日刊鹿島アントラーズニュース

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2020年1月31日金曜日

◆鈴木優磨、19/20前半戦の評価は? 二桁得点も視野に。エース格に定着、監督交代も信頼失わず【欧州日本人中間査定(18)】(フットボールチャンネル)



鈴木優磨 Yuma.Suzuki



新年を迎え、2019/20シーズンは後半戦へと突入した。欧州各国でプレーする日本人選手たちはどのような活躍を見せたのか。今回は今季からシント=トロイデンVVでプレーする鈴木優磨の前半戦を振り返る。(文:編集部)


スロースタートも徐々にエース格へ


 満を持して海を渡ってベルギー1部のシント=トロイデンVVに加入したFW鈴木優磨だが、2019年上半期は負傷の影響もあって鹿島アントラーズでの公式戦出場が1試合もない状態だった。

 ベルギーでもしばらくはベンチ外が続き、8月末の第6節オイペン戦で途中出場を果たしようやくリーグ戦デビューを飾る。そこから主力へ定着するのに時間はかからなかった。

 リーグ戦初先発となった第8節のシャルルロワ戦で初ゴールを挙げると、味方選手の負傷によって前半途中に急きょ出番が回ってきた第9節のゲンクとのダービーマッチでも存在感を発揮し3-3のドローに貢献する。

「もうちょい絡んでいけて、もうちょいゴール前で力を発揮できるようになれば、点を取っていけるんじゃないか」

 荒れに荒れたダービーマッチの後、明るい展望を語った鈴木はそこから徐々に2トップの一角へ定着していく。出遅れはしたものの、チームメイトたちとの相互理解が進んでいき、味方との連係がスムーズになっていくとともに、決定的なチャンスに絡む回数も増えていった。

 ベルギーリーグはシーズン終盤にプレーオフがあるため、2019年のうちにレギュラーシーズンの3分の2が終わる。シント=トロイデンVVは11月待つにマーク・ブライス監督を解任するなど下位で苦しんでいたが、鈴木は相方のコートジボワール代表FWヨアン・ボリとともにチームを引っ張った。

 ブライス監督解任直後の王者ゲンク戦では、鈴木が決勝ゴールを奪った。背番号9の日本人ストライカーは左サイドに流れてシンプルなボールキープで攻撃の起点となり、そのままゴール前まで侵入。最後は右サイドからのクロスに、相手GKと交錯しながら頭で合わせてゴールネットを揺らした。


監督交代でもスタメンの座は譲らず


 昨季、シント=トロイデンVVの前線をけん引していたFW鎌田大地は、新年を迎えるまでにリーグ戦二桁得点を達成していた。12月はややトーンダウンした感があったものの、10月や11月はほとんど毎試合のようにゴールを決めて、チャンピオンズリーグ出場権を争えるプレーオフ1進出目前までチームを押し上げた。

 鈴木は「(鎌田と)同じ時間を与えられれば、俺は絶対に超えられると思っているので。スタメンで出れば絶対に(ゴールを)取れる」と豪語したが、まだ先代エースの領域には達していない。それでも後半戦のパフォーマンス次第では渡欧1年目でのリーグ戦二桁得点は十分に視野に入ってくるだろう。

 そして、シント=トロイデンVVの浮沈は鈴木が握っていると言っても過言ではない。冬の移籍市場でリーグ戦10得点を挙げていた相方のボリがカタールのアル・ラーヤンに引き抜かれ、大きな得点源を失った。だからこそ鈴木が背負うべき責任は一層大きくなっていく。

 昨年末に就任したミロス・コスティッチ新監督は、これまで試合ごとに3バックや4バックなど変わり続けていたシステムを4バックに固定。初陣となった第22節のコルトライク戦と第23節のムスクロン戦で今季2度目の連勝を飾っている。

 その中で、新指揮官は鈴木を4-3-3の左ウィングと4-3-1-2の2トップの一角で起用した。もともとボリと組んでいた頃も、左右に流れてチャンスメイクに絡む動きは度々見せていた。裏への飛び出しのみならず、柔軟なポストプレーやドリブル突破など前線で幅広い役割をこなせる背番号9は、間違いなく新体制のエースとして期待を寄せられている。


新相方コリディオとの連係が後半戦の鍵に


 また、コスティッチ監督は半年間ほとんど出番を与えられてこなかったアタッカーを起用し、結果につなげている。インテルから期限付き移籍中のアルゼンチン人FWファクンド・コリディオが、ブレイクの兆しを見せているのだ。

 20歳のコリディオは直近のリーグ第25節ムスクロン戦で鈴木のゴールをアシストし、2人の相性は非常に良い。しかもその試合では3アシストを記録し、3-1の勝利に大きく貢献した。利他的なメンタリティを備え、ゴールを決めるだけでなくチャンスメイクにもクオリティを発揮できる、鈴木の新しい相方候補筆頭だ。

 現時点で10位のシント=トロイデンVVには、まだ上位6チームによるプレーオフ1進出の可能性が十分に残されている。ボーダーラインの6位ゲンクまでの勝ち点差はわずかに5ポイントだ。23試合で39失点と守備に難のある状態で、残り5試合で上位をごぼう抜きするには勝ち続けるしかないが、そこで鈴木に期待されるのはやはりゴール量産に他ならない。

 コスティッチ監督が構築するチームにおいて、中盤ではU-23アルゼンチン代表MFサンティアゴ・コロンバットが中心となり、ベルギー人MFアレクサンダー・デ・ブラインはチャンスメイカーとして急成長を遂げている。キャプテンのMFジョーダン・ボタカも右ウィングバックが定位置だった前体制とは違い、より攻撃的な位置で起用されるようになって輝きを増している。

「コリディオと組むようになって、彼も若いですけど本当にポテンシャルはあるし、これからもっともっと2人で得点に絡んでいける回数が増えるんじゃないかと思います」

 鈴木はムスクロン戦終了後、コリディオとのコンビネーションへの確かな手応えをクラブ公式のインタビューで語った。2人のゴールやアシストが増えていけば、自ずと攻撃の破壊力は増していくだろう。レギュラーシーズン12得点だった鎌田は昨季後半戦、対策が進んで徐々にトーンダウンしてしまったが、鈴木には新たな相方のサポートとともに上昇気流に乗ってのさらなるゴール量産と、「鎌田超え」が期待される。

(文:編集部)

【了】


◆鈴木優磨、19/20前半戦の評価は? 二桁得点も視野に。エース格に定着、監督交代も信頼失わず【欧州日本人中間査定(18)】(フットボールチャンネル)





◆鹿島が失ったACLのタイトル。 「決勝戦に負けたのと等しい」(Number)



土居聖真 Shoma.Doi



 タイムアップの笛が鳴り、審判がそれを告げる。

 そのとき、カシマスタジアムは静まり返った。メルボルンビクトリーの選手たちが互いに抱擁し、スタンドからは、10人にも満たないメルボルンのサポーターたちの歌声が響く。

 1月28日、AFCチャンピオンズリーグ2020プレーオフ。一昨年の大会王者である鹿島アントラーズは、0-1で敗れ、本戦に出場することもなく、2020年のタイトルをひとつ落とすことになった。

「タイトルを1個失っているので、決勝戦に負けたのと等しい。今年2回決勝戦に負けているので、もちろんショックは大きい。でも、次に進まなくちゃいけない。この苦しい状況から逃げちゃいけないと思うので、次に向かって、またやるしかないと思います」

 今季から新キャプテンに任命された三竿健斗の言葉が、この1敗の大きさを物語っている。


「リフォームじゃもう無理かな」


 2019年Jリーグ首位を走りながらも終盤に失速し、3位で終えた鹿島は、天皇杯を残して大岩剛の監督退任を発表。天皇杯決勝戦を前に鈴木満フットボールダイレクターは、新たなチームについて次のように語っている。

「主導権を持ち、主体性を持ったサッカーに変えていきたい。ここ2、3年は受けて相手にポゼッションを渡したなかで、どうするかというサッカーになってしまったので。主導権を持ったサッカーというか、そこが今回のキーワード。

(大岩)剛も、そういう風にしたかったと思うけれど、けが人が多数でたり、選手が入れ替わるなかで、よくはやってくれたと感じている。でも少し方向性というか狙いというか、変化をつける時期だとは感じています。個の能力、個の判断だけじゃなくて、もう少し組織力を高めていくようにしないといけない。選手任せでサッカーをしていても勝てない時代になってきた。アントラーズのベースは残しつつも、ちょっといろんな変化をもたらしていけば」

 そしてこう続ける。

「Jリーグの環境は急速に変わっている。今までこうやってきたから、同じ方法で成功できるとあぐらをかいていればどんどん取り残される時代になってきている。ここ数年、リフォームリフォームでやってきたけれど、もうそれでは、間に合わないところに来ている。なので基礎だけ残して家を建て替えようかなと。そういう編成をしようと思っています。

 変わるというか、やっぱり変えなくちゃいけない部分がある。リフォームじゃもう無理かな。新築しないといけないかな」


合流から10日しか時間がなかった。


 天皇杯で優勝していれば、ACLは2月10日のグループリーグからの参加だった。シーズンは2月8日のゼロックス杯でスタートするため、1月中旬を目途に新監督での始動を予定していた。しかし元日の天皇杯決勝に敗れた鹿島は、リーグ3位でACLプレーオフ出場権を得たため、1月28日に初戦を迎えることになった。始動は1月8日に前倒しを余儀なくされた。

 とはいえ、選手たちには最低でも2週間程度のシーズンオフを得る権利があるし、なにより休暇とリフレッシュがなければ、ケガのリスクだけではなく、メンタル面での問題が生じる可能性も高まる。

 毎年1月下旬にACLのプレーオフが実施されるようになり、しかも4枠のうち2枠がプレーオフに参加(以前は1枠だったが、アジア内での国別ランキングによってストレートイン枠が減った)するようになって以来J上位チームの始動は早まり、シーズンオフが短くなる傾向は続いている。

 2019年も、前年CWCに出場した後にACLプレーオフに参戦した鹿島のシーズンオフは短いものだった。

「シーズン前のキャンプで身体づくりをする時間が限られて、その結果、けが人が増えたとも考えられる」と鈴木は語っていた。

 しかし結果的には2020年シーズンのオフはさらに短くなってしまったため、昨年主力として戦った選手は始動時期をずらし、1月16日にチームへ合流した。つまりACLの準備はわずか10日間しか時間がなかったことになる。


監督は鹿島の理想に一致する人選。


「ボールを握り、ゲームを主導する、主導権を持って戦いたい。ボールのないときはアグレッシブな守備でボールを奪いにいく」

 新監督となったアントニオ・カルロス・ザーゴは、自身の理想のサッカーについてそう語っている。1996~97年には柏レイソルでのプレー経験を持ち、ASローマ時代にはセリエA優勝経験を持つ元ブラジル代表CB。

 2009年よりブラジルで監督のキャリアをスタートさせ、ローマやシャフタールドネツクでアシスタントコーチを務め、2015年からはブラジル全国選手権セリエBやセリエCのチームで監督を務めてきた。ヨーロッパでの指導経験を持つブラジル人という、鹿島の理想に合致する人選だ。

「理想のチームを作るには準備期間は短いけれど、要求に対する選手たちの意欲がとても素晴らしい。100パーセントではないが、できることはやった。アントラーズにはタイトルが必要だというのはみんながわかっている。プレーオフはタイトルへ向かう道。まずはそこを突破することがもっとも重要だ」

 新体制発表会見でそう語った新監督にACLの前日会見でチームのポイントを聞くと、「ボールを持つことでゲームコントロールすること。ボールを失っても素早くプレスをかけること。ホームというアドバンテージを生かし、主導権を持って戦いたい。できないこともあるかもしれないが、時折はやってきたことが表現できると思う」と話してくれた。

  緊張からなのか性格なのかわからないが、会見で笑顔を見せることはなかった。


メルボルンはシーズンの真っ只中。


 一方対戦相手のメルボルンはシーズン真っ只中。リーグ戦では3連敗しているが、コンディションは上々だ。

「私たちはたくさん試合をしているが、鹿島には時間がなかった。そのアドバンテージを生かしたい」とカルロス・サルバチュア監督は戦前語っていた。

 強風による横殴りの雨が吹き付ける中、試合が始まった。鹿島の先発メンバーには、6人の新加入選手が含まれていた。コンディションを考慮したのかもしれないが、連係面ではやはりそう簡単にうまくいくはずもない。

 それでも前線からのプレス、ボールを保持して高い位置で試合を進めるという狙いはある程度成功し、チャンスも作っていた。

 しかしメルボルンも対応し、普段使っている4バックから鹿島戦のために3バックに変更し、時間帯によっては5人がDFラインに並んで守り鹿島にゴールを許さない。

 そんな前半の展開に「ボールを保持することがゲームの主導権に繋がるのか?」という不安が浮かんだ。


「典型的なサッカーの負け方というか」


 コンディション面でのアドバンテージを持つメルボルンが、実質的にはゲームの主導権を握っているのではないかという危惧だ。前半を無失点で凌ぎ、コンディションの差が出る後半に勝負をかけるプランは現実的だ。

 後半立ち上がりから、メルボルンは積極的に攻めに出る。鹿島が素早い攻守の切り替えでボールを奪おうとしても、ファールをとられてペースを取り戻せない。そして54分、元浦和レッズのアンドリュー・ナバウトのシュートが決まり、メルボルンが先制。その後は鹿島の攻撃時間が続き後半だけで12本ものシュートを放ったが、相手GKの好守もあり、同点に追いつくことはできなかった。

「最後に決め切ることができなかった。足りないのはそこだけだと思う。自分たちで蒔いた種だと思うし、典型的なサッカーの負け方というか。あれだけ、ボールを支配して決定機を作っても、決めなければ何もない。逆に相手は、チャンスでもなんでもないシュートが入っちゃうというのが、サッカーの恐ろしいところだと思います」

 土居聖真はそう試合を振り返った。新顔が並ぶ攻撃陣をポジショニングとパスでまとめた土居だったが、その労力は報われなかった。


内田篤人「失ったものは大きい」


 監督の求めるサッカーを体現できたとポジティブに捉える選手もいたが、三竿は「内容も悪いし、結果も悪い」ときっぱり言った。

「映像を使ったり、組み立ての練習である程度こういうふうに動かすというのはあったけど、大きなピッチでの練習もやっていなくて、今日は前との距離感を遠く感じてしまった」とも振り返っている。メルボルンとの大一番の前には、親善試合をする時間的余裕もなかったのだ。

 土居や三竿、そして犬飼智也は、短い準備期間というハンデを認めようとはしなかった。内田篤人もその1人だ。

「チャンスがいっぱいあって、入らない試合は負けちゃう。今日はそういう試合じゃない? でも、『そういう試合じゃない?』で、片づけられないんだけどね、今日の試合というのは。

 失ったものは大きい。チーム立ち上げの最初の試合という中でも、今までは勝ってきたから。一発勝負は強いっていうチームだったしね。俺は試合に出てないから言えないけど、自分たちがどうリアクションしなくちゃいけないかっていうのは、出ていない俺らがやらなくちゃいけないと思う」

 そしてこう続けた。

「すごい雨にもかかわらず、今日もゴール裏にはいっぱいお客さんが入ってくれて。本当に感謝しているし、同時に申し訳ない。最後スタンドへ挨拶へ行ったとき、ブーイングじゃないというのが悲しかった。鹿島は負けて頑張れよって言われるチームじゃないから、ちょっと悲しかった。でも、そういうふうになっちゃったのが申し訳ない。

 ただ、僕はサポーターの厳しい眼があって成長できたし、選手はそうやって育つから。他のチームから来た選手もいるし、若い選手も見ているからね。厳しい眼であってほしいという気持ちはある」


三竿「ブーイングされて当然の内容だった」


 三竿もいう。

「拍手とか起こってましたけど、逆にその拍手に対して申し訳ないですし、ブーイングをされて当然の内容だったので、そういうふうに気を使わせてしまって、申し訳ないなと思います。

 期待もその拍手には込められていると思うので。その拍手を裏切らないように。みんなでもっと精度を上げて、チームがひとつになって精度を上げていきたい」


終わってみれば勝っている、という美学。


 鹿島の強さの根底には、「リアリスト」という姿がある。勝つためにどうすべきかを逆算し、方法を模索し続ける。試合の流れが悪ければ、ファールでそれを止めることも厭わない。また相手の出方に応じてプランを修正する力も選手たちは備えていた。内容は最悪でもポゼッション率が低くても、被シュート数が多かろうと関係ない。

「終わってみれば勝っている」

 それが美学だと話す選手も少なくなかった。そのふてぶてしさが鹿島アントラーズでもあった。

 しかし、海外へ移籍する選手が増加し、育成の時間が確保できない。補強選手が増えれば、選手任せでは立ち行かない。組織としての戦略、チームモデルが必要だ。そういう意識のもとで、「変わらなければならない」と2020年シーズンは舵を切った。

 そうなれば、チーム作りにも時間が必要だろう。リフォームではなく新築なのであれば、当然のことだ。それをサポーターも理解しているからこその、激励の拍手だったのだろう。スタメンに生え抜きの選手は土居だけだった。チームは確実に変動している。


監督の評価はまだできないが……。


 始動から3週間ほどで、監督の評価はできない。それでも、プレーオフに敗れるという痛手は小さくはない。

「監督が求めるサッカー」より、「勝利」を手繰り寄せるエゴが足りなかったのだろうか?

 勝利に対する気迫がシュートの精度にどう影響するのかはわからない。ただひとつ思うのは、「鹿島らしい」試合ではなかったということだ。

 しかし同時にこうも思う。“決勝戦”に2連敗している姿は、もう鹿島らしさを求める段階ではないのかもしれないと。


鹿島の栄養はタイトルそのものである。


 2001年のチャンピオンシップ第1戦。ジュビロ磐田に2点リードを許しながら、後半に2点を決めてドローで終えると、第2戦では延長戦の小笠原満男のVゴールで王者になった。

「僕らは華麗なサッカーをしていると言われるけれど、勝つのは鹿島」と磐田の藤田俊哉が悔やんでいた姿は今も忘れられない。

「タイトルがクラブの栄養だ」と鈴木は話していた。その栄養を得るために鹿島は変わろうとしている。その先がどうなるのか。ACLがなくなったことで、チーム作りの時間が生まれたと考えることもできる。

 シュートが決まっていれば、勝てた。確かにそれも事実だ。しかし、負けてしまった。

「不甲斐ない。でもこれが僕たちの実力。目をそらしちゃいけない。逃げずに、できるだけタイトルをとり、最後には大きく成長した姿を示したい。逃げずにやり続けたい」

  三竿の言葉がすべてだろう。


◆鹿島が失ったACLのタイトル。 「決勝戦に負けたのと等しい」(Number)




◆新生アントラーズ、昨季とは180度転換。 ザーゴが考える戦術の片鱗を見た(Sportiva)



ザーゴ zago




「4冠」を目指して始動した鹿島アントラーズが、早くもひとつめのタイトルを失うことになった。

 1月28日に行なわれたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフで、メルボルン・ビクトリーに0−1で敗れたのである。

 Jリーグ勢がACLのプレーオフに出場するようになってから、初の「プレーオフ敗退」という屈辱。鹿島としては3年連続でACLの本戦に出場していた歴史が途切れる失態となった。

 試合後、取材陣の前に姿を見せたボランチの三竿健斗はこう切り出した。

「自分自身も不甲斐ない出来だったので、申し訳ない気持ちでいっぱいですけど、これが今の自分たちの実力。目を背けてはいけない。批判されて当然の内容だったと思うし、今は何を言われても、すべてを受け止め、シーズンの最後にはここから成長した姿を見せてタイトルが獲れるように続けていきたい」

 CBを担った犬飼智也も責任の重さを言及した。

「目指していたタイトルをひとつ失ってしまった。本戦に出場できないというのはあってはならないこと。その責任は強く感じています。ただ、それもこれも自分たちで招いてしまった結果。無冠では終われないチームなので、国内のタイトルにフォーカスしていきたい」

 今シーズンの新戦力として川崎フロンターレから加入し、犬飼とCBでコンビを組んだ奈良竜樹も唇を噛みしめた。

「結果ですべてが評価される試合だったと思うので、後ろが踏ん張りきれなかったことは申し訳ないと思っています。(失点は)不運といえば不運ですけど、自分なりにもっといい対応はできたと思う。反省して次に生かしていきたいと思います」

 エクスキューズは探せば、いくらでもある。

 元日に天皇杯・決勝を戦った鹿島は、極端にオフが短く、選手たちは身体を休める時間がなかった。チームは1月8日から始動したが、昨シーズンを主力として戦った選手たちは個別に休養期間を取っていた関係で、宮崎キャンプには途中からの合流だった。

 加えて、今シーズンからザーゴ新監督が就任し、新たなサッカーに着手している最中である。わずか3週間で戦術を浸透させてチームの形を見出すのは、新指揮官にとっても、選手たちにとっても、難しすぎるミッションだった。

 実際、宮崎キャンプ中に行なわれた練習試合も取材したが、合流して間もなかった主力選手たちは出場せず。ピッチに立ったのは、新加入選手や若手が中心だった。

 その後もプレーオフに向けた調整のため、練習試合はおろか紅白戦も行なえていない。メルボルン・ビクトリー戦では新加入選手6人が出場したが、新旧が融合したメンバーで実戦を戦うのは、いわば”ぶっつけ本番”だった。

 それでも選手たちが、挙げればキリがない不足要素を言い訳にすることはなかった。

 たしかに試合に敗れ、ACLの出場が叶わなかった事実は、すべてのタイトル獲得を目指す鹿島にとっては大きいし、痛い。

 だが、一方でメルボルン・ビクトリー戦は、ザーゴ監督が掲げる新たなるサッカーの片鱗が見えた試合でもあった。システムこそ鹿島伝統の4−4−2ではあるが、試みているサッカーは180度と表現してしまいたくなるほど、昨季までと違いがあった。

 ひと言で言えば、ポゼッションサッカーへの転換である。

 昨季までの鹿島はどこかリアクションサッカーになりがちだったが、メルボルン・ビクトリー戦では終始、試合の主導権を握り、ボールを保持していた。犬飼が言う。

「ボールは7対3の割合くらいで持てていたと思います。そこは去年できていなかった部分。

後半は(相手がリードしたこともあり)、全体的に下がってしまったので、シンプルにSBにパスを出して任せる形が多かった。ですけど、前半は相手が前からハメにこようとしていたなかで、うまく相手をはがせたところはあったと思います。

その時、やり直すのか、もしくは自分たちが縦パスを入れるのか。そこはまだまだ判断していかなければならないと思います」

 奈良も続ける。

「監督からは『ボールを早く動かせ』という指示があるので、CBが長い時間ボールを持たずに、ボールを動かしてテンポを出す。他にもサイドチェンジを入れることも意識していたんですけど、相手が3バックでワイドに人がいたこともあり、なかなか僕らCBから狙うのが難しかった。

 どうしても探り探りの部分もあったので、監督が目指すサッカーをしっかりと理解していきたい。実際にやるのは自分たちなので、ピッチで判断していかなければいけない。個人もそうですけど、グループでも深めていかなければと思います」

 自陣から攻撃を組み立てる際には、ボランチである三竿健斗が最終ラインまで降り、ビルドアップに加わる。それにより犬飼と奈良の両CBが開くことで、右SBに入った新加入の広瀬陸斗と、左SBの永戸勝也が高い位置を取ることができていた。

 わずか3週間ではあるが、短期間の練習と映像を見ながらのイメージの擦り合わせにより、監督が抱くサッカーの哲学を選手たちはピッチで表現しようと努めていた。

 54分に浦和レッズでプレーしていたアンドリュー・ナバウトに強烈なシュートを浴び、1点を追いかける展開になった。そのため攻撃の圧力は増し、徐々にサイド攻撃の回数やゴール前で迎えるチャンスの数も増していった。

 三竿が言う。

「映像を使ったり、組み立ての練習をやってきて、こういうふうに(ボールを)動かしていくというイメージはあったんですけど、大きなピッチで練習をやっていなかったこともあって、前との距離が遠く感じた。

 パスを出せるといえば出せるけど、狙われているし、出したとしても潰されるというのを中にいる時は感じ取れたので、自分が長い距離でもパスを出せなければいけない。そこは映像を見て、修正していくしかないと思っています」

 やってみなければわからないこともある。実戦でしか得られないものもある。

 犬飼や奈良、そして三竿が言うように、公式戦を経験してきたからこそ見えてきた感覚と課題があった。結果的にACLプレーオフ敗退という高い授業料を払うことになったが、鹿島が変わろうとしている姿勢は強く見られた一戦だった。

 ザーゴ監督が掲げる「後ろから攻撃を組み立てていくサッカー」を担っていくのは、両CBとボランチである。三竿が続ける。

「このサッカーはボランチがキーになるので、攻守においては常にバランスを取って、攻撃時はサイドバックが高い位置を取れるようにすることを求められている。ボールを奪うところでもチームを助け、攻撃の起点にもなれるように、パスの精度を上げていきたい」

 サイドからの攻撃とゴール前での精度もまた、練習での積み重ねでしかない。その前提となるベースを作っていくのが、CBとボランチである。後方を担う「3枚のトライアングル」が機能しなければ、サイド攻撃も、ゴール前での迫力も、損なわれることになる。

 犬飼が言った。

「ボランチやSBが勝負できるパスを出すのがCBの役目だと思うので、1本のパスやサイドチェンジもトライしていきたい。チャンスは作れていたので、あとは決め切るところも。こういうサッカーに挑戦していくなかでは、うまくいかなかったり、今日みたいなゲームはあると思う。でも、そこに焦れずに突き詰めていくしかない」

 今、鹿島は生みの苦しみの一歩を経験している。時間がかかるかもしれないし、いくつものハードルとステップが待っていることだろう。

 だが、それを抜けた先に、新たなる鹿島の姿と形が見えてくる。


◆新生アントラーズ、昨季とは180度転換。 ザーゴが考える戦術の片鱗を見た(Sportiva)





◆【G大阪】昌子源を獲得へ…海外挑戦にひと区切りつけJでの再起検討(報知)







 G大阪が日本代表DF昌子源(27)の獲得を目指し、フランス1部トゥールーズに完全移籍での獲得オファーを出したことが30日、分かった。昌子は負傷に苦しんだ約1年の海外挑戦にひと区切りをつけ、Jリーグでの再起の検討。中学時代まで下部組織に在籍したG大阪が、守備の要として獲得を熱望し交渉に入っている。18年ロシアW杯で日本代表の主軸を担ったセンターバックが、5年ぶりのタイトルを目指すG大阪に加わる可能性が高い。

 日本屈指のセンターバックがJリーグ復帰を決断する可能性が高まった。今季フランスで足首や太ももの負傷を繰り返していた昌子は、コンディション面の問題を解決するために日本での再起を検討。獲得オファーを出したG大阪とトゥールーズ間では、完全移籍へ向けた交渉が前向きに進められているという。

 昨冬に鹿島からトゥールーズに完全移籍し、すぐにレギュラーポジションを奪うなど順調なスタートを切った。昨季は半年間でリーグ戦18試合に出場し、19年4月にはフランス代表FWエムバペらを擁する世界的強豪・パリSGとの対戦も経験。「世界最高峰の選手と対戦できる機会は、なかなかない。いろいろなトライができた」と話すなど、ハイレベルな環境でさらなる成長を目指していた。しかし今季は負傷に苦しみ、リーグ戦出場はわずか1試合。昨年9月の出場を最後に、ベンチ外の日々が続いていた。

 一方でG大阪は昨季、残留争いに巻き込まれ、最終的には7位まで浮上したが4年連続の無冠に終わった。48失点は10位。3シーズン目の指揮となる宮本恒靖監督(42)の下、今季はタイトル獲得を至上命題とする中で、リーダーシップと実力を兼ね備えたセンターバックの補強を模索。オファーを出した川崎DF奈良竜樹は鹿島と競合の末に敗れるなど、補強は順調に進まない中で、起死回生の一手として昌子にオファーを出した。すでにチームは沖縄キャンプ等で開幕に向けた準備を進める一方、最大の案件に全力を注いでいる。

 神戸市出身の昌子はかつて、G大阪ジュニアユースに所属していた。同期のFW宇佐美貴史らとともにプレーしたが、中学3年時に退団。米子北高を経て鹿島でプロとしてのスタートを切り、日本代表へ上り詰めた。フランス移籍以降は負傷の影響もあり、昨年6月を最後に日本代表から遠ざかっているが、コンディションさえ戻れば実力に疑いはない。

 昌子は育ててくれた鹿島への恩義を強く感じているが、今回はチーム編成とのタイミングが合わず、具体的な動きに至っていない。東京五輪のオーバーエージ候補にも挙がるなど、DF吉田麻也(サウサンプトン)に次ぐ次世代のDFリーダーとしての資質も兼ね備えた27歳。欧州での苦い経験も糧に“古巣”再建に挑むことになりそうだ。

 ◆昌子 源(しょうじ・げん)1992年12月11日、神戸市生まれ。27歳。フレスカ神戸でサッカーを始め、G大阪ジュニアユースを経て米子北高へ進学。11年に鹿島入り。対人守備、スピード、フィード力を備えたセンターバック。18年ロシアW杯では日本代表の主力として16強進出に貢献。19年1月にフランス1部トゥールーズに移籍。フランス1部19試合0得点、J1通算157試合8得点、国際Aマッチ18試合1得点。180センチ、73キロ。



◆【G大阪】昌子源を獲得へ…海外挑戦にひと区切りつけJでの再起検討(報知)

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