鹿島アントラーズは28日、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)準々決勝1stレグで中国の天津権健を相手に2-0で先勝した。アウェイでの2ndレグを残してはいるが、試合内容はスコア以上に圧倒的なものだった。鹿島はこのまま次のステージへ駒を進めることができるのだろうか。(取材・文:ショーン・キャロル)
不安を吹き飛ばしたレオ・シルバの一撃
準々決勝がこれほど一方的な試合となることは珍しい。
火曜日の夜に行われたAFCチャンピオンズリーグ準々決勝1stレグの試合で、鹿島アントラーズは天津権健を一蹴してみせた。9月18日の2ndレグを残してはいるが、大岩剛監督のチームの圧倒ぶりは2-0というスコアでも全く釣り合わないほどのものだった。
動きの鈍いアウェイチームに対し、アントラーズは意欲溢れるプレーで守備網を突破。前半のほとんどの時間を通してパウロ・ソウザ監督のチームを自陣に釘付けとし、最初の30分間だけで7本のCKを獲得していた。
しかし、その優位をなかなか活かすことはできなかった。スコアレスでハーフタイムを迎えると、この試合も日本のチームのよくあるパターンに陥ってしまうのではないかという不安が頭をもたげてきた。決定力を欠いてチャンスを無駄にしてしまい、より冷徹な相手チームにやられてしまうというパターンである。
だが後半になりプレーが再開されるとすぐにその不安は吹き飛ばされた。前半と全く同じ流れのまま後半に入り、圧力を強めていくアントラーズに対して天津は何の抵抗も見せることはなかった。
結局60分にはその攻勢が報われる。遠藤康がヘディングでエリア内に落としたボールに反応したレオ・シルバがGKジャン・ルーを破って強烈なシュートを突き刺し、ホームゲームが内容に見合うリードを奪った。
クロスは驚異の46本。スタッツで圧倒
天津はビハインドを背負っても全く反撃に転じる様子を見せず、12分後にはセルジーニョが同胞レオの後に続く。追加点となるライフル弾を突き刺し、鹿島はやや余裕を持って第1戦を折り返すことができた。
「前半はかなり攻めていましたが決めきれませんでした。それでも我慢して自分たちのやりたいプレーを続けたことが2得点に繋がりました」と山本脩斗は試合後に話していた。
「天津を抑えるためにやるべきことを全てやっていたので、攻めに出る時にも落ち着いてプレーを続けることができました。ホームで自分たちのやりたいサッカーをして無失点に抑えられたので、次の試合に繋がる結果が出せたと思います」
Jリーグで8度の王者となっているチームは圧倒的優位に立った。だがもちろん、中国での戦いは決して簡単なものではないだろう。
今回の試合では90分間にわたって圧倒的に試合を支配し、ボール保持率は68.3%に達した。パス数は天津の214本に対して437本と2倍以上。パス成功率は80.3%を記録し、試合時間の83.4%は中盤あるいは天津陣内でプレーが行われていた。
さらにCK数は天津の1本に対して15本を獲得。クロス数は天津の10本に対して驚異の46本を供給し、シュート数も21本対10本と2倍以上だった。
それでも後半終了間際にはひやりとする場面もあった。山本のらしくないクリアミスでヤン・シューにボールが渡ってしまったが、クォン・スンテの見事なセーブがシュートを阻む結果となった。
こういった油断をなくすことこそが、来月の天津での試合に向けて大岩監督が選手たちに強く要求したい部分だろう。特に試合の序盤には、天津は多少の無理をしてでも攻めに出てくることが予想される。
エースのアレシャンドレ・パトも、2ndレグではチームが今回のような消極的な戦いを見せるとは思っていないはずだ。鹿島での試合後には冷静な様子を見せていた。
「確かに僕らは負けたが、まだホームでもう1試合ある。今日よりは良い戦いができるはずだ」とAFC公式サイトがパトのコメントを伝えている。
「2-0で終わったわけじゃない。まだ1試合ある。ホームではもっと集中してベストを尽くせるようにしなければならない」
かつてミランで活躍したスター選手は、試合に向けた天津の準備が理想的とは程遠いものだったことも説明している。当初予定していた試合2日前の飛行機には乗れなかったという。その影響は確実にあったように感じられた。パフォーマンスに精彩を欠いた理由はある程度説明できそうだ。
「到着したのは試合前日だ。それが良くなかった。2日前には到着する必要があったが、移動にちょっとした不都合があった。言い訳をするわけではないが、足を休める時間が2日間あるなら1日だけよりも戦いやすいのは当然だ」
天津での試合に良い形で入ることができれば、鹿島を下して勝ち進むことはまだ可能だとパトは考えている。
「考えなければならないのは次の試合のことだ。良い形でスタートして、力を出し切れるようにすることが必要だ。その上で得点することを考えなければならない」
「もちろんホームでは優位に戦うことができる。サポーターの前でベストを尽くせるようにしたい。今日は相手の方が良い戦いをしていたが、まだもう1試合残っている」
だがいずれにしても現状では、鹿島がクラブ初となるアジアの準決勝の舞台に進むことができるかどうかは自分たち次第だろう。
(取材・文:ショーン・キャロル)
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