http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00169196.html3月8日(土) 2014 J1リーグ戦 第2節
鹿島 2 - 0 仙台 (19:04/カシマ/15,033人)
得点者:31' 遠藤康(鹿島)、90' 遠藤康(鹿島)
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3.11を前に東日本大震災で被災した鹿島と仙台が対戦した。そこにどういう意味を見出すのかは人によってそれぞれだろう。東北地方の復興は1割も進んでいない状況だが、その場にいない者にとっては、あの恐ろしい出来事も風化してしまう。放っておけば薄れていく震災と、どう向き合えばいいのかはじつに難しい問題だ。しかし、サッカーを通じてではあるが、両チームの選手や監督が残す言葉は、そのヒントを与えてくれるだけでなく、前を向く勇気も与えてくれる。
仙台のグラハム アーノルド監督は「今日の試合は特に自分たちのためだけではなく、地震や津波で犠牲になった宮城や福島といった地方の代表として戦うんだ」と選手たちに伝えたという。それは、仙台の選手だけでなく、鹿島の選手たちも同じ気持ちだったはずだ。
そして、鹿島のトニーニョ セレーゾ監督は、被災した経験がないからこその言葉を残した。少し長くなるが紹介したい。
「残念と言っていいのか幸いと言っていいのかわかりませんが、正直に申し上げると、震災を体験していないので心の痛みを経験していません。ただ、映像やニュース、写真、そして、当時は僕も来日して皆さんと触れあいましたけど、その表情は非常に苦しいものがあり、人間が体験しなくてよいものだったと実感しました。ただ、人間というのは生まれたときからいろんな困難な状況を迎え、それを乗り越えるものだと考えています。日本は戦争を経験し、そのあと国を再建し、世界に大きな影響力を持つ国になりました。2011年に亡くなられた方に関しては心が痛いし、悲しい気持ちになりますが、生きる権利を与えられた人たちは強くなって生き続けて欲しい」
試合はどちらのチームからも、特別な気持ちを感じるものだった。
前半のペースを握ったのは鹿島。意気込みが強すぎて、小笠原満男も柴崎岳も前に飛び出し、CBの前にぽっかりスペースができてしまうほど、前に前に、という意識が強かった。31分に中盤で奪ったボールを繋げて遠藤康が先制点を奪い先手を取る。前半終了間際には、右サイドからのクロスをウイルソンに合わせられるも、曽ヶ端準が立ちふさがりゴールを許さなかった。
しかし、後半に入ると一転して仙台がペースを掴む。前半はボランチの鎌田次郎がCBの間にポジションを下げ、両SBを高い位置に押し上げるビルドアップで攻撃の糸口を探ったが、これが上手くいかなかった。そのため後半からは、流動的に動きながらパスを繋ぐ形にしたことが功を奏する。ときにはサイドに流れて数的優位をつくるようになると、次々とサイドから攻撃を仕掛け鹿島の守備陣をゴール前に釘付けにする。
ただ、鹿島の守備陣にとってはそうした攻撃は織り込み済み。サイドは許すものの中央ではしっかり跳ね返すことを徹底して練習してきた成果を見せ、中央で待つウイルソンだけでなく、途中交代で投入された赤嶺真吾にも自由を与えなかった。
すると90分に、左サイドに流れたロングボールにいち早く追いついたダヴィがカウンターを仕掛けると、最後は逆サイドへのクロスに遠藤が走り込んでダメ押しの得点をあげ勝敗は決した。
この勝利により鹿島はJ1通算400勝を最速で達成。記念すべき勝利を2014年のホーム開幕戦であげることに成功した。
敗れた仙台の選手からは「去年に続きここでは鹿島さんに負けてしまったので、今度はホームで勝ちたい」(渡辺広大)という声が聞かれた。ただ、前半シュート1本に抑え込まれたなかで、後半の反撃は見事だった。
「震災から3年、Jリーグがこういうカードを組んでくれてメッセージがたくさんの人に伝わったと思う。被災した方々には早く日常を取り戻せることを願っています」
そう小笠原満男が言ったとおり、両チームのがんばりは見ている人たちになにかを残すものだった。
以上
2014.03.09 Reported by 田中滋