数字とプレーの幅にこだわる…ベルギー移籍1年目、上田綺世の今【現地発】(サッカーダイジェスト)






◆なぜ判定に違いが生まれた? 相手サポ挑発行為に元主審・家本氏が感じた“違和感”「片方で出ないのはサポーターも困惑する」(FOOTBALLZONE)



鈴木優磨と細谷真大


【専門家の目|家本政明】J1開幕戦で起こった2つの相手サポ挑発行為に持論を展開


 2月17日に開幕したJ1リーグで、鹿島アントラーズFW鈴木優磨と柏レイソルFW細谷真大がそれぞれ行った相手サポーターへ向けた“挑発行為”に賛否が湧き起こっている。元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏が「綺麗な境界線を引けない」と見解を述べた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

 ◇   ◇   ◇

 開幕節の鹿島がアウェーに乗り込んだ京都サンガF.C.戦で2点目を決めてリードした数分後の出来事。鈴木がゴール裏の京都サポーターに向けて手で0-2のジェスチャーを見せる。この行為を目視した谷本涼主審は、反スポーツ的行為で鈴木へイエローカードを提示した。

 一方で、ホームにガンバ大阪を迎えた柏。1-2で敗戦目前の後半アディショナルタイムにペナルティーキック(PK)を獲得する。このキッカーを務めた細谷がしっかり決めて劇的同点弾となった。その直後、PK前にブーイングしていたスタンドゴール裏のG大阪サポーターに向かって、細谷が両手を耳に当てるポーズを披露。この行為に対して、小屋幸栄レフェリーから特にお咎めはなかった。

 上記2つのシーンで判定に違いが生まれた相手サポーターへの“挑発ジェスチャー”の対応に、SNS上で疑問の声も上がっている。家本氏は「難しい。非常にグレーな話題」と頭を悩ませた。

 前提として、JFA(日本サッカー協会)審判委員会ではシーズン開幕前に選手やスタッフによる異議、詰め寄る行為に対し厳正に対処する方針がレフェリー陣に共有されていたと話す家本氏。今回のケースも「同様にお客さんを煽る行為は、競技規則上警告に値する」とルールに則ると処罰の対象であると指摘する。

 しかし、一方で「細谷選手の耳に手を当てるようなポーズを行い、海外で警告をもらうシーンは、僕は見たことがない」と世界的に見て珍しくないものだとも感じているという。

 そうした背景を踏まえたうえで、2人の判定の違いについて、鈴木の判定を軸に持論を展開した。

「鈴木選手の示した2-0はスコアの事実の表現だったが、相手サポーターへ笑顔でジェスチャーを表した瞬間をレフェリーが確認した。反スポーツ的行為と判断したのだと思う」

 家本氏は「Jリーグの品位を下げる行為」という基準の元、鈴木へイエローカード提示に至ったと流れを説明している。

 細谷の行為に関しては、主審がジェスチャーを確認できていなかった可能性も挙げつつ、「類似行為として捉えている。一方でカードが出て、片方で出ないのはサポーター・チーム・選手としても困惑する」と疑問を投げかけた。

「この2つの場面に多少の差があることも理解ができるし、基準を統一することもできるが、綺麗な境界線を引くことはすごく難しいと思う。ただ、同じ挑発行為として違う判定が出るのは違和感がある」と個人的な意見を述べている。


解決の糸口は“基準の明確化”だがグレーな分難しい


 家本氏はこの問題への対策として、「JFA審判委員会がJリーグの考えや方向性を聞きながら選手やクラブに基準を共有していくことも大切だけど、その前にJリーグがこの辺りをどう考えているのかをもっと明確にして発信していくことが大切だと思う」と主張。「選手やJリーグのブランド価値を高めるよう、グレーなところをどうするのかもう少しわかりやすく示してほしい」と思いを語ったうえで「自チームのサポーターへの行為や言動ならそこまで波風が立たないが、相手(サポーター・選手・クラブ)だと難しさが出てくる。なので相手側には敬意を示し、誤解を生む行為や発言はやめる、対象は自分たちを応援してくれているサポーターに対してだけにする、を徹底するだけでこの問題は解決する」と一案を述べた。

「フットボール以外の話で盛り上がるのはもったいない」とも嘆いた家本氏。Jリーグの価値を高めるためにも、審判委員会やJリーグが選手やクラブ側とすり合わせしていくことが今後必要となっていきそうだ。





◆なぜ判定に違いが生まれた? 相手サポ挑発行為に元主審・家本氏が感じた“違和感”「片方で出ないのはサポーターも困惑する」(FOOTBALLZONE)





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