日刊鹿島アントラーズニュース
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2016年6月29日水曜日
◆新たな“スピード”を得た鹿島MFカイオ、プロを目指す高校生に伝えたいこと(ゲキサカ)
http://web.gekisaka.jp/news/detail/?192768-192768-fl
抜群のスピードを武器に相手陣内を切り裂く鹿島アントラーズのMFカイオ(22)が6月某日、茨城県の強豪・鹿島高のトレーニングに“サプライズ参戦”した。スピードに特化したトレーニングでプロとしての違いを示すカイオに高校生は羨望の眼差しを送り、同時に刺激も受けていた。
サンパウロの下部組織出身で、2011年に来日したカイオは千葉国際高で3年間プレー。14年に鹿島に入団すると、第3節の鳥栖戦に途中出場し、Jリーグデビューを果たした。ルーキーイヤーでリーグ戦30試合出場8得点を記録し、Jリーグベストヤングプレイヤー賞にも輝いた。昨季も32試合出場10得点と、鹿島の中心選手として活躍し続けるカイオ。高校生と一緒にトレーニングに励むその姿から、サッカーに対する考え方、メンタルも垣間見えた。
――最後は3チームに分かれてのミニゲームもありましたが、高校生と一緒にトレーニングをしてみて、いかがでしたか?
「非常に楽しかったです。一瞬、自分の高校時代がフラッシュバックしました。スピードタイプの選手だったり、パワータイプの選手だったり、能力の高い選手もいました。ただ、ミニゲームでは僕が入ったチームより、他のチームの方が強かったね(笑)。自分の高校時代より、今の高校生のほうがレベルは向上しているように思いました」
――高校生のときに100mを11秒で走っていたカイオ選手はスピードに自信を持っていると思いますが、日々のトレーニングで意識していることはありますか?
「特別にやっていることはありません。監督の要求に応えているだけです。僕は練習を本気でやっているので、そういった部分で練習の成果が自然に出ているのかなと思います。だから、自分で意識してやっているということは特にありません」
――トレーニング後のアドバイスで、『マネをすることが大事』とおっしゃっていました。
「プロサッカー選手となると、相手のいろいろな部分を見ないといけません。攻撃の部分だったり、守備の部分だったり、ドリブルだったり、フェイントだったり、シュートの打ち方だったり、いろいろありますが、僕は攻撃的な選手なので、攻撃の部分に重点を置いて見ています。だけど、マネをしたとしても、全部を使うわけではありません。引き出しを多く持っておけば、いろいろな状況に対応することができますし、瞬時の閃きで出るプレーもあります。例えば、ネイマール選手のプレーを映像で見ていたら、ピッチ上のDFの位置や相手との間合いによって、『この前、見た映像と同じ状況だ』と瞬間的に判断して、同じようなプレーが出ることもあります」
――『サッカー選手はみんな頭がいい』ともおっしゃっていました。具体的にどういうことでしょうか?
「今、プロでやっている選手は全員、頭がいいと僕は思っています。プロになるまでより、プロで居続けること、トップで居続けることのほうが難しいと思っています。頭を使っていろいろな方法で生き抜いていくことが重要です。プロというのは、高校時代より競争が何倍も激しくなります。そこでどうやって生き抜くのか。その中で生き抜いていける選手は頭がいい選手だと思います」
――高校生もスタメンの座をかけて競争しています。彼らが頭のいい選手になるためにはどうすればいいでしょうか?
「僕が高校からアントラーズに入ったとき、レベルの差は歴然でした。そこで『無理だ』という気持ちになってしまえば、何も手にすることはできなかったと思います。『ここで努力をしなければならない』と思えたからこそ、やっと今、レギュラーでプレーすることができるようになりましたし、チームの勝利に貢献するようなプレーができるようになったと思っています。
日々の練習は嘘をつかないので、そういう努力を怠ってはいけません。日々、隣にいる人との競争で、隣の人の努力を上回らないといけません。それができてこそ、11人の先発メンバーに入ることもできます。だけど、11人だけが頑張ればいいというわけではありません。ベンチメンバーになったり、ベンチから外れたりしたときに、日々の練習をダラダラとこなすだけになっていたら、仮に試合で使われる機会が訪れたとしても、本来のパフォーマンスは発揮できないと思います。そうなれば信頼を失い、試合で使われない状況が続くでしょう。
要はベンチ外、ベンチメンバーになったときこそ、『チャンスをもらった』と思えるかどうかです。そういうときは自分を強化するチャンスであり、『もう試合に出れない』という気持ちでやっていたら、自分が自分自身に一番嘘をついていることになります。11人の枠に入ろうとする強い意志と気持ちを持ち、努力を続けることが重要だと思います。自分自身に正直に本気で取り組めば、必ずその努力の成果が表れると信じて取り組んでほしいですね」
――カイオ選手がトップで居続けること、生き抜くための“相棒”となるマーキュリアルの新作『スーパーフライ V』を履いた印象はいかがですか?
「本当にカラフルで、カラーリング、デザインも気に入っています。履いてみると、フィット感があって、他のスパイクよりもしっかりとしたグリップ感があります。スピードもさらに出せそうな雰囲気がありますね」
――フィット感はサッカー選手にとってどれくらい重要ですか?
「フィット感はプレーに大きく影響してきます。(スパイクが)大きかったり、小さかったりすると走るのも難しくなります。普段の靴ではちょっと大きめのサイズを履いたりすることもあるかもしれませんが、スパイクや運動靴はフィット感が重要です。走るだけでなく、ポールタッチの感覚も変わってくるので非常に大事だと思っています」
――スパイクに求めるものや、こだわりはありますか?
「正直、僕はスパイクにこだわりはないですね(笑)。ナイキのスパイクはいつも素晴らしいので、毎回、感激しています。このスパイクは、履くより飾ったほうがいいのではないかと思うぐらい、本当に素晴らしい性能を持っています。だけど、いくらスパイクが良いものでも、選手自身が走る、努力する、諦めないという部分を常に持っておかないといけません。それをしっかり持った上で、スパイクに対してもプライドを持ってプレーすることが大事だと思います」
――新しい『マーキュリアル スーパーフライ V』とともに、残りのシーズンをどう過ごしたいですか?
「当然ながら、得点、勝利につなげないといけません。新しいパートナーを手にして、ゴールを量産できるようになればいいなと思います。数多くのゴールを決めてサポーターを喜ばせることができれば、僕もうれしいです。その先にあるタイトルを一つでも多く手にできればと思っています」
――最後にプロを目指す高校生にメッセージをお願いします。
「日々の練習を怠ってはいけないと伝えたいですね。高校生のときは、シュート練習でキーパーやゴールがない状況で練習することもあると思います。いろいろな練習を先生が考えてやっていると思うので、一つひとつの練習で手を抜かずに、自分で自分をごまかさないということを心がけてほしいです。もちろん、毎日の継続が難しいことは僕も分かっています。ただ、それを1日でも長く持続できれば、必ず自分の身になり、パフォーマンスにもつながり、プロの道へとつながっていきます。日々の練習を怠ってはいけないということは彼らには分かってほしいですね」
(取材・文 清水祐一)
◆プロとの違いを痛感…鹿島MFカイオとマッチアップした鹿島高DF中澤「全然無駄がない」(ゲキサカ)
http://web.gekisaka.jp/news/detail/?192767-192767-fl
抜群のスピードを武器に相手陣内を切り裂く鹿島アントラーズのMFカイオ(22)が6月某日、茨城県の強豪・鹿島高のトレーニングに“サプライズ参戦”した。スピードに特化したトレーニングでプロとしての違いを示すカイオに高校生は羨望の眼差しを送り、同時に刺激も受けていた。
「スピードと体の強さ」が持ち味と語り、トレーニング中も積極的にカイオとマッチアップしていたDF中澤幸也は「一つひとつのプレーに全然無駄がなくて、一瞬のスピードが全然違いました。僕たちとプレーしていても余裕を感じさせたし、次のプレーも考えている感じがしました」とプロとの差を痛感。それでも「とにかく集中して、つま先立ちでカイオ選手をしっかり見て、ちょっと間合いを取って対応しました」とプロ相手に臆せず挑んだ。
カイオが鹿島に入団した1年目からファンだというFW植田航平は「一瞬のスピードの大切さや、トップスピードでのプレーの精度の低さを痛感しました。カイオ選手は一瞬のスピードだったり、長い距離のスピードだったりが全然違って、ついていけませんでした」とトレーニングを振り返り、「新人戦ではメンバーに入れたが、関東大会の予選からは入れていない。悔しい部分が大きいので、選手権予選までには最低でもベンチに入って、チームのために貢献したいです」と力強く語った。
2人はナイキの新作スパイク『マーキュリアル スーパーフライ V』を履いてプレー。中澤は「すごく足にまとわりつくというか、フィット感があって、ボールも蹴りやすかったです。走りやすいし、スパイクの中でまったく足もズレない。横移動などでも動きやすかった」と語り、植田は「軽く当てるだけで勢いのあるボールを蹴ることができました。それにはビックリしました」と驚いたようだった。
(取材・文 清水祐一)
◆「いつか僕の仲間に」 鹿島MFカイオが鹿島高のトレーニングに“サプライズ参戦”(ゲキサカ)
http://web.gekisaka.jp/news/detail/?192766-192766-fl
鹿島アントラーズのMFカイオが6月某日、茨城県の強豪・鹿島高のトレーニングに“サプライズ参戦”した。放課後のグラウンド。基礎練習を終えた鹿島高サッカー部の選手たちの前に突如、カイオが姿を見せると、高校生たちは一様に驚きを隠せず、戸惑いながら拍手で地元のプロプレイヤーを迎えた。
「いい練習をしましょう」というカイオの挨拶で練習はスタート。爆発的なスピードを生み出すナイキのフットボールスパイク『マーキュリアル スーパーフライ V』を履いたカイオが高校生と一緒に行ったのはスピードに特化したトレーニングだった。
1つ目のメニューはクイックネスと加速力を鍛えるもの。オフェンスの選手とパサーがゴールと平行に立ち、その間にディフェンスの選手が入ると、オフェンスの選手は限られた空間でフェイントをかけるなどしてマークを外し、パスを受けてシュートに持ち込んだ。
カイオのフェイントの速さには、味方であるはずのパサーも騙され、パスを出せない場面もあったほど。カイオは「僕は攻撃の選手なので、できるだけDFの足元を見るようにしている。どこかで相手の重心が片足に乗るタイミングがあるので、常にそのタイミングを探している」と具体的なアドバイスを送り、ディフェンス側の選手に対しても「僕はあまり守備は好きではないけど、スピードには自信がある。だから、相手が動き出したり、仕掛けるのを待って、自分が追いかけるようにしている。ステップを踏みながら、相手のタイミングを待っている」と、守備の対応についてレクチャーした。
2つ目のメニューでは、スプリント力とトップスピードにおけるプレーの正確性が求められた。ゴールから50mほど離れた両サイドにオフェンスの選手が立ち、ボールを持った選手がトップスピードでドリブルを仕掛け、もう一人がラストパスからシュートを打つというもの。ディフェンスの選手はオフェンスの選手より一歩下がった位置からスタートし、追いつけなくてもパスコースに回り込むなどして阻止を狙った。
スピードの差が顕著に表れるメニューだったため、カイオに追いつけない選手ばかりだったが、その中でもカイオのプレーをマネしようとするなど工夫しながら練習をこなしていた。これにはカイオも「サッカーにはずる賢さも必要だし、相手との駆け引きを制した者が試合も制していく。マネをするという意識は大事」と感心し、プレー中の意識や精神面についても“金言”を授けた。
「いくらスピードで相手の前に出ることができたとしても、最後のラストパスやセンタリングを丁寧にやらないと、チームの勝利に結びつけることはできない。それを意識してもらえれば、必ずチームが勝つ確率は高まると思う。落ち着いてプレーすることも大事で、僕は周りの声が聞こえないぐらいの状況に自分の精神状態を持っていくことを心がけている」
その後は3チームに分かれてハーフコートでミニゲームを行い、選手からの質問も受けたカイオ。「どんなキーパーが嫌いですか?」という質問には鹿島のチームメイトであるGK曽ヶ端準の名を挙げ、「曽ヶ端選手は点が取りにくいキーパーです」と答えた一方、「ただ、キーパーや相手の選手を苦手と思えば、それが自分のマイナスの要素になる。あくまで自分の強みを考えてプレーしてほしい」とエールを送っていた。
最後には全員で集合写真も撮影。「ここにいる一人ひとりがプロを目指していると思うので、日々の努力や、楽しくサッカーをやることを忘れずに取り組んでいってほしい。あと、忘れてはいけないのは勉強。サッカーだけに集中しすぎて、勉強が疎かになってはいけないので、そこも力を入れてやってください」と、文武両道の大切さを説き、「いつかこの中のだれかが僕の仲間になることを期待しています」と白い歯をこぼした。
(取材・文 清水祐一)
◆鳥栖 鹿島から移籍、MF青木が初合流「喜びを感じてる」(スポニチ)
http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2016/06/29/kiji/K20160629012866080.html
鳥栖は鹿島から完全移籍で加入したMF青木剛(33)がチームに初合流した。
「新しいチャレンジに喜びを感じているし、ありがたいこと。ここからハードワークしていきたい」。ミニゲームではCBに入り、DF陣と積極的に話す場面も見られた。「ポジションにこだわりはない。与えられたところで良いパフォーマンスをしたい。チームに早くなじんで、適応できるようにコミュニケーションを積極的にとっていきたい」と意気込んだ。
◆【THE REAL】植田直通が放つ威風堂々としたオーラ…王者・鹿島アントラーズと日本代表で際立つ存在感(CYCLE)
http://cyclestyle.net/article/2016/06/28/37667.html
記録だけでなく、記憶にも残る夜となった。聖地カシマサッカースタジアムに、21歳にして威風堂々としたオーラを放つ鹿島アントラーズの植田直通の雄叫びがとどろく。
手渡された優勝トロフィーが、天へと掲げられる。それを合図として、頂点に立った選手たちが勝ちどきを響かせる恒例のセレモニーが、6月25日は趣がやや異なった。
■故郷熊本を想いトロフィーを掲げる
ナビスコカップや天皇杯を含めて、セレモニーの音頭はキャプテンが取ってきた。ファーストステージを制したアントラーズも、キャプテンのMF小笠原満男がJリーグの村井満チェアマンからトロフィーを受け取っている。
しかし、小笠原は次の瞬間、植田にトロフィーを託してゆっくりと後列へさがっていった。主役を任された植田が、照れ笑いを浮かべながら舞台裏を明かしてくれた。
「優勝を決めた直後から『熊本の方々がたくさん見ているから、お前がトロフィーを掲げろ』と言われていました。本当に(小笠原)満男さんに感謝したい」
1994年10月24日に熊本県宇土市で産声をあげた植田は、地元の強豪・大津高校から2013シーズンにアントラーズへ入団。お披露目となる入団会見では自身を獰猛なワニにたとえて、周囲を驚かせている。
「ワニは獲物を水中に引きずり込んで仕留める。自分も得意とする空中戦や1対1にもち込んで、相手を仕留めたい」
186cm、77kgの筋骨隆々としたボディ。小学生時代はサッカーとの二刀流で挑んでいたテコンドーで、世界大会の舞台にも立った。高さと強さを身にまとう強面の九州男児が、ひと目をはばかることなく号泣したのは4月16日の湘南ベルマーレ戦後だった。
敵地で行われた一戦で、植田はセンターバックを組んだ日本代表・昌子源とのコンビで、ベルマーレ攻撃陣に何ひとつ仕事をさせなかった。3-0の完封勝利を飾り、お立ち台に呼ばれた直後だった。
「植田選手にとって、今日は特別な思いでのプレーだったと思います。胸の内を聞かせてください」
沈黙が続くこと数十秒。右手で必死に目頭を押さえても、とめどもなくあふれてくる涙を止めることができない。震えながらも何とか絞り出した声に、優勝への決意を込めた。
「僕にはそれしかないので…頑張ります」
■大地震が故郷を襲う
ベルマーレ戦の2日前。故郷がマグニチュード6.5、最大震度7の「平成28年熊本地震」に襲われた。幸いにも家族は無事だったが、時間の経過とともに甚大な被害が伝わってくる。
一夜明けた17日。午前中の練習を終えた植田は、アントラーズのフロントへ熊本行きを直訴。依然として余震が続いていたなかで、18日のオフを含めた1泊2日の強行日程を認めさせた。
被災地の力になりたいと思い立った植田に、小笠原、選手会長のDF西大伍、2年目のFW鈴木優磨をはじめとする若手も胸を打たれる。空路でともに福岡へ入り、陸路で熊本へ向かって飲料水や支援物資を届けた。実は地震が発生した直後から、小笠原はこんな言葉を植田へかけている。
「手伝えることがあれば何でもする。遠慮なく言ってくれ」
岩手県出身の小笠原もまた、2011年3月に発生した東日本大震災に心を痛め、東北出身の選手たちと「東北人魂を持つJ選手の会」を発足。J被災地の救援及び慰問活動に、率先して取り組んできた。
だからこそ植田の気持ちを理解し、行動をともにした。セレモニーの音頭取り役を託した理由も然り。トロフィーを掲げる植田の雄々しい姿が、復興を目指す熊本の力になると背中を押したのだろう。
「僕の家族や友だちを含めてたくさんの人がアントラーズを応援してくれたし、そういう人たちへこの優勝を届けられたことは、本当によかったと思います」
植田はあらためて小笠原への感謝の気持ちを口にしたが、川崎フロンターレとのデッドヒートを制したファーストステージの軌跡を振り返れば、立役者のひとりにあげられる活躍を演じてきた。
■U-23日本代表でも存在感を見せる
センターバックとして15試合に先発してフル出場。欠場した2試合はU-23日本代表に招集され、5月下旬にフランスで開催されたトゥーロン国際大会に出場したことに伴うものだった。
そして、アントラーズが許した失点はわずか「10」。もちろんリーグ最少で、2位のフロンターレとサガン鳥栖に「5」もの差をつけている。完封は半分を超える9試合で、植田はそのうち8試合に出場している。
最終ラインで文字通り壁となって相手の攻撃をはね返し、圧倒的な存在感で畏怖させた。前半に奪った2点のリードを守り、優勝を決めたアビスパ福岡戦を観戦した村井チェアマンも植田を絶賛している。
「あの若さで、あの堂々たる戦いぶり。危ないところもなかったですね」
昨シーズンのセカンドステージは出場わずか2試合、151分間にとどまっていた。ベンチ入りすら果たせない試合が「6」を数えるなど、高さと強さをもてあます状況が続いていた。
ターニングポイントが訪れたのは今年1月。「23歳以下のアジア王者」という肩書を添えたうえで、リオデジャネイロ五輪切符を獲得したU-23アジア選手権でくぐりぬけてきた死闘の数々にある。
手倉森誠監督に率いられたU-23日本代表の前評判は、残念ながら芳しいものではなかった。年代別の世界大会を経験した選手が少ないがゆえに、五輪への連続出場が5大会で途切れるとさえ危惧された。
しかし、U-23北朝鮮代表とのグループリーグ初戦を、最後は防戦一方ながら1-0でものにすると、破竹の快進撃が幕を開ける。開始5分に虎の子のゴールを決めたのは植田だった。
決勝トーナメントではU-23カタール代表を延長戦の末に、最大の強敵だったU-23イラク代表を終了間際の劇的ゴールで連破。U-23韓国代表との決勝では、2点のビハインドをはね返して頂点に立った。
カタールの地から凱旋した植田が漂わせる雰囲気は、明らかに出発前と変わっていた。プレッシャーを背負いながら確固たる結果を残したことで、くすぶっていた自分自身への不安が自信へと昇華したのだろう。
そして、植田はチームから打診されたオフを返上したうえで、自分自身にノルマを課しながら、すでに始まっていたアントラーズのキャンプに合流する。
「アントラーズで試合に出られなければ、リオデジャネイロ五輪の代表に選ばれる可能性も低くなる。本当に大事なのはこれから。オリンピック本番はオーバーエイジもあるし、再び競争も始まる。まずはアントラーズでスタメンを張って、しっかりと結果を出したい」
果たして、アントラーズでも最終ラインに君臨する。昨シーズンのレギュラー、元韓国代表のファン・ソッコがけがで出遅れていなかったとしても、覚醒した感のある植田に軍配があがったはずだ。
昌子とのコンビで鉄壁の守備網を築きあげ、ファーストステージの上位戦線につけていた4月のこと。好調の理由を植田にたずねると、こんな言葉が返ってきた。
「どの試合に出ても、余裕をもって前が見えていると自分でも思っている。やっぱり最終予選。あの試合を戦ってきたことで、余裕ができたのかなと」
他のJクラブの追随を許さない17個ものタイトルを獲得。常勝軍団の歴史と伝統が凝縮されたバトンを握ってきた37歳の小笠原は、かねてからこんな言葉を繰り返し残してきた。
「自分が若いころも上の人に支えられながら、タイトルを取って成長できた部分がある。タイトルを取らなければ見えてこないものがあるし、タイトルをひとつ取れば『またああいう経験をしたい』という気持ちも芽生えてくる。その積み重ねでチームは強くなっていく」
■リーグ優勝、そしてリオデジャネイロへ
ステージ優勝はタイトル数にカウントされないものの、前人未到の三連覇を達成した2009シーズン以来、7年ぶりに「リーグ優勝」と名のつくものを手にする軌跡は、すでにアントラーズのなかに化学反応を起こしつつある。
「優勝を決められる試合で、無失点で勝てたことが嬉しい。ステージ優勝ですけど、アントラーズとしてリーグのタイトルを取れていなかったので。タイトルを取ればみんなの意識も変わると思いますし、僕自身、もっとタイトルが欲しいという気持ちにもなっている。次はセカンドステージ、そして年間チャンピオンを狙って、頭を切り替えて新たなスタートを切りたい」
アビスパ戦は累積警告による出場停止で昌子を欠いていた。出場わずか3試合目となる20歳のブエノを引っ張り、勝ち取った優勝を喜んだのは一瞬だけ。植田は新たな課題を掲げることを忘れなかった。
「失点が二桁にいってしまったので、そこはまた改善しなければいけないところだと思う。セカンドステージでは、もっと減らしていかないといけない」
いざ、セレモニーの音頭を取る瞬間。優勝トロフィーを天へ掲げると見せかけて、植田はまるで悪戯小僧のようにフェイントを二度もかけては周囲を焦らしている。
「すべてクシ君の指示です」
背後にいたU-23日本代表のチームメート、GK櫛引政敏が耳元でささやいていたことを明かした植田は、表情を引き締めながら決意を新たにしている。
「満男さんやソガさん(GK曽ヶ端準)を筆頭に大勢の先輩に支えられていますし、まだまだ吸収していかなければいけないところもたくさんある。すぐに代表活動があるし、頭を切り替えていかないと。オリンピックのメンバー選考も大詰めなので。しっかりと自分をアピールしてメンバーに入れるように準備していきたい」
1月のU-23日本代表を戦ったセンターバックからは、岩波拓也(ヴィッセル神戸)と奈良竜樹(川崎フロンターレ)がケガで戦列を離れている。前者は間に合いそうだが、後者はリオデジャネイロ五輪を断念した。
手倉森監督はオーバーエイジ枠で塩谷司(サンフレッチェ広島)の招集を内定させたが、ケガといっさい無縁で、試合を重ねるごとに成長も遂げている植田が最終ラインの中心を担うことは間違いない。
29日にはU-23南アフリカ代表との国際親善試合が長野・松本平運動公園総合球技場で行われ、7月1日にはリオデジャネイロ五輪に臨む代表メンバー18人が発表される。
4年に一度のスポーツ界最大の祭典を戦い終えれば、年齢制限にとらわれないA代表での戦いへとターゲットが移っていく。すでにバヒド・ハリルホジッチ監督も、植田の存在を気に留めている。
「植田はかなりのポテンシャルがあり、パワーもある。A代表にはパワーが足りないので彼が必要だ」
2年後にワールドカップが開催されるロシアの地への、マイルストーンとなるかもしれないリオデジャネイロでの戦いへ。心技体のすべてを充実させながら、植田の熱い夏が幕を開けようとしている。
◆鹿島が示した勝者のメンタリティ。主将・小笠原満男が積み上げた土台と、土居聖真が担う未来(フットボールチャンネル)
http://www.footballchannel.jp/2016/06/28/post160676/
鹿島アントラーズは、25日に行われたアビスパ福岡との試合に勝利し、1stステージ優勝を決めた。これまで数々のタイトルを獲得したきたキャプテンの小笠原満男は、この優勝に満足することなく、さらなる勝利を求めている。また、土居聖真はクラブの伝統を受け継ぐ存在となりそうだ。
(取材・文:今関飛駒)
主将・小笠原、1stステージ優勝も満足せず
「まだ1stステージを獲っただけなので、本当の意味でのタイトルとは言えないと思いますし、2ndステージも獲ってその先も勝っていくことが本当のタイトルだと思っているので、これに満足することなく勝ち進んでいけるように頑張りたい」
鹿島アントラーズのキャプテン、小笠原満男はアビスパ福岡を下して1stステージ優勝を決めた試合の後、淡々と語った。
相手の福岡は最下位でありながら前節に川崎フロンターレとドローを演じて首位から引きずり降ろしている。序盤の鹿島はミスが目立ち福岡にペースを握られるが、セットプレーから先制点を奪うと、その後は落ち着いた試合展開で相手の反撃を許さなかった。
しかし、Jリーグの“常勝軍団”と呼ばれる彼らも、最後にリーグを制覇したのは2009年。その間にも去年のナビスコカップをはじめいくかのカップタイトルを掲げてきたが、彼らが本当に望むリーグタイトルは6年間も遠ざかっている。
「1stステージ優勝はJリーグ優勝とは思ってないので、年間で勝つことが本当の意味でのタイトルだと思います。すぐ1週間後には試合があるので、Jリーグタイトルという実感はないです」
クラブに数々の功績をもたらした主将は、1stステージ優勝に浮かれることなく、その眼差しは次のタイトルへと向けられていた。
小笠原は、取材を通して何度も「勝ちたい」という言葉を口にしていた。このチームで誰よりも多くの勝利を経験してきたが、この飽くなき勝利への探求心が満たされることはない。
鹿島は常に“勝利”という結果を逆算したサッカーを見せる。それこそがこのチームの真髄でもあるのだ。この試合の小笠原も決して派手なプレーではなかったが、常に周りの選手に声をかけてゲームをコントロールしていた。
内田、古巣の優勝に…「“らしいな”と」
セットプレーから先制点を決めた山本脩斗は、「行けるという感覚はあった。ヘディングは得意としている」と自信を覗かせていた。
福岡戦は『勝てば優勝』というある種の決勝戦ともいえる試合だった。昨年のナビスコカップ優勝で移籍後初めてのタイトルを獲得した左サイドバックは、試合前の雰囲気について教えてくれた。
「練習からそんな気負いとかもなく、普段通り、いつも通りの感じで練習もしてました。1stステージを勝つことでチャンピオンシップの権利を得られますけど、2ndステージもまだまだありますし、あくまでも通過点としかみんな思っていなかったので、普段通り練習して臨みました」
ただ、試合前日の練習には1つだけいつもと異なることがあった。クラブOBである内田篤人(シャルケ)と大迫勇也(ケルン)が参加していたのである。
その内田は、「鹿島は優勝して当然というか勝たなきゃいけないクラブ。僕自身もそう思ってますし、今は(鹿島の)選手じゃないですけど、いちファンとして。勝てない試合をYahooで見ると『何してんだ』っていう気持ちになりますけど、こうやって最後に1stステージで優勝すると、“らしいな”と思います」と古巣の勝利を祝福した。
小笠原は、「昨日の練習でもそうだけど、大迫と内田がチームの中に入ってくれて『こうやって勝つんだぞ』っていうプレーをしてくれたので、そういう伝統っていうのは大事にしていかきゃいけない」と話していた。
クラブに脈々と流れる“勝者のメンタリティ”は確かに受け継がれていたのである。
鹿島の未来を担う土居聖真
植田直通、杉本太郎、鈴木優磨ら若手選手の台頭著しい鹿島において、ユース出身の土居聖真はクラブの未来を担うひとりである。
「隙はなかった思いますし、自分たちがミスしなければやられないっていうのはあった」
1stステージ優勝という結果を振り返り、土居はそう語った。福岡戦でもダメ押しとなる2点目を決め、勝利を手繰り寄せている。
そんな土居は、小笠原について「見習うべき選手。いろんなところを盗んでいきたい」と述べていた。しかし、彼も24歳。“若手”という枠からチームの中核を担う存在となっていかなければならない。
「満男さんには満男さんにしかできないことがありますし、僕らが全部真似をしろと言われてできることではないので、僕らは僕らなりの繋ぎ方をしていきたい」
偉大な先輩を称えつつ、土居は伝統のバトンを繋いでいこうという強い意志を持っていたように感じた。
福岡戦は、クラブに15年半在籍した青木剛のラストゲームでもあった。中田浩二、本山雅志らに続いてまたひとりクラブを支えた選手が去っていくことに、小笠原は「オレにのしかかってくるものは多くなる」と話していた。
しかし、先人が積み上げてきた土台は、確かに若手に受け継がれている。1stステージ優勝という結果は彼らにとって通過点に過ぎない。
それでも、今季鹿島が“本当のタイトル”を掲げることができたのならば、その先には栄華を極める時代が再びやってくるのかもしれない。
(取材・文:今関飛駒)
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