YBCルヴァンカップ 準々決勝 第2戦
鹿島、ルヴァン杯準々決勝敗退。ホームで逆転勝利も、2試合合計スコアで及ばず。
ルヴァン杯は準々決勝敗退に終わった。4日前の第1戦で負ったビハインドを挽回すべく、ホームで迎えた第2戦。鹿島は後半立ち上がりまでに2失点を喫し、逆転突破のためには5得点が必要な状況に追い込まれた。鈴木の2ゴールと安部のゴールで3-2と勝利は収めたものの、2試合合計4-5で敗退が決まった。
4日前、鹿島は杜の都で苦しい90分を刻んだ。ユアスタでの第1戦、1-3。警戒していたはずのセットプレーから2失点を喫し、2枚のレッドカードで数的不利にも陥った。途中から降り始めた激しい雨、繰り返されるボディコンタクトとブーイングの嵐。肉弾戦を終え、1-3という屈辱の結果が残った。ただそれでも、土居が突き刺してみせた意地のアウェイゴールがチームに勇気を与える。選手たちを出迎えた指揮官は、「絶対に勝ち抜くんだ」と、ロッカールームで鼓舞した。逆転突破だけを見据えて準備を進める日々が始まった。
8月31日。鹿嶋へ帰還した選手たちは、リカバリートレーニングやミニゲームに臨んだ。日本代表で不在の昌子と植田に加えてブエノとレアンドロが出場停止となり、さらに先発メンバーの枠が2つ空くこととなる。激化する競争意識、そして勝利への渇望を胸に、選手たちはボールを追い続けた。負傷離脱中のペドロ ジュニオールや小田、町田らを除くと、ピッチに立てる状態にあるのは20選手のみという苦しい台所事情。だが、永木と安部の戦列復帰という明るい材料もあった。まさに総力戦。土居は「今いるメンバーで戦うしかない。チーム力が問われる戦いになる」と、チーム一丸での準決勝進出を誓っていた。ユアスタでの敗戦後、逆転突破への意志を声に乗せて届け続けた背番号12とともに、聖地での大一番に臨む。
大岩監督は「いつもと違うポジションでやってもらう選手もいる。試合の中でどんどん修正して、ポジティブに捉えることによって、周りが良い反応をしてくれると思う。積極的にやってもらいたい」と、選手たちに自信を植え付けてピッチへ送り出す姿勢を強調した。中3日で迎える第2戦へ、メンバー変更は5名。GKに曽ケ端を復帰させ、右サイドバックに伊東、左サイドバックに三竿雄斗を指名。2列目には中村、前線には金崎が復帰した。ボランチは小笠原とレオ シルバのペア、攻撃陣には遠藤と土居が入り、本職不在のセンターバックは健斗と山本がコンビを組む。そしてベンチには、GKのクォン スンテと久保田、梅鉢、鈴木、金森、さらに帰還を果たした永木と安部が座る。
9月最初のホームゲームは、穏やかな気候に恵まれた一日となった。勝利、そして逆転突破を信じて、背番号12が続々と聖地へ足を運ぶ。ウォーミングアップに向かう選手たちに降り注がれた大きなチームコール。サポーターの情熱を全身で受け止めた選手たちは、決意に満ちた表情で身体に熱を送っていた。
18時3分、キックオフのホイッスルが鳴り響いた。ホームで攻勢をかけたい鹿島だったが、立ち上がりはミスが目立ち、なかなかペースを掴むことができない。ボールロストから仙台に押し込まれる時間が続き、ゴール前まで進出されてしまった。
そして6分。ペナルティーエリア手前でのファウルからFKを与えると、三田に直接決められてしまった。是が非でも欲しかった先制点を奪われる最悪の展開で、2試合合計1-4。鹿島は3得点を奪わなければならなくなった。
時計の針が進む中、少しずつ中盤での落ち着きを取り戻していった鹿島。しかし、人数をかけて守備ブロックを形成する仙台を攻略することができない。中盤でボールをキープしても、プレスを受けてパスをカットされたり、最終ラインへ戻さざるを得なくなったりと、効果的な攻撃を仕掛けることができなかった。
ようやく放ったファーストシュートは20分だった。土居がペナルティーエリアの外から狙ったが、相手GKの正面を突いてしまう。21分には遠藤がエリア手前から狙ったが、左足で狙った一撃は相手DFにブロックされた。中長距離からのシュートで突破口を見出そうと腐心したが、仙台を脅かすには至らなかった。
閉塞感が聖地を包む。25分には仙台に右サイドを突破され、低いクロスがファーサイドへ流れたところへ詰められて絶体絶命のピンチ。至近距離から無人のゴールへ押し込まれそうになったが、シュートは枠を越えた。1点差のまま、前半は終盤に入った。
35分以降、鹿島は左サイドでのボールキープから攻撃の糸口を探した。雄斗がオーバーラップを繰り返し、深い位置まで進出してクロスを送る。37分、40分とグラウンダーのボールをゴール前へ供給したが、シュートにはつながらなかった。それでも44分、みたび背番号15が攻撃参加。正確なクロスをファーサイドへ通し、中村が右足で合わせたものの、フリーの状態から放たれたシュートは枠を捉えることができなかった。0-1、2試合合計1-4。厳しい状況に追い込まれ、前半が終了した。
少なくとも3得点が必要な後半に向けて、聖地に駆け付けた背番号12はピッチへと声を送り続けた。15分間のハーフタイム、ゴールと勝利を渇望するチャントが止むことはない。ともに戦うサポーターとともに、逆転突破を目指す後半45分が始まった。
しかし、鹿島の走路は暗幕に覆われた。開始早々、相手のドリブル突破に対応した雄斗がペナルティーエリア内でファウル。PKを与え、西村に決められてしまった。これで2試合合計1-5。2つ目のアウェイゴールを奪われ、逆転突破のためには残り40分強で5得点が必要な状況となった。
攻めるしかない鹿島は、ハーフタイム明けからピッチに立った鈴木が意地のゴールを決める。58分、右CKからこぼれ球を右足で蹴り込み、ゴールネットを揺らした。さらに大岩監督は61分に安部を投入し、煌めく才能に攻撃の活性化を託した。背番号30は縦横無尽にピッチを駆け、鹿島はさらに加速していった。
途中出場からわずか4分後、安部がスコアを刻んだ。65分、遠藤からのスルーパスに反応して最終ラインの背後を取ると、ペナルティーエリアに入って左足シュート。相手GKとの1対1を制し、ゴール右隅へ突き刺した。これで2-2、2試合合計3-5となった。
運動量の落ちた仙台に対し、鹿島はボールポゼッションと敵陣でのプレーを続けた。79分には負傷からの復帰を果たした永木が投入され、左サイドバックへ。すると4分後、敵陣左サイドでボールを持った背番号6が右足でクロスを送り、ファーサイドの鈴木がヘディングシュートを突き刺す。これで3-2。2試合合計4-5となり、残り10分弱で2得点を目指すこととなった。
しかし、鹿島の反撃はこれまでだった。残されたプレータイムが刻一刻と減っていく中、セットプレーやクロスボール、そしてミドルシュートでゴールを狙ったものの、ネットを揺らすことはできず。3-2での逆転勝利は何の喜びももたらさなかった。2試合合計4-5。準々決勝敗退を告げるホイッスルが鳴り響き、鹿島はタイトルを1つ失った。
ルヴァン杯準々決勝敗退。不甲斐ない事実を受け止め、チーム全員で奮起しなければならない。次戦は1週間後、9月9日のJ1第25節の大宮アルディージャ戦だ。再びカシマで迎える一戦、残り10試合となったリーグ戦の首位を走り続けるべく、勝ち点3を掴み取るべく、チームはトレーニングを積み重ねていく。
【この試合のトピックス】
・ルヴァン杯に名称が変更されてから、鹿島が初めて勝利を収めた。
・仙台との今季公式戦は4試合目で、3勝1敗となった。
・曽ケ端が公式戦2試合ぶりの先発復帰。ルヴァン杯通算出場数を77試合とし、歴代5位タイとなった。青木(鳥栖)と新井場氏が78試合で歴代3位タイとなっている。
・途中出場の安部が1得点。ルーキーながら、J1、ルヴァン杯、天皇杯の国内三大大会全てで得点を挙げた。クラブ史上初の記録。
・三竿雄斗が6月21日に行われた天皇杯2回戦以来の先発、公式戦出場を果たした。
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・シンプルにボールを動かして、サイドを効果的に使って攻める事。
・1対1の戦い、セカンドボールへの競り合いを絶対負けないようにしよう。
・ここからの45分、顔をあげて自分たちのやるべきことを整理し、攻撃にいこう!
ベガルタ仙台:渡邉 晋
・冷静にゲームを進めよう。
・ボールホルダーにしっかりプレッシャーをかけよう。
・シュートで終わろう。
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
前半と後半の立ち上がりにセットプレーで失点してしまった。後半は非常にいい形でゲームを支配したが、勝ち抜くことができなかった。後半に限ってだが、選手たちがすばらしいプレー、連続性を見せてくれたことは、非常に評価している。気持ちを切り替えて、リーグ戦、天皇杯にこの悔しさをぶつけていきたい。
Q. 収穫はあったか?
A. 第1戦、第2戦と仙台のアプローチの速さ、アグレッシブさはすばらしかった。素直に勝ち上がった仙台におめでとうと言いたい。うちの選手に関していえば、交代で入った選手がリズムを変えたり、攻撃の面ではプレーのスピード、精度を上げてくれた。チーム全体もアグレッシブさを出せた。そのあたりはリーグ戦、天皇杯につながると思う。また、センターバックでこの2試合プレーした選手、今日は山本脩斗のプレーを非常に評価している。
Q. 第1戦からディフェンスラインで修正した点は?
A. うちの守備はアグレッシブに前から行くのが特長。仙台の攻撃を制限しながら守備をしていくやり方だった。うまくサイドを使われ、押し込まれる部分もあったが、想定内だった。そこから相手のウィークポイントを突いていくやり方で、そこはうまく出せたと思う。
ベガルタ仙台:渡邉 晋
前回カシマスタジアムで戦ったときは霧の中、何もできず0-2で敗れてしまった。今日もサポーターがたくさん来てくれて、最後まで応援してくれたことに感謝している。クラブ史上初のベスト4進出を決めたが、喜びは半分。正直、今日のゲームも勝って終わらなくてはいけなかった。アントラーズの猛攻、圧力は十二分に予測できたが、冷静に振り返ればカウンターで相手のゴールを仕留められたはず。3失点も久々。やられ方の反省が必要だ。しかし、ここまで来られたことは、間違いなく成果だと思う。前向きに反省、修正して次のリーグ戦に向けて準備したい。
選手コメント
[試合後]
【安部 裕葵】
もっと一つひとつのプレーにこだわっていかないといけないと感じた。アントラーズは三冠を狙っているチーム。それがダメになってしまって本当に残念。たくさん反省して、しっかりと切り替えたい。この負けがあったから、リーグ戦と天皇杯を獲れたと言えるようにしたい。残念です。
【土居 聖真】
FKでの失点のダメージが大きかった。細かい部分の甘さがあった。全員に悔しさがあると思う。今後の練習や試合、自分のプレーにぶつけていかないといけない。
【山本 脩斗】
自分の入り方が悪かった。立ち上がりからうまくいかなかった。声を出しながら前の選手を動かすことを意識していたけど、もっとできなければいけなかった。この悔しさを次にぶつけないといけない。
【伊東 幸敏】
少しバタバタしてしまって、1失点目のダメージが大きかった。前半を無失点で終えたかったけど、うまくいかなかった。
【三竿 雄斗】
15分、20分が過ぎてからは、追い越してボールを受ける動きもできていたけど、得点につながらなかったことが課題。PKも取られてしまった。下を向くのではなく、この悔しさをぶつけてチームに貢献できるようにしたい。
2017JリーグYBCルヴァンカップ 準々決勝 第2戦