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12月7日(土) 2013 J1リーグ戦 第34節
鹿島 0 - 2 広島 (15:33/カシマ/26,897人)
得点者:35' 石原直樹(広島)、80' 石原直樹(広島)
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「信じられない。一度は自分たちの手からこぼれ落ちた優勝のチャンスが、また巡ってきた。本当に少ない可能性にかけて、この2試合を闘った」
佐藤寿人の言葉が、広島の選手たちが置かれていた立場を端的に表していた。前々節のC大阪戦に敗れ、首位との勝点差は5差に広がっていた。逆転優勝のためには横浜FMが2連敗し、広島が2連勝するしか方法が残されていない。
「優勝のためには、絶対に勝たねばならない試合でした。プレッシャーがかかったこの試合、選手たちはいい準備をしてくれて、勇気を持って仕事をしてくれた」
森保一監督は、偉業を見事に成し遂げた選手たちをそう言って讃えた。引退を表明していた中島浩司を最後にピッチに送り出す粋な采配も見せ、3,000人が詰めかけたアウェイのゴール裏と歓喜を分かちあった。
試合は、ゆったりと流れながらも要所要所で一気にスピードアップする、目が離せない展開から始まった。天皇杯4回戦で広島に完敗している鹿島は、戦術を変更。
「天皇杯でやったときにうまくはまらなかったので、1回引いて、サイドとかに入ったときに強く行こうと思っていました」(土居聖真)
そのため広島の最終ラインがゆっくりボールを回す展開となる。しかし、一度楔の縦パスが入ればそこから急加速してゴール前に迫ってくる。ミキッチに突破を許さないように中田浩二が、佐藤寿人にシュートを許さないため山村和也が、それぞれのポジションで息詰まる攻防を繰り広げていた。
もちろん鹿島も相手を自由にさせているわけではない。大迫勇也が虎視眈々とゴールを狙う。天皇杯ではいなかった鹿島のエースに対し、広島の守備陣は最大限の警戒心を示していた。
ただ、その均衡状態が時間と共に崩れていく。守備がある程度機能していると感じた鹿島は、25分あたりから、前からボールを奪う守備にシフトしていったのだ。しかし、試合開始当初ほど全体が連動しない。プレッシャーをかけてもGKの西川周作に戻され、そこからまた精度の高いロングキックを蹴られてしまうため、逆に中盤は間延びしてしまった。ボールを失ったときも、すぐに奪いに行くのか、帰陣を早くするのか、場面場面で応対が違うようになった。ボールの失い方も悪くなり、大迫、中村充孝などが攻めにかかるところで失い、大迫は27分に警告を受けてしまった。これが後々大きく響いてしまう。
すると35分、石原直樹が先制点を奪う。佐藤寿人が前線で動き出したことでできたわずかなパスコースを高萩洋次郎が見逃さず、右足アウトで優しく出したボールは石原の足下にピタリ。曽ヶ端準もこれ以上ないタイミングで飛び出して来たが、石原がその頭上にふわりと浮かすループシュートを決め、広島が待望の先制点を奪った。
そして45+1分、1枚目の警告と同じような形で大迫が塩谷司を倒してしまうと、東城穣主審は迷うことなく2枚目のイエローカードを提示。エースが退場となった鹿島は、一気に苦しい立場に追い込まれた。
後半、鹿島は小笠原満男が獅子奮迅の働き。脅威的な運動量とボールへの執着心を見せてチームを鼓舞する。しかし、大迫がいない攻撃は迫力不足。途中、ダヴィを投入したが大きく流れは変わらず、逆に80分、広島がカウンターから石原直樹に2点目を流し込み勝負を決めた。
広島は強かった。選手同士の連携は熟成され、主力選手が引き抜かれてもチーム力は落ちず、むしろ上がったような印象さえ受けた。大迫を抑えた塩谷司の存在感が光っていた。さらに野津田岳人、清水航平、浅野拓磨という次を担う若い選手たちも出現してきている。来季は、他のすべてのチームのターゲットになることだろう。待っているのは更なるプレッシャーだ。だが、それを乗り越えたときの歓喜は、2連覇以上のものとなる。
優勝セレモニーで喜びを爆発させる広島の選手たち。それを鹿島の若手はじっと眺めていた。土居聖真、梅鉢貴秀、昌子源、鹿島にとっても次の世代を担う大事な原石たちである。岩政大樹を勝って送り出すことはできなかったが、山村和也がこれまで見られなかった勝利への執念をピッチで表現するなど、その魂は確実に受け継がれている。来季こそ。
以上
2013.12.08 Reported by 田中滋