YBCルヴァンカップ 準決勝 第2戦
土居とセルジーニョが反撃弾も、1点及ばず。鹿島、ルヴァン杯準決勝敗退。
3年ぶりの聖杯奪回を目指す道のりは、ベスト4で終焉を迎えた。JリーグYBCルヴァンカップ プライムステージ準決勝第2戦。横浜F・マリノスとのアウェイゲーム、ニッパツ三ツ沢球技場に乗り込むと、前半に負った2点のビハインドを土居とセルジーニョのゴールで挽回したものの、逆転には至らず。2-2で引き分け、1分1敗で敗退が決まった。
4日前、聖地で迎えた“前半90分”は心の底から悔しい結果に終わってしまった。直接FKで先制を許すと、後半アディショナルタイムに犬飼が意地のヘディングシュートを突き刺す。しかし直後、再びセットプレーからネットを揺らされてしまった。1-2。アウェイゴールを2つ失い、痛恨の敗戦を喫した。
犬飼は悔しさを滲ませながらも「次は中3日ある」と前向きのベクトルを放っていた。息つく間もない連戦を突き進み続けてきたチームにとって、3日間の準備期間は貴重なものとさえ言える。「このような日程に慣れているのは、自分たち。突破する力がこのチームにはある」。フル稼働を続ける背番号39は信頼と決意を刻み、敵地へ向かう道のりに足を踏み入れた。
逆転突破への準備は、翌朝のトレーニングから始まった。第1戦で無念の負傷に見舞われ、離脱を強いられることとなった内田と中村の思いとともに、選手たちは集中力を研ぎ澄ましていく。着々と状態を整えてきた昌子も完全合流を遂げ、待望の帰還へと歩みを進めていった。
試合前々日、指揮官は入念なミーティングを実施した。そして聞こえてきたのは、アントラーズスピリットの真髄が放った情熱だ。ジーコがチームに檄を飛ばし、緊迫感が張り詰める。そして厳しい寒さに見舞われた土曜日、クラブハウスのグラウンドは熱を帯びていた。横断幕やフラッグが選手たちを熱く鼓舞し、セットプレー練習は激しさを増していく。
前日練習を終え、安西が仲間への思いを語った。「決勝に進出して、この試合に出場できない選手の舞台を整えてあげたい」。敵地での第2戦、鹿島の任務は明確だ。複数得点差をつけて勝つこと。3得点以上を決めて勝つこと。安西は「ガンガン行く」と、勝利への渇望を隠そうとはしなかった。思いは一つ、絶対に突破してみせる――。
中3日でのアウェイゲームへ、大岩監督は3名の先発変更を断行した。最終ラインに西と山本を起用し、両サイドバックを入れ替える形に。さらに前線には金森を指名し、ゴールへの希望を託した。その他、GKは曽ケ端、センターバックは犬飼と町田がコンビを組み、ボランチはレオ シルバと永木のペア。攻撃陣は遠藤と安西、土居が金森とともにゴールを狙う。そしてベンチにはGKのクォン スンテ、復活を遂げた昌子、小田、小笠原、セルジーニョ、田中、山口が座る。
決戦の日曜日、冷たい雨は朝のうちに止んだ。大一番を待ちわびるかのように、キックオフが近づくにつれて青空も見えるようになった。大一番の舞台は、チケット完売の三ツ沢。決勝進出を懸けた大一番へ、アントラーズレッドが続々と足を運んでいく。ウォーミングアップへと姿を現した選手たち、そこへ降り注がれるチームコール。ホーム側スタンドを凌駕する情熱が響き渡り、ボルテージが高まっていく。そして14時4分、ホイッスルが鳴り響いた。
アウェイゴールを、そして勝利を目指して戦う鹿島は立ち上がりから果敢に攻撃を仕掛けた。永木とレオを起点に、両サイドの背後を狙う動き出しで相手を押し込んでいく。7分には敵陣左サイドで土居が粘り、パスをつないで安西がクロス。金森が反応してペナルティーエリア左奥への突破を狙ったが、背後から押されて倒されたプレーに笛は鳴らなかった。
最初の決定機は10分。相手のCKからカウンターを発動し、右サイドでのパス交換からレオが中盤のスペースを突破する。左サイドを駆け上がっていた永木と金森を経由し、ペナルティーエリア中央へスルーパス。走り込んだ安西が狙ったが、飛び出してきた相手GKにコースを消され、シュートは阻まれてしまった。
立ち上がりにチャンスを作り出した鹿島だが、15分を経過した頃から激しいボディコンタクトの応酬からオープンな展開となると、横浜FMに深い位置まで進出される場面が増えていった。そして20分、この日最初のスコアは敵のものだった。鹿島陣内左サイドからの攻撃、ミドルシュートはペナルティーエリア内でブロックしたものの、こぼれ球をウーゴ ヴィエイラに拾われて右足シュートを決められる。0-1、2試合合計1-3。重要な意味を持つ先制点を、今日も奪われてしまった。
失点したとはいえ「複数得点を奪って勝つ」という任務は変わらない。鹿島はボールポゼッション率を高め、両サイドを使ったパス交換で突破口を見出そうと腐心した。金森や土居が最終ラインの背後を狙い、遠藤と西、安西と山本の連係からサイドの攻略を試みる。だが、決定機を作るには至らなかった。33分、土居がペナルティーエリア左奥でボールをキープし、鋭い切り返しから中央へパス。走り込んだレオのシュートはしかし、枠を越えてしまった。
すると直後の34分、再びゴールネットを揺らされてしまった。ペナルティーエリア右奥へのスルーパスからゴール前へ折り返されると、仲川に押し込まれて0-2。2試合合計スコアは1-4となった。
トータルスコアで3点のビハインドを負った。鹿島が逆転突破を決めるためには、ここから3得点以上を奪って勝利を収めることが必要だ。条件はより明確になった。勝利を渇望する情熱を注ぎ続けるビジタースタンドとともに、残り45分に向かう。
大岩監督はハーフタイム明けからセルジーニョを投入。土居を中盤に下げてスペースメイクとゲームコントロールを託し、ゴールを奪いに行った。49分には金森が相手GKに猛然とプレスをかけ、体を投げ出す。ボール奪取には至らなかったが、ビジタースタンドの声量が一段と大きくなった。
54分には遠藤のFKから町田がヘディングシュートを決めたが、オフサイドの判定で得点は認められず。それでも落胆する時間などない。カウンターに晒されながらも必死に耐えしのぎ、鹿島は攻勢をかけ続けた。59分には西のクロスからセルジーニョがヘディングシュート。相手DFにブロックされたが、得点の可能性を漂わせてみせた。
61分、大岩監督は山口を投入。獲物を狙うかの如く、貪欲な突破を繰り返す若武者が鹿島を加速させる。そして62分、反撃の得点が決まった。相手のゴールキック、ショートパスを逃さなかった土居がプレスをかけると、ペナルティーエリア内から左足で突き刺す。1-2。第1戦の悔しさを胸に、背番号8が意地のスコアを刻んでみせた。
1点差に迫り、鹿島は猛攻を仕掛けた。67分、山口が左サイドの突破から強烈な左足シュート。そして70分、2つ目のスコアが刻まれた。山口が左サイドでボールを持ち、背後へスルーパス。走り込んだ安西のクロス、合わせたのはセルジーニョだった。ヘディングシュートでネットを揺らし、スコアは2-2に。トータルスコアのビハインドは1点となった。
ビジタースタンドの声量はトリコロールを凌駕していた。あと1点を取れば、トータルスコアで並ぶとともにアウェイゴール数で逆転できる。鹿島はさらに圧力を高めた。81分には山口が右サイドから高速クロスを供給し、金森が飛び込んだもののわずかに届かない。84分には昌子が復活のピッチに立ち、犬飼を高い位置へ上げるパワープレーを敢行。必死に攻め続けた。
だが、及ばなかった。4分と表示されたアディショナルタイム、ラストプレーでは曽ケ端も攻撃参加。セルジーニョの右CKに全ての願いが込められたが、アントラーズレッドが沸騰することはなかった。2-2、2試合合計3-4。1分1敗で準決勝敗退が決まった。次戦は6日後、20日に行われるJ1第30節の浦和戦だ。2ヶ月ぶりに確保された、中5日の準備期間。埼スタで勝利を掴むべく、準備を進めていく。そして24日にはACL準決勝第2戦が控えている。これからも連戦は続く。タイトルを失った悔しさは、タイトルを獲ることでしか晴らせない。失意の中で叫ばれたチームコールを背中に受け、進むしかない。
【この試合のトピックス】
・曽ケ端がルヴァンカップ通算81試合目の出場を記録。栗原(横浜FM)に並び、歴代3位タイとなった。
・土居が今大会初得点、セルジーニョが2得点目を挙げた。
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・攻撃の時、相手のボックスわきをシンプルに使おう。
・ボールを奪ったらサイドチェンジを有効的に使っていくこと。
・ここからの45分が勝負。もう一度ギアを上げ、得点を奪おう!!
横浜F・マリノス:アンジェ ポステコグルー
・守備はコンパクトに。
・攻撃はテンポよく。
・後半、開始10分、パワーを持って入ろう。
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
前半の入り方や失点をしてしまった部分が響いてしまった。後半は少しアプローチを変えたが、選手たちはいい姿勢でやってくれたと思う。最後の一押しができなかったことが残念。優勝を狙っているクラブなので、この悔しさを次に活かそうという話を選手たちにした。しっかりと切り替えて、次のリーグ戦に向かいたいと思う。
Q.後半にセルジーニョ、山口を投入した意図と両選手への評価は?
A.0-2でリードされている状況で、前線からアグレッシブに行く。彼らを入れて、配置も少し変えた。前半にやられていた中盤を厚くすることを目的として投入した。非常によくやってくれたと思う。彼らだけではなく、ポジションが変わった選手や普段はやっていないポジションを務めた選手も、しっかりと意図を汲んで把握したうえでプレーに反映させてくれたと思う。非常に評価している。
Q「いい守備からいい攻撃」と言っている中で2失点したが、複数得点が必要な状況でバランスが崩れてしまったのか?
A.相手のボールの動かし方に対して、自分たちが先に動いてしまった。先に動かされてしまった。しっかりとしたポジショニングから守備をすることができなかった。後半は先にポジショニングを取ることで、先手を取る守備をしようと。前半は後手を踏んでしまった印象で、自分たちのボールロストが失点を招いてしまったので残念に思っている。
Q.タイトルは残り3つとなったが
A.どのクラブもそうだが、シーズンの佳境に入ればケガ人やコンディション不良の問題は出てくる。毎回言っているが、総力戦であるということ。誰が出ても同じプレー、同じコンセプトでやっていく。トレーニングを積めない中で、試合に向けて準備をしていく。それはシーズン序盤からずっとやっているので、それを継続するということ。昌子のように、ケガ人が戻ってくることもある。彼らを試合の中に入れていきながら、しっかりとコンディションを上げていく。しっかりとリカバリーをして、頭と体を切り替えていく。今まで4つの大会を戦ってきた。これからは3つの大会を戦うことになるが、それは我々だけなので、責任とプライドを持って向かっていきたい。
横浜F・マリノス:アンジェ ポステコグルー
目標は達成できた。両チームとも全てを出し切った。前半は自分たちのゲームができた中で、後半はアントラーズが伝統的に強いということがわかる内容で、かなりのプレッシャーを受けた。それでも目標は達成できた。
選手コメント
[試合後]
【土居 聖真】
後半が始まる時に「トップ下に入って、間で受けて仕掛けろ」と監督から言われていた。後半はうまくいったと思うし、流れはこっちにあった。1戦目や前半から決められれば、違った結果になったと思う。誰が出ても今日の後半のような試合をしないといけない。厳しい状況が続くけど、チーム一丸となってまた戦っていきたい。
【安西 幸輝】
前半の戦い方で決まってしまった。自ら逃した形になった。個人的にはオーバーラップもできていたし、アシストもできたけど、結局勝てていない。今年一番きつい結果になってしまった。今後、どうサッカーをするのか、みんなで示していかないといけない。これを糧に、次からまた勝っていきたい。
【西 大伍】
ひっくり返すという気持ちで試合に入って、みんなで戦った。先に取りたかった。立ち上がりはよかったと思う。第1戦よりも前から行けていたし、リスクを負って出ていった。そこで1点が欲しかった。
【山本 脩斗】
切り替えて次に向かうしかない。後半も誰も諦めていなかった。最後まで、3点目を取りに行こうというところは出せたけど、あと1点が足りなかった。まだリーグとACLと天皇杯がある。切り替えて準備をしていきたい。
【曽ケ端 準】
前半は思うようにいかなかった。2点を取らなくてはいけない状況で試合に入ったけど、それでバランスが崩れたわけではない。追加点を取られたので、バタバタしたと思われてもしょうがない。失点後も時間はあったので、なりふり構わずという感じではなかった。タイトルを逃したのは事実。ここから残りのタイトルにどう持っていけるかだと思う。
【犬飼 智也】
2試合とも、隙を作ってしまった結果だと思う。自分たちから前から奪いに行こうと言っていた。前半は少し中途半端になってしまった。課題はいっぱいある。責任も感じている。2点を取れる力はあるので、後ろが無失点で抑えなければいけなかった。
◆2018JリーグYBCルヴァンカップ プライムステージ 準決勝 第2戦(オフィシャル)